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先日、王妃に屋敷訪問をして貰おうかと頭を過ぎったが、まさか本当に訪問されるなどと思いもしなかった。
まあ、王妃様ではなく訪問されたのは何故か王太子殿下ですが。王太子殿下は、お招きしていないんですが……。
今フランチェスカの目の前には、リカルドの兄であり王太子のレアンドルが座っている。
この兄にしてあの弟あり、ね。フランチェスカは内心ため息を吐いた。
その日フランチェスカはリカルドから解放されて、ゆっくり読書をしていた。リカルドは先程までフランチェスカに膝枕をされてご満悦そうだったが、いつの間にか寝てしまった。
これ幸いとフランチェスカは執事に頼み、別の長椅子にリカルドを運ばさせ、ようやく解放されのんびりしていたのだが。
暫くすると、侍女がバタバタと部屋に入ってきた。余程慌てていたのか、扉を叩く前に部屋に入り「申し訳ございません‼︎」と叫ぶとその場で扉を叩いた。
それ、意味ないから。
思わず苦笑いした。だが、次の瞬間侍女の言葉にフランチェスカは呆気にとられて固まる事となる。
「お、王太子殿下がお見えです‼︎」
フランチェスカは、暫し呆然としていたが我に返り立ち上がる。リカルドを見遣るがこの騒ぎの中、彼は爆睡していた。
ダメ犬……番犬にもならないじゃない。
フランチェスカは、1人急ぎロビーに向かった。
「王太子殿下」
「やあ、フランチェスカ嬢」
挨拶もそこそこにレアンドルは、満面の笑みでフランチェスカにある物を手渡して来た。
「これは……封書」
「今直ぐに、中身を検めて欲しいんだ」
「……」
この光景と台詞、もの凄く身に覚えがある。フランチェスカは、笑顔を引き攣らせながらも「検めさせて頂きます」と言い仕方なく開封をする。
『フランチェスカ嬢
実は、暫くの間屋敷に滞在させて欲しいんだ。
可愛い弟夫妻と親睦を深めたいと考えている。
宜しく。
レアンドル』
目の前にいるのに、わざわざ手紙を渡してくるのはもはや王族の嗜みな訳⁉︎
そう思わざるを得ない。それともこの兄弟が変わっているのか……1ついえるのは宜しくされたくないという事だけだ。
フランチェスカは、黙り込み冷たい視線を向けた。
そして今に至る。
「王太子殿下、一体どうされたのですか……屋敷に滞在されたいとは……」
レアンドルとは、リカルド以外の接点はない。何度か挨拶はした事はあるが、2人きりになるのは初めてだ。正直気不味いし、面倒だ。相手は王太子である為扱いに困る。
暫く滞在したいとの事だが……今直ぐに!帰って欲しい……リカルドだけでも手が掛かるというのにこれ以上冗談じゃない。
「そのままの意味だよ。可愛い弟と可愛い義妹と、親睦を深めたくてね」
これは……裏がある。今更に、フランチェスカは兎も角、弟のリカルドと親睦を深めたいなど理解し難い。レアンドルの目的は分からないが、絶対面倒な事になるに決まっている。
ここはハッキリと断らなくては!とフランチェスカが意気込んだ時だった。
バタバタと廊下から足音が聞こえてきた。瞬間何故かレアンドルは立ち上がると、フランチェスカの座る長椅子の後ろへと隠れた。
「王太子殿下、何を」
シッ……と、人差し指を立ててレアンドルは笑った。




