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5

フランチェスカは、どうするか考える。


本当なら暫く檻にでも入れて、管理するのが手っ取り早いが……流石に相手は王子だ。不味い。しかも、ここはリカルドの屋敷である故、実質無理がある。


なら先ずは、相手の弱みを握ること。実は、これは事前に知っている。別にわざわざ調べたわけではない。ちょっとした所からの噂話程度に聞いただけ故、いまいち信憑性には欠けるが、試す価値はある。


フランチェスカは、にっこりと笑みを浮かべると、猫撫で声を出した。


「殿下……私とリカルド殿下は、政略結婚ですが曲がりなりにも新婚です。少しはこちらに滞在して下さらないのですか?」


「嫌だ」


即答。苛つく。

このクズが……あらいやだわ、口が勝手に。オホホ。


内心苛つきながらも耐えるしかない。我慢、我慢。


「殿下、そう仰らずに……」


だが話の途中にも関わらず、リカルドは立ち上がると部屋を後にしようとする。


フランチェスカはそんなリカルドの腕を後ろから掴むと、思いっきり体重をかけた。


「うわっ⁉︎」


フランチェスカより頭一個分背の高いリカルドも、これには流石によろめき床に膝をつく。


そしてフランチェスカは、耳元で囁いた。


「いいんですか、殿下。……()()()()報告致しますよ?」


一瞬にして彼の顔が青ざめる。どうやら、噂は本当の様だ。噂では、母である王妃はかなり怖いらしい。そしてリカルドは、王妃を恐れていると……。

公衆の面々では、普通に優しい王妃にしか見えないが……このリカルドの反応からして、かなり怖いのだろうと、推測出来る。



「は、母上には、だ、ダメだ!分かった、暫くは屋敷にいる!故に、それだけはしてくれるな」


「それは、嬉しいですわ。折角夫婦になれたんですから……仲良く致しましょうね、殿下?」



リカルドは青い顔のまま、黙り込んでいた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



我慢する事を覚えさせないと。リカルド(これ)は、これまで己の欲望のままに生きてきた、と思う。


そう、待てすら出来ない犬と同じ……。



フランチェスカとリカルドは、横並びにテーブルにつく。本来ならば、向かい合わせに座るのが普通だが、敢えて横に座った。この方が何かと都合がいい。


「殿下、お野菜全然召し上がっていらっしゃらないんですね」


「……野菜は好かない」


いつもの事なのか、当たり前の様に彼の皿には野菜が1つも盛られていない。ひたすら肉、肉、肉……時々魚みたいな。不健康にも程がある。


「ダメですよ、殿下。野菜を食べないと」


あくまで優しく諭すが……。


「私は、野菜が嫌いなんだ。意見するな」


リカルドはそういうと、そっぽを向いた。これでは、幼い子供と大差ない。


面倒臭いわね。


フランチェスカは、子供の様なリカルドに更に苛つ。だがまさか、無理矢理食べさせる訳にはいかない。仕方がない……。


「あら、このニンジンとっても美味しいわ!こんなに美味しいニンジン食べたの生まれて初めて!う~ん、こっちのトマトも、本当に美味しい!」


かなり、大袈裟にフランチェスカは言ってみた。そして横目で、リカルドの様子を伺う。すると、予想通りだ。


「……そんなに、美味しいのか」


「えぇ、それはもう驚く程に!」


そんな訳無い。これらは、何の変哲もないごく普通の野菜だ。


「殿下も、お召し上がりになられますか?」


暫し沈黙が流れる。彼はかなり悩んでいる様子だ。やはり、こんな今時子供でも引っかからない様な作戦は無理があったか……。



「一口……貰う」


あら、単純でした。お召し上がりなるそうです。


フランチェスカは、笑みを浮かべながらリカルドの前に、ニンジンとトマトの盛られた皿を置いた。



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