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今、なんておっしゃいましたか?
……指が、綺麗?一体なんの話をされているのしから。聞き間違いかしら。
フランチェスカが、呆気に取られている間もリカルドは話続ける。
「あの白く長く美しい指の持ち主は、他にはいない」
リカルドは、鼻息荒く力説する。かなり興奮している様だ……変態にしか見えない。
「……因みに、他の方々は」
聞きたい様な、聞きたくない様な……怖いもの見たさで、つい聞いてしまった。
「ニーナは、髪が美しい。ロゼは足が美しい。ダリヤは首が……」
これは……。
「殿下……本当にその方々を愛して、いらっしゃるのですか……」
「無論だ。ライラの唇も、ユフィーナの瞳も全て愛している」
それは、愛とは呼ばないのでは。
「そうではなく、その方を愛してはいらっしゃらないのですか」
「君の言ってる意味が理解出来ない」
それは、こちらの台詞です。
この人、危ない人かも知れない……フランチェスカは、ゴクリと喉を鳴らす。
「性格がお好きとか、笑顔がお好きとか、または一緒にいると落ち着くとかは、ないんですか」
その言葉に彼は、即答した。
「いや、ないな。エミリアは、性格がキツくて一緒にいると疲れる。ニーナは、口煩くて……ダリヤは粘着質で鬱陶しい……ライラは……」
次から次に名を上げては、嫌いだの苦手だのと、ほざいている。
全く持って、フランチェスカには彼の思考が理解出来ない……。
「それは愛では、ないのでは」
「何を言う!私はエミリアの指をこんなにも、愛している!」
彼は机をバンっと叩いた。
「…………」
フランチェスカは、お茶を啜り焼き菓子を口に入れた。
あら、これ美味しい。
現実逃避中……それて、我に返る。
いけない、余りの事に……私ったら。
それにしても、世の中って広いわ。こういった人も存在するのね。勉強になりました……なんの役にも立たないけど。
そしてそれが、自分の旦那だという現実が悲し過ぎる。
「あの指を見ると、興奮してしまうんだ……考えただけで、私はっ」
要約すると、彼はただ単に、その女性達の一部分を好きなだけであって、本人そのものには興味がないと……寧ろ煙たがっている様に見える。
ただの変態じゃない。
いや、クズとも言える。
目前で1人妄想しながら、悶絶している彼をフランチェスカは白い目で見た。
リカルド、どうしよう。
離縁したいが、それは出来ない。だが、このままでは更に被害を被る事になりかねない。
リカルドと婚姻関係を継続しなくてはならないなら、教育し直すしかない。リカルドクズ過ぎるもとい変態の旦那を。
そして、決断をする。
私、フランチェスカが、その腐った根性叩き直してあげます。