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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第31話 ピックアップ

 デモ隊が紛争地帯に突入して数日ほど時間が経った。

 相変わらず共和国とデモ隊のにらみ合いが続く。

 両者は互いに、一進一退の攻防を続けており、戦線は膠着状態に陥っていた。

 宇宙軍も援護に回りたい所だが、ゲリラ的に出現するデモ隊の行動を捉えきることはできずにいる。


「もう数日も戦線が膠着してる……」

「かといって、宇宙軍が簡単に手を出せる状態じゃないし……」

「陸軍と空挺団を下がらせるにしても、彼らをピックアップするには、それなりの準備が必要だ。四面楚歌に近い状態では、簡単に回収してはくれないだろうな」


 そんなことを話し合うフクオカたち。

 フクオカとしては、どうにかして地上軍を救援したい所だが、話にも出た通り、四面楚歌の状態では、どうにも救援を行うことができない。

 最適なタイミングで、最適なピックアップをしなければ、どんなに精鋭ぞろいの空挺団でも多大な損害を被るのは目に見えているだろう。

 救援に宇宙軍が出るのは当然のことであるが、デモ隊の足止めを行うことが出来るかどうかが試される。もし足止めが叶わなかったら、その時は地上軍が壊滅という状態になってもおかしくはないのだ。

 しかし彼らをいつまでも放っておくわけにもいかない。

 そこで、ナリムトルにいる宇宙軍の数個艦隊の指揮官による、地上軍救出作戦とも呼べる行動を取るべく、協議を行っていた。


「さて、地上にいる空挺団と陸軍の救出だが、ここにいる者の意見が聞きたい」

「ワシの見解だが、宇宙軍による断続的な弾幕斉射が一番有効な手立てだと思うんじゃが、いかがかね?」

「もちろん、それが出来れば一番いいのですが、ビーム砲撃では精密な射撃は出来ませんし、実弾を使うにしても、手間がかかります。現実的とは言えないでしょう」

「なら一撃で仕留めるのはどうだ?まだ地中貫通弾は残っているだろう?地上軍が撤退した後に地中貫通弾を使ってピックアップ地点の周囲を掘り返すという案だが」

「確かに有効かもしれません。しかしタイミングがずれると、地上軍にも影響が出るのは間違いないでしょう」


 そんな感じで話し合いを続けていると、総司令部からとある通信が入ってくる。


『ナリムトルの各派閥が互いに協力して、共和国に対抗するという声明を発表した』


 つまりデモ隊はおろか、ナリムトルの各軍隊とも相手にしなければならなくなったのだ。

 たった陸軍3個師団と空挺団を相手に、数百師団、数百の航空機と戦うのは、とてもじゃないが勝つ算段はない。


「……不味いことになりましたね」

「なおさら地上軍の救出に躍起にならなくてはいけなくなったな」

「では、いかがいたしましょう?」

「先ほどの、地中貫通弾を使う案が出たな?」

「えぇ。しかし、それぞれの艦隊が歩調を合わせなければならないという、難しい課題が残っています」

「そのあたりは、作戦データベースに作戦案を投げてもらえれば、各々がやるべきことをなしてくれるだろう。早速だが立案に行ってくれ」

「了解」

「後は地上にいる空挺団と陸軍に連絡を。彼らにも作戦案を共有してやってくれ」


 こうして宇宙軍は、簡単ながらも、互いに連携が必要な作戦を考えることになる。

 数時間後、作戦案が形になった。

 早速その案を、宇宙軍の作戦データベースにアップロードし、地上軍にも通達する。

 この作戦が実行されるのは、情報が上がった数時間後であった。


「むちゃくちゃだ。普通、こんな作戦が通るわけないだろ」


 フクオカの同僚である男性幹部が、声を荒げる。


「けど、ナリムトルのすべての軍を敵に回している状態じゃ、普通は通用しないよね」

「かもしれないが……」

「まさか、狼狽えているの?」

「んなわけあるか。だが、困惑しているのは間違いないな」

「まぁ、確かに時間制限のある状態じゃ、まともに艦隊運用できるとは思えないよね」


 そう、地上軍のピックアップ作戦まで、残り数時間。

 十分な猶予があるとは思えない状況だ。


「とにかく、この作戦案に則ることにしよう」


 そして宇宙軍は地上に降りていく。

 そのころ、宇宙軍の作戦案を見て、撤退を始めた空挺団と陸軍は、ナリムトルの空軍からの攻撃を食らっていた。


「畜生!こんな状況じゃ、簡単に撃破されちまう!」

「今の陸軍に対空砲なんて古い戦車なんぞ存在しないのは、上層部の傲慢だな」

「とにかく、機銃でも主砲でもぶっ放せ!じゃねぇと簡単にミンチになっちまうぞ!」


 そんなことを言いつつ、地上軍は後退を続けた。

 ナリムトルの陸軍とデモ隊の市民は、地上軍のあとを追いかける。

 その時、上空から宇宙軍の艦艇が出現した。

 目的の時間まで、もうすぐである。

 ピックアップのための輸送艦隊は、すでに準備が整っていた。

 そして、地上軍がとある地点を通過した瞬間。


「今だ!全艦地中貫通弾発射!」


 目標の時間が経過し、宇宙軍は一斉に砲撃を開始する。

 それは追撃していたナリムトルの陸軍やデモ隊に直撃した。

 その上、地に巨大なクレーターのようなものを残して、進路を断つことにも成功する。それを輸送艦隊の待つ周囲に生成したのだから、進むに進めない状況だ。


「よし、あとは飛んでくる航空機を撃ち落としていくぞ」


 航空機相手なら、宇宙軍でも対応できる。

 そして、次々と飛んでくるジェット戦闘機を相手にしながら、宇宙軍は地上の様子を確認する。

 どうやら、問題なく輸送艦隊に乗艦しているようだ。

 そしてピックアップ作戦開始から10時間程で、すべての地上軍の回収が済む。

 こうして地上軍は、宇宙軍の手助けによって、危機を脱したのであった。

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