2話
そうか…
納得できた。だから料理教室…
少しおかしいと思っていた。最初は早く家から自立させられるのかなぁと思っていた。しかし、今も家にいる。かといって 家で料理を作らされる訳でもない。「そんな時間があるなら勉強しろ」と言われた。
じゃあなぜ?
あんな高いお金を払って何がしたかったのか…
そっか、このためだったのか…
普段私に興味がない母が「あなたのためよ。料理はできた方がいいわぁ」なんて言うから、私は母から愛されてると期待をしてしまった。
一番近い存在。母に愛されない私。こんなに頑張ったのに愛されないのであれば、もう何をやっても愛されない… 誰からも愛されない…そう思ってしまった。
はぁ~と大きな溜め息と共に歩き出す。
ついに来てしまった。男とのお見合いが…
昨日、母から「あなたに素敵な人からお見合い話がきているわぁ。私が直接お話をして、いい方だと思ったの。だから必ずいいお返事してきてね。必ずよ。」そう言われメモを渡された… 絶対に断れない…
とぼとぼ歩きだし、横断歩道で信号待ちをする。
どんな人だろう… 暴力とかされないだろうか…
そんなことを考えていた。だから周りを全く見ていなかった。
「「あぶない!!」」どこかで大きな声が聞こえた。
気づいた時には遅かった。
トラックが私の方へ突っ込んでくる。私の足は動かない。あぁ…死ぬんだ…そう思った。後悔は大好きだった異世界転生ものの小説を読み終えてないこと。唯一の私の楽しみ…
もし死んで転生できるのであれば異世界に行きたいなぁ と強く願った。
「その願い叶えましょう」えっ??
薄れゆく意識の中、美しい声が聞こえたような気がした。そして意識を手放した…
ここはどこ?周りを見渡す。
全く知らない場所だ。とても広い部屋には見たこともないような煌びやかな装飾品、大きな窓からは光が射し込み、暖かい風でレースのカーテンがなびく。風は花の匂いを運ぶ。
素敵!!もっと良く見ようと体を動かそうとして手を伸ばす。……えっ!?
目に映る小さな手…自分の手だと認識するまで少し時間が掛かった。そして体全体を見てはっとする。私、3歳くらいの女の子になってる…
大好きだった異世界転生小説を思い出す。
まさかっ…そのまさかであって欲しい…
自分にとって死んでしまった事はどうでもよかった。ただただここが異世界であって欲しいと…
頭の中はその事でいっぱいだった…