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クローゼットを見つめながら、フランチェスカはため息を吐く。何故こんな状況になったのだろうか。




レアンドルとフランチェスカが不可抗力で抱き合っている時、まさかのリカルドが戻ってきた。絶対戻らないと思っていたので、油断していた……。


そしてフランチェスカが呆気に取られる中、レアンドルはフランチェスカに口付けをしてきたのだ。最悪だ……リカルドがクズなら、レアンドルはゲスだ。



その瞬間を目撃したリカルドは目を見開き、言葉にならない何かを叫びながら廊下を逃走。フランチェスカも予想外の事態に、暫し呆然としていたがその声に我に返った。


「殿下‼︎」


急いで後を追いかけたが、自室のクローゼットに立て篭もってしまった。


「殿下!殿下⁉︎」


ドンドンッと、フランチェスカはクローゼットの扉を叩きながら呼びかけるが反応はない。しかし、部屋に篭るのではなく、クローゼットに篭るとはリカルドらしい……。



「先程は、その……誤解なんです。レアンドル殿下とは何もやましい事は……」



そこまで言って、口を閉じた。自分で言っておきながら、これでは浮気した事を言い訳している様にしか聞こえない。確かに不可抗力で抱き合って口付けをしてしまったが正直フランチェスカに非はない。いうならば、アレは事故と同じだ。油断した事だけは、反省するが……。


そもそも、弁解する意味があるのかすら分からない。リカルドは別に、フランチェスカが浮気しようが興味がない様にも思える。確かに最近は懐かれている様に感じる事もあったが、妻にというより飼い主に懐いているとしか思えない。


それに、リカルドには13人もの愛妾がいる……例えば本当にフランチェスカとレアンドルがそういう関係だとしても、このクズ犬だけには、不貞を責められたくない。


彼がクローゼットに立て篭もった理由は分からないが、ただ単に兄に妻を取られたという事実に、自尊心が傷付き、拗ねているだけの可能性が高い。

レアンドルに対して、随分と遠慮していたし、引け目がある様に見えた。フランチェスカには分からない、レアンドルとの確執があるのだろう。



「何故、兄上の事は名前で呼ぶんだ⁉︎」


フランチェスカが黙り込み暫くした時、クローゼットの中から叫ぶ声がした。そしてその意外な言葉に、呆れた。


……これは、アレだ。新しいペットを連れて来た時に、既存のペットがやきもちを妬く、アレだ。


レアンドルの事を名前で呼んだ理由それは、紛らわしいから……それだけだ。他意はない。


リカルドの事は殿下と呼んでいる。レアンドルの事も殿下と呼んでいる。王太子殿下とも呼ぶが、弟のリカルドに対して話すなら名前の方が自然だと思ったからだ。


「わ、私の事は……いつも殿下としか呼ばないじゃないか……‼︎私は、名前で呼ばれた事なんて、1度たりともない‼︎……フランチェスカも、やはり……兄上が、いいんだな……」



今にも泣きだしそうな声だった。


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