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ニーナが髪。ダリヤが首。ライラがおでこ。
ルドミラが背中。シャルロタが腕。ミランダが鼻。
レイナが耳。マーリンがお尻。
フランチェスカは深いため息を吐き、ベッドに横になった。三者面談を始めて今日で12日目。遂に明日で最後だ。
リカルドの愛妾というだけあって1人残らず個性豊かな女性ばかりだった……。
疲れた……。
そしていよいよ明日はエミリアとの面談がある。結局最後に残してしまった……絶対揉めに揉めるのは目に見えている。
手紙を持たせた使いによれば、彼女に手紙を渡した際直ぐに開封し中身を検めたそうだ。そしてその場で手紙を破り捨て「承知致しました」とだけ告げたそうだ。物凄い形相で……最後の最後で命の危機を感じる。
彼女との約束の時間までまだある。待っている間、フランチェスカとリカルドは、客間にてお茶をしていた。
リカルドを横目で盗み見ると、彼はなんと!読書をしている。無論艶本などではなく、経済学の本だ。
普通だ。普通過ぎる……確かにレアンドルより魅力的になればいいとは言ったが……本気なのだろうか……。
フランチェスカは眉根を寄せる。複雑な気持ちだった。
ガッシャンッ‼︎
床にティーカップが落ちて割れた。いや、エミリアが床に叩きつけたのだ。
予想はしていたが、ひど過ぎる……。
「エミリア‼︎落ち着くんだ」
この13日間を得てフランチェスカが今思っている事。リカルドは外面がいい。それは以前社交の場にて知ったが、愛妾達の前ですら取り繕い紳士を気取っている。
自邸の中ではいつも、どうしょうもなく甘えん坊で我儘で救いようも無いクズ犬なのに……常に格好をつけている。
リカルドはエミリアの肩を掴み「エミリア、分かって欲しい」そう言った。だがエミリアはそんな事では納得する訳もなく……リカルドの手を勢いよく振り解くと、フランチェスカへと向かってきた。
そして、どこから出したのか手には光る物が見える。
「あんたなんか、殺してやるっ‼︎リカルド様は私のリカルド様なのよー‼︎」
次の瞬間、エミリアは狂った様に叫び手にしたナイフをフランチェスカに振り翳した。
あー正にこれは予想通りの最悪の事態だわ……あのナイフが刺さったら絶対痛い、いや彼女の望み通り死ぬかも知れない……。
命の危機にも関わらず、フランチェスカはそんな間の抜けた事が頭を過ぎった。全てが面倒臭くて、どうでもよくなる。
ザクッ。
鈍い音が部屋に響いた。




