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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第25話 デモ

 惑星災害が発生してから、しばらく経った。

 隣の管轄である第14艦隊での惑星災害も、ひと段落ついた所だ。


「クィリアム星系の復興、順調に進んでるみたいだよ」

「それは良かった。このまま無事に復興してくれればいいね」

「ディリー星系も片付けは済んだみたいだし、どっちもこれからって感じだね」

「本当にこれからだろうか?」

「なんで?街もきれいになって、より快適に過ごしやすくなるじゃん?」

「そう簡単に街に人は戻らないよ」


 同僚の男性幹部が溜息交じりに説明する。


「本来、災害によって被災した場所は、簡単に言えば住む場所に適さない場所だ。惑星内で言えば、地震や津波、河川の氾濫、土地の沈下……。そういった場所は長期的な目で見た時、損得で言えば損になる。なら最初から安全な場所に居住したほうが一番だ。それに、生活というのは簡単に変えられない。一度捨てた場所に戻ってくるのは勇気のいることだし、同じ災害が発生しない可能性も捨てきれない。行政は公共事業で対策を講じるだろうけど、その時には何もかも遅すぎるんだ」


 男性幹部は、若干早口で持論を展開する。

 その様子を見ていたフクオカともう一人は、ポカンと口を開けていた。


「……なんだその顔は?何か言いたいことがあるなら言ったらどうだ?」

「いや……。意外にも、そういう評論出来たんだって思って……」

「それは失礼なんじゃないか?」


 そんなことを言いつつ、フクオカたちは自分の仕事を続けるのだった。

 フクオカたちの勤務時間が終了し、シフト交代となる。

 フクオカたちは、腹を満たすために、食堂へと向かった。


「今日は何にしようかなぁ……」

「あんまり贅沢すると、すぐに太るぞ」

「女の子にそんなこと言っちゃうんだ?」

「事実を言ったまでだ」


 そう言いつつも、今日のメニューを見て、献立を決める。

 そして席を共にして、食事を楽しむ。

 そんな中、食堂のテレビがあるニュースを伝えていた。


『……次のニュースです。政府が原始文明に技術のみを提供し、その後の経過観察を行う事業、「文明促進プログラム」を行っている惑星の一つ、ナリムトルの各都市にてデモが発生したとのことです』


 テレビは、惑星ナリムトルの様子を伝える。

 共和国では、まだ惑星上に文明がいくつか存在している状態を原始惑星と定義している。

 そんな原始惑星に対して、共和国と同じ水準に成長することを目的に、接触初期に共和国で広く普及している技術をまとめて提供する。そして、社会がそれを受け入れ、宇宙に上がってくるまで政治的にも物理的にも不干渉を行うことを「文明促進プログラム」と呼んでいるのだ。

 共和国独自の政策であり、これを複数箇所で行っている。主に国境付近にある辺境地には、文明が未発達な惑星が複数個あり、それらに対して文明促進プログラムを施している。

 そんなプログラムを行っている惑星の一つ、ナリムトルの各都市でデモが発生しているとのことらしい。


『……このデモによって、ショーウインドーが破壊され、車が燃やされるという事態に陥りました。このことに関して、ナリムトルの各国首脳は共同声明で、「社会基盤が大きく揺らいでいる。人々には、惑星外生命体の存在を認知し、積極的に受け入れる覚悟を整えてほしい」と述べました』


 そしてニュースは次のものになる。


「ナリムトルかぁ。正直、聞いたこともなかったけど、どうなんだろう?」

「自然を第一主義とする、超自然主義の惑星だったな」

「自然を大切にねぇ……。共和国技術を使えば、自然なんて簡単にできるのに、なんで天然ものにこだわるんだろう?」

「天然ものにしかない、積み重ねられた時間を大切にしているからだろう。このタイプの文明は総じて面倒な過程を通ってきていることが多いから、今後の動向に注視したほうがいいな」

「さいですか」


 フクオカは面倒になり、適当に返事を返す。

 しかし、状況が面倒な方向に転がっているのは間違いないようだ。

 共和国行政区画にある首相官邸。

 その執務室には、関係閣僚が集合していた。


「……先の報道にあった通り、文明促進プログラムを実施しているナリムトルでデモが発生しました。現地当局の尽力あって、現在は収束に向かってますが、またいつデモが発生するか分からない状況です」


 そう、文明育成担当大臣が報告する。

 それに合わせて、国防大臣が意見を言う。


「現在の懸念事項としましては、このデモ隊の一部が暴徒化し、共和国の技術を奪うことにあります。技術というのは正しく使われなければ破壊をもたらすことになります。もし仮に、暴徒の一部が宇宙船に関する技術を不正に入手した場合、最悪ナリムトル周辺が危険地帯に指定されることでしょう」


 そう忠告を促す。


「しかし文明促進プログラムは、最初期の接触以外は宇宙に出るまで不干渉ではなかったのか?」

「確かにその通りです。しかし、それ以上に文明がリセットされるような事態は防がなければなりません」


 周囲の関係閣僚がザワザワしだす。


「とにかく、現段階では問題ありませんが、時間とともにひどさは大きくなってくるでしょう。国防省としては、早めに手を打つべきと考えます」


 そういって関係閣僚の秘密の会議は終了した。

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