6
リカルドが屋敷に滞在して3日が経った。フランチェスカは、四六時中彼に張り付いて世話を焼いている。まるで侍女にでも、なった気分だ。いや、乳母かも知れない……。
「殿下は、お仕事はいつされるんですか」
この3日、彼が仕事をしている素振りはない。
「気が向いたらする」
え、今なんて仰いました?気が向いたら、する?フランチェスカは笑顔のまま固まる。
仕事って、そういうものではありませんよね⁉︎
「私に任されている仕事など、兄上達と違って大切なものなどない。故に、気が向いた時にしかしない」
よく分からない理論を並べるリカルドに、フランチェスカは内心ため息を吐く。本当に次から次に問題だらけだ。寧ろ問題しかない。
「そうですか……確かに仕事には、優先順位はございますが、大切でない仕事などございませんよ、殿下。殿下に割り振られた仕事なら、確りと責任を持って取り組むべきです」
「嫌だ。面倒だ」
ぷいと横を向くリカルド。出た、子供の様な反応。やっぱり、苛つく。我慢よ、我慢。
「殿下、知ってますか」
「なんだ」
「実は、今社交界では仕事の出来る殿方が素敵!素敵!素敵⁉︎と騒がれているんです」
フランチェスカの言葉に、リカルドは衝撃を受けた顔をする。
「逆に、仕事の出来ない殿方なんて不能!不能!不能‼︎と言われています」
「……」
何故か黙り込む彼に、フランチェスカも黙る。少し無理があっただろうか。無論こんな話はない。
「あの、殿下?」
「やはり、仕事が出来ない故……私は不能なのかも知れない」
なんか、今聞いてはならない事を聞いた様な……。仕事が出来ないから不能?いや確かに言ったが……まさか、リカルドが不能など驚きだ。
頭を抱え、沈んでいる彼になんと声をかけたらいいのかが、分からない。
「あの、殿下は…………不能なんですか」
リカルドは、更に傷を抉られた様に悶えている。
あぁ、そうなんですね。分かりやすい。だが、あんなに愛妾がいるのにも関わらず、不能とは。13人もいるのにねぇ……。
どうでもいいが、夜の方をどうしているかは気になる。
「殿下、そのとってもお伺いしづらいのですが……閨の方はどうされているんですか」
聞きづらいと言いながら、かなり直球にフランチェスカは聞いた。何しろ、回りくどいのが好きじゃない。
「……ない」
「はい?」
「だから、最後まではしていないと申している‼︎」
フランチェスカは、衝撃を受けた。