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仔猫が屋敷に来てから3日後。




「フランチェスカ」


「はい、はい、殿下」


先程からしきりに名を呼ばれているが、フランチェスカは生返事で返していた。


「フランチェスカ、ズルいぞ……」


「あら、殿下。ズルいとは何がですか」


リカルドが不機嫌そうに言ってきたので、流石に手を止めて彼を見た。



「どうして、その猫ばかり構うんだ」


リカルドの言葉に、フランチェスカは一瞬間の抜けた表情になるが、直ぐに笑顔に戻した。

彼は不満げな表情を浮かべている。


「殿下、今この子は食事中なんですよ。まだ仔猫だから目が離せないんです」


「私も、今おやつの時間だ」


そう言って威張るリカルド。


……だから何なんでしょうか。そんな報告は入りません。大の大人におやつの時間だ、と言われても困惑するほかない。


リカルドは、チラチラとフランチェスカへ仕切りに視線を送ってくる。これは、あれだ。食べさせて欲しいのだろう……。


いつもなら、根負けして食べさせてしまうが、今日は知らないフリをしてやり過ごす。いつまでも、甘やかすのは良くない。


「アレキサンドロス、美味しい?」


リカルドを無視して、懸命にミルクを飲んでいる仔猫に、フランチェスカは話しかけた。すると今度は、リカルドが間の抜けた顔をした。目を見開き、口は半開きになっている。


「アレキサンドロス……それは、まさかこの猫の名か」


「ご名答です、殿下。私が名付けました!格好いいと思いませんか?」


フランチェスカは満面の笑みで、自信満々に言った。


「……」


「なんですか」


憐れむ様な視線を向けてくるリカルドに、フランチェスカは口を尖らせる。


「いや、センスの欠片もないと思った。ただそれだけだ」


その言葉に、フランチェスカは苛っとする。失礼にも程がある。


「でしたら、殿下はどのような名前だったらセンスがあると仰るんですか」


フランチェスカが、そう訊ねる彼は自信満々に鼻を鳴らした。


「そうだな。マリアンヌジュリエッタローズマリーとかはどうだ」


「……殿下こそ、ズルいですよ。候補は1つに絞って下さい」


マリアンヌ、ジュリエッタ、ローズ、マリー、確かにどれも可愛らしい名前ではある。センスがあるのは認めてもいい、だが。


「それに、残念ながらこの子は男の子なんです」


フランチェスカは勝ち誇った顔で言ってやった。センスがないと言われた、先程のお返しだ。



「そうか……ならば、リチャードアルフレッドモーリスレオン!でどうだ」


リチャード、アルフレッド、モーリス、レオン、また候補が複数ある……。


「殿下、先程も申しましたが候補は1つでお願い致します」


不満げに、フランチェスカがそう言うと。


「何を申している。私はそれぞれ1つの名前しか提示していない」



その瞬間、フランチェスカに衝撃が走る。


「で、殿下。まさかマリアンヌジュリエッタローズマリーとリチャードアルフレッドモーリスレオンは、それで1つの名前なんですか⁉︎」


まさかとは思うが、一応確認している。


「何を当たり前の事を」


長過ぎる……。


「殿下……」


「なんだ、いい名前だろう?猫には勿体ないくらいだ」


センスが壊滅的です。感服しました。


にゃあ~。


呆れ顔のフランチェスカに、仔猫もといアレキサンドロスは嬉しそうに鳴いた。



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