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「……だ」
フランチェスカが言葉を発する前に、意外にもリカルドが口を開いた。
「何?まるで聞こえないんだけど」
だが消え入りそうな声で何を言っているのか分からない。レアンドルに鼻で笑われている。フランチェスカも、苦笑した。
「……めだ」
「だから、何?ハッキリ言ってくれる?鬱陶しいな」
「ダメだっ‼︎」
いきなりそう叫ぶとリカルドは立ち上がり、フランチェスカに抱きついた。
「ダメだ‼︎絶対にフランチェスカは渡さない‼︎彼女は、わ、私の、妻なんだっ‼︎」
抱き締められてこんな台詞を吐かれたら、普通ならこれは絶対に、ときめかない女性はいないだろう。だが……。
抱き締めるなら確り抱き締めなさいよね⁉︎なんで、脚に縋り付く様に抱きついてくるのよ⁉︎これじゃあまるで、ただの捨てないでポーズだ……そこにときめきなどある筈もなく……。
やはり、クズ犬はどこまでいってもクズ犬だった……。どうせレアンドルに楯突くなら、もっと格好良くすればいいものを……情けなさが滲み出ている。
フランチェスカは脚に必死にしがみつくリカルドを見て、笑う他ない。
横目でレアンドルを確認すると、流石の彼も呆気に取られて固まっていた。かなり、ドン引いている様に見える。
「でん……リカルド様。そんな情けない声を上げないで下さい。大丈夫ですよ、私はリカルド様の妻です」
フランチェスカはリカルドの頭を優しく撫でた。
「だ、だが!兄上がっ……」
「落ち着いて下さい。私をリカルド様の元へ嫁がせたのは、陛下なんですよ。それを王太子殿下であろうと、当人達の了承を得ずに離縁させる事は出来ません。これは、政略結婚なんです……もしも、王太子殿下がどうしても譲らないのであれば、陛下に私が直々に訴えます」
そう淡々と話すと、フランチェスカは真っ直ぐに未だ呆気に取られているレアンドルを見据えた。
「……興を削がれた。帰る」
少し拍子抜けしたが、それだけ言うと彼はあっさり引き下がった。だが帰り際「今回は大人しく引き下がるけど、別にフランチェスカ、君を諦めた訳じゃない」そう言って去っていった。
レアンドルが部屋を出たのを確認したフランチェスカは、大きなため息を吐いた。そして改めてリカルドを見る。
彼は未だにフランチェスカの脚にしがみついたままだ。
「フランチェスカ、フランチェスカ……」
ここぞとばかりに顔を脚に擦り付け甘えてくる……このクズ犬が‼︎
足し蹴り(←足蹴り?回し蹴り?)でもお見舞いしてやろうかと思う程、苛つく。
私、選択間違えたかも知れない……。




