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リカルドに話をしてから5日後。結局あれから、彼からは何の返答もなかった。
「殿下、本日から面談を始めますが……」
「分かっている。心配しなくとも、答えは出した」
言葉を濁し結局リカルドは、誰を選んだのかは教えてくれなかった。
「お呼び立てして、申し訳ございません。先ずはお掛け下さい」
1人目の愛妾の名はユフィーナ。調べによると、リカルドが瞳が好きだと言っている女性だ。彼女は男爵家の三女で酷く大人しい性格らしい。
「…………いえ」
彼女は、か細い声で消え入る様にそう答えるとお辞儀をした。フランチェスカはチラリと彼女の瞳を盗み見る。
確かに、大きな青い瞳で美しい。
「さっそく本題ですが」
そう言い掛けた時、リカルドがフランチェスカの口を手で塞いだ。
「⁉︎」
「フランチェスカ、彼女には私から話す。君はそこにいてくれるだけでいい」
キリッとした表情でそう話すリカルド。何というか、これは……格好でもつけているのだろうか。面倒臭。というより、女性の口を塞ぐとか失礼過ぎる。
「ユフィーナ、申し訳ないが私と別れて欲しい」
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話し合いは一刻もかからなかった。始めは戸惑った様子だった彼女も暫くして「分かりました」そう頷いた。ただ実は彼女、もう30歳近い。完全に行き遅れだ。余りにも物静か過ぎて、貰い手が見つからなかったらしい……。リカルドの愛妾になる事で援助をして貰っていたそうだが、別れれば当然それはなくなる。
生家も然程裕福ではない様子で、リカルドと別れる事への不満ではなく、金銭的な不安が見受けられた。
その事に関して何かリカルドが話すかと少し期待をしたが……まあ、予想通り何もなかった。
まあ、所詮クズ犬なので。思わず鼻を鳴らした。
『ユフィーナ様、ご安心下さい。貴女の身の振り方はこちらで確りと責任を持ちます。ユフィーナ様さえ宜しければ、ある子爵家当主との縁談をご用意しております』
そう、愛妾として残れなかった者達は然るべき場所への縁談を用意している。そうする事で後腐れなく、後々揉める事もないだろう。
フランチェスカが彼女にそう告げると、リカルドは驚いた表情でこちらを見ていたが無視した。ユフィーナはというと、深々とお辞儀をして礼を述べた。その表情はどこか安堵した様な穏やかなものだった。
ずっと、不安だったのだろう。もしフランチェスカが彼女の立場だったなら……いつ飽きられて捨てられるかもしれない愛妾で居続ける日々は辛かったと思う。言い方は悪いが、愛妾の代わりなど幾らでもいるのだから。
何はともあれ、この調子でサクサク事を進めたい。残り12人。ユフィーナは大人しく物分かりのいい女性だったが……全員がそうとは限らない。屋敷に乗り込んできたエミリアを思い出す。
「はぁ……」
フランチェスカはため息を吐いた。




