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仕事をさせなければ……。
目の前でフランチェスカの腿の上をかけて、アレキサンドロスと闘っているリカルドを見てため息を吐く。
先程まで、膝の上にはアレキサンドロスが寝ていた。だが後からリカルドがきて、当然の様にアレキサンドロスを下に下ろすと自分の頭を乗せた。
それに腹を立てた、アレキサンドロスはリカルドを引っ掻き指に噛み付く。更にそれに腹を立てたリカルドは、今こうしてずっと睨み合っいをしていた。
舞踏会から10日程。リカルドが、つまらないと言って早々に帰宅してきてから、彼は1度も愛妾の元へといっていない。屋敷にずっと滞在している。
まあそこは、彼の屋敷なのだから文句は言えない。
「殿下、いつまでそうなさっているんですか」
呆れ顔のフランチェスカに、リカルドは不満そうに口を尖らせる。
「君の膝の上は、旦那である私のものだ!」
……そんな事聞いてませんが。
「なのにこの猫は!」
「シャーッ‼︎」
アレキサンドロスも負けじと、リカルドを威嚇する。
「殿下、猫と真剣に喧嘩なさらないで下さい」
大の大人が、仔猫と真剣に喧嘩するなど有り得ない。これが、5歳くらいの子供ならば、微笑ましいが……あー……中身は5歳児以下でしたね。
「それより、殿下。そろそろお仕事なさって下さい」
フランチェスカが嫁いできてから、彼が仕事をしているのを一度たりとも見たことがない。いくら本人が重要じゃないと主張しても、流石にまずいだろう。
「嫌だ」
カプッ。
そうリカルドがそっぽを向いた瞬間、アレキサンドロスが彼の指を噛んだ。
「痛っ!何をする⁉︎」
「にゃあ」
可愛く鳴いて、ぷいと横を向いた。
これには、苦笑いせざるを得ない。
「フランチェスカ!また、噛まれたんだ」
見れば分かります。
リカルドはそう言いながら、フランチェスカに擦り寄ってきた。フランチェスカに抱きつき、胸元で顔をすりすりしてくる。
この変態クズが……あら、やだ、口が勝手に。オホホ。
押しのけてやりたいが、相手は王子だ。我慢、我慢。
「殿下は、甘えん坊さんですね~?」
だが、嫌味の1つも言いたくなる。
「……甘えん坊故、このまま胸を吸わ、ぐゔ~」
フランチェスカは満面の笑みを浮かべながら、リカルドの顔を鷲掴みにして自身から引き剥がす。
「アレキサンドロス」
そして、アレキサンドロスを呼び寄せるとリカルドの顔の前に持ち上げた。
シャーッ‼︎
「っ‼︎」
見事リカルドは、アレキサンドロスに顔を引っ掻かれ声にならない声を上げ、悶絶した。
「ほら、殿下。動かないで下さい」
顔に傷を負ったリカルドは、フランチェスカに消毒をして貰っていた。だが、そうとう滲みるらしく涙目になっている。
「はい、お終いです」
「……フランチェスカ」
急にいつになく真剣な面持ちになるリカルドに、フランチェスカは息を呑む。
「なんでしょうか、殿下」
「フランチェスカは、私が嫌いか」
その言葉に驚いた。まさか、こんな質問をされるとは思っても見なかった……。
「嫌いなんて、そんな事は」
「なら、何故抱かせてくれない!口付けすらさせてくれないだろう⁉︎」
こんな真っ昼間から、声を大にして言わなくとも……。まあ、確かにここ数日彼からそれらしい誘いはされた。フランチェスカがベッドに入ると、リカルドも一緒のベッドに入ってきて後ろから抱き締めてきた。
興奮しているのか、鼻息荒く「はぁはぁ、フランチェスカっ……」と言っていた。実に気持ち悪い。
肘で胸打ちを食らわしたら、大人しくはなったが。
不能でも、彼は性欲が旺盛らしい。まあ、13人も愛妾がいるのだから、当たり前か。
そろそろ我慢の限界なら、別に愛妾の元へと行って来ても構わないと本人には話してある。だが、一向に行こうとしない。
「分かりました、殿下。もし殿下がちゃんとお仕事して下さるなら……ご褒美として、く、口付けまでは許可します」
自分でも何を口走っているのだろうと思ったが、意外にも彼はやる気になった。
「分かった。その言葉に二言は無いな」
「え、えぇ……」
リカルドの気迫に押されながら、フランチェスカは頷いた。
「仕事を、する」
この日から、リカルドは真面目に仕事をする様になった。ご褒美が欲しいが為に……。




