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レアンドルが帰った後、フランチェスカはある事を思い立った。
リカルドが、自分の事を兄のレアンドルに楯突いてまであんなにも別れたくないと考えているとは……正直意外だった。だが、これはいい機会だ。
今しかない。
「殿下」
あれから数日。相変わらずリカルドに、朝昼晩と付き纏われてうんざりしていた。フランチェスカは背中にピッタリくっ付いているリカルドに猫撫で声で話しかける。
殿下と、呼ばれてかなり不満そうに「殿下じゃない」と言われるが、そこは無視をした。
「私と、別れたくないんですよね?」
「⁉︎」
聞いただけなのにも関わらず、身体をビクッとさせると徐にフランチェスカの肩に抱きついてきた。絶対に離さないと言わんばかりだ……。
「そんな殿下に残念なお知らせがあります」
ごくりと息を呑む音が聞こえた。
「先日はレアンドル様の手前あの様に言いましたが……ここだけの話正直に言いますと私、レアンドル様が気になっているんです」
「あああ、あ、兄上を好きになったのか⁉︎」
至近距離にいるのにリカルドは、耳元でバカでかい声を上げた。フランチェスカは思わず耳を塞ぐ。
このクズ犬、鼓膜が破れるでしょうが⁉︎苛っとする。
「いえ、まだそこまでは……ただ、素敵な方だと思います」
「だ、ダメだ‼︎絶対にダメだ‼︎」
取り乱すリカルドを無視しながら、フランチェスカは話を続けた。
「レアンドル様って、仕事も出来て真面目で誠実ですよね」
王太子の仕事ぶりなんて、知らないけどね。
「私は離縁などしない‼︎」
「紳士的で、格好良いですよね」
寧ろゲスだったけど、まあこの際嘘も方便よ。
「あんな方が旦那様だったら……素敵ですよね!」
トドメの一撃。花も恥じらう乙女の如く……笑みを浮かべる。
「フ、フラン、フランチェスカの旦那は私だ!君は私の妻だ‼︎わ、私の……私の」
かなり興奮した様子で声を荒げるが、次第にその声は消え入る様になる。
リカルドはフランチェスカの背中にグリグリと顔を押し付け、目尻に涙を浮かべ更に鼻を啜る。
フランチェスカは固まった。絶対背中は涙と鼻水で濡れて凄い事になっているだろう。見なくとも分かる……このドレス新調したばかりなのに……。
このクズ犬が‼︎……苛っとする。だが、後一押しだ。我慢、我慢。
「殿下、落ち着いて下さい。先ずば、鼻をかみましょうね。はい、ちーってして下さい」
ハンカチを取り出し、フランチェスカはリカルドの鼻に当てる。リカルドは涙目で一生懸命に鼻をかんでいた……全く、世話が焼けるクズ犬だ。いや、クズ犬だから世話が焼けて当然かも知れないが……。
「殿下、もう1度お伺いします。殿下は私と別れたくないんですよね?」
コクコクと首を縦に振っている。
「では、そんな殿下に嬉しいお知らせです」
ぽかんとするリカルドをよそに、フランチェスカは鮮やかに微笑んだ。




