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ローカル航路エプリオン線の嗟嘆  作者: 紫 和春


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第12話 演習その2前後編

 フクオカが提案した作戦。

 その根底にあるものは、先日聞いた、ドレイクのヒントにあった。


『機動力は攻撃に勝り、攻撃は防御に勝る』


 今回使うのは、攻撃ではなく機動力である。

 そう、即ち。


「全艦、全力で惑星要塞の周りを駆け巡れ!」


 速力にモノを言わせて、攻撃自体を回避してしまうということだ。

 青チームの艦隊は、フクオカの作戦通りに惑星要塞の周囲を旋回し始める。

 その様子を見た赤チームは、驚きを通り越して笑いに包まれていた。


「はっはっはっは!あんな原始的な方法で惑星要塞の攻撃を躱そうっていうのか!向こうの作戦参謀はよほど芸に精通しているようだ!」


 しかし、笑っていられたのは最初だけだった。

 惑星要塞は攻撃を継続するものの、青チームが機動力で勝負を仕掛けてから、撃沈数が目に見えて激減した。


「か、艦隊指揮官……。敵艦が墜ちません……」

「な、なんだと……」


 赤チームの艦隊指揮官役の候補生は、狼狽える。

 惑星要塞は、防御のための攻撃はかなり強い。むしろこれの効果を最大限利用するために、長距離から超長距離を中心に主砲が整備されている。

 しかし、青チームが採用した機動力をもって攻撃を回避するのは、これらの主砲を使えなくするためである。

 長距離以上の砲は、どうしても精密射撃をするために、旋回性能が著しく悪い。

 そんな主砲群の前を、近距離用の対艇機銃を持ってこないといけない程の速度で通り過ぎる。そうすれば何が起きるか。

 照準を定め、主砲を旋回しているころには、目標の艦艇は既に射角の外にいるのだ。

 実のところ、長距離や超長距離砲が使えないのは、これを狙ってやったことではない。これはあくまでも副次的な効果にすぎないのだ。

 真の目的は、別にある。


(惑星要塞の構造上、どうしても防御が薄くなる所がある。その箇所を狙って攻撃すれば、こっちに勝ち目はある……!)


 その防御が薄くなる部分は、言い換えれば弾幕が薄い場所とも言える。

 そしてそこは、惑星要塞の弱点なのだ。

 その場所は、惑星要塞の両極近くにある、物資や艦艇が出入りする通路である。

 ここは味方が出入りする関係で、弾幕が薄くなりがちだ。その上、他の装甲より薄い。

 そのため、ここを攻撃する事が、惑星要塞を攻略する糸口になるのだ。

 青チームは、機動で惑星要塞の攻撃を躱しながら、両極近くにある通路を攻撃する。


「さぁ、どんどん行け!攻撃が通るなら、内部から破壊する事も可能だぞ!」


 こうして攻撃を累積させる。

 やがて北極側の通路の扉が破壊され、メインシャフトが丸見えになる。


「良し、穴が空いたぞ!突入出来る艦から、どんどん突撃しろ!」


 こうして、青チームの艦隊は北極側へとだんだん流れていく。

 しかし、ただでやられる赤チームではない。


「奴らの攻撃目標は北極側のメインシャフトだ!主砲はそちらに向けられるだけ向けろ!ミサイルは全弾発射!目標を北極側に集中せよ!」


 惑星要塞の主砲が傾き、北極側に主砲が向く。

 通路入口周辺にあった対艇機銃や近距離主砲が攻撃を行う中、長距離砲やミサイルが飛んでくる。

 そして最終的には、惑星要塞の北極上空が主戦場となった。


「各種ミサイルや長距離砲がこちらを向いていて、なかなか前進出来ません!」

「ここが堪え時だ!敵の懐に入ってしまえば、こっちのものだ!」


 しかし、そんな事を言っている間にも、青チームの艦艇はどんどん沈んでいく。


(惜しい所までは来ている。けど、あと一歩が届かない……。何か作戦があれば……)


 そういってフクオカは、残存している艦艇の中から、あるものを発見する。


「これは……!」


 あるものを発見したフクオカは、すぐさま艦隊指揮官役の候補生に意見具申する。


「ある事を試したいんです」

「ある事とは?」

「実は……」


 そう言ってフクオカは、今考えている事を口に出す。


「……それは大丈夫なのか?いろんな意味で……」

「分かりません。しかし他に方法がないのも事実です」

「……分かった。承認しよう」


 こうして、ある行動のために、艦隊は動き出す。

 青チームは、その行動のために、北極側から一時撤退する。


「よし!敵は動いた!各個撃破せよ!」


 赤チームは、青艦隊撃破のために、主砲を動かしまくって攻撃を続ける。

 しかし、青チームも撃沈されまいと、機動力で回避し続けた。

 そして、主戦場が南極側に移動した時である。


「今だ!」


 青チームの艦隊指揮官が叫ぶ。

 すると、惑星要塞の南極側が突如として爆発したかと思ったら、シミュレータ自体が動作を停止する。

 耳に悪いビープ音が鳴り響いたと思うと、画面が青くなった。

 いわゆるブルースクリーンというものである。

 候補生たちはざわざわしだす。


「一体何が起きた?」

「何も動かないぞ?」

「今のご時世、ブルースクリーンも珍しいだろ……」


 そんな声が聞こえてくる。

 アーカイブ室で中継を見ていたドレイクはにやりと笑う。


「そういう作戦を持ってくるか……。なかなか面白い事を考えるものだな」


 そういって、アーカイブ室を出る。

 演習の先生が出てきて、状況の説明を始めた。


『えー。今起こったことを説明する。簡単にいうと、惑星要塞の南極側に、青チームの艦艇1隻が光速の50%の速度で突っ込んだ。その演算処理が追いつかずに、サーバが一時クラッシュ状態になった。この件について、青チームの艦隊指揮官と作戦参謀に話が聞きたい。今すぐサーバルームに来てくれ』

「アタシたち、怒られる……?」

「どうだろうな……」


 フクオカと艦隊指揮官役の候補生は、演習室のサーバルームに向かった。

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