3話
コンコンッと誰かがドアをノックする。
「失礼致します。フローラお嬢様起きてらっしゃいますか?ああっ、起きていましたね。もうすぐ旦那様と奥様がお帰りになられますよ。可愛くしましょうね」 見た目50歳くらいの少しふくよかなその女性は、私に近付いてくるとふわっと持ち上げた。そしてやわらかな大きな胸でぎゅっと抱きしめ とても大切そうに鏡の前まで運んでくれた。私はなんとも胸がぎゅっと詰まるようなそんな気持ちになった。
鏡に映る自分を見る。
そしてここが異世界だと確信する。
真っ直ぐに伸びた銀髪。切れ長の目に紫の瞳。可愛いと言うより妖艶な顔立ち。3歳くらいとは思えないほどの色香を出していた。
やったぁ!!異世界だ。しかも絶対に美人になる。
みりだった頃は普通に可愛い容姿をしていたが、勉強に習い事と毎日が忙しく過ぎていき、恋愛はもちろんの事、恋だってしたことがない。小説を読むと素敵な恋物語がたくさんあった。だから少しは興味がある。相手が私の事を好きになってくれることはない。だけど、自分が誰かに恋をすることは出来るのでないか…少し期待が持てたような気がした。
身支度を整え、大きな扉の前で父と母を待つ。
ドキドキと胸が高鳴る。私はまた両親に道具のように育てられるのかもしれない。私がフローラに転生し、みり だった頃の記憶はある。しかし、フローラの記憶が全くないのだ… こんな自分を両親が可愛がってくれるとは思えない…不安で押し潰されそうな胸の辺りを小さな手で押える。
愛されなくたって生きていける… 自分でなんでも出来る… そう自分に言い聞かせるのであった。
ギギギッとドアが開く大きな音と共に20代後半くらい 銀色の髪を揺らしながら猛ダッシュで近付いてくる男性がいる。逃げなきゃと思った時には抱きかかえられていた。
「私のフローラ!!会いたかったよ」
強く抱きしめられる。 息が出来ない!!誰か助けて… そう思った時 後ろから声がした。
「あなたのフローラではありません。わたくしのフローラです。フローラをお離しになって。可哀相に…そんなに強く抱きしめたら息が出きませんよ」
20代前半くらい。大きな胸にくびれた腰、長く真っ直ぐな綺麗な金髪のその女性は妖艶な雰囲気を醸し出す。そして私を男から取り上げると
「ただいま、フローラ。私の愛しい子」
と優しく抱きしめてくれた。
そう。この2人が私の両親である……