12
フランチェスカは、手に大きめのバスケットを抱えて部屋に戻ってきた。
朝食後、リカルドを部屋に残しフランチェスカはあるものを取りに出掛けた。リカルドもついて来ようとしたので「殿下は大人しくお待ち下さい」と言うと、拗ねたような顔をして、長椅子に横になってしまった。
全く、しょうもない方だ。
「殿下、お待たせ致しました」
「フランチェスカ!」
フランチェスカが部屋に戻ると、彼は嬉しそうにして起き上がる。まるで主人の帰りを待つ犬のようだと、思った。尻尾でもついていたら、はち切れんばかりに振っているに違いない。
まあ、こういう所は可愛いと言えなくもない。だが、クズだ。それは変わりない。
フランチェスカは、リカルドの前のテーブルに、抱えていたバスケットを置いた。予定よりも早く彼が帰ってきた所為で、少しバタついてしまった。
「なんだ、これは」
無論そうなるだろう。目を丸くしながら、怪訝そうな表情を浮かべる。想像通りの反応だ。
「私から殿下への贈り物です」
にっこり笑って、彼にバスケットのフタを開ける様に促した。
「何故、私が」
文句を言いながらも、リカルドはフタをゆっくりと開いた。そして。
「なっ⁉︎」
開けた瞬間、リカルドは驚き声を上げると、後ろにのけぞった。
にゃあ~。
「あら、殿下。そこまで驚かなくとも宜しいのでは……こんなに可愛いのに」
バスケットの中から仔猫が、顔を覗かせている。
「な、な、何故猫がっ……私は、猫は苦手なんだ‼︎」
これは予想外だった。
「そうなんですか?もしかして、触ると痒くなったりするんですか?」
「いや、単に苦手なだけだ。昔……引っ掻かれた事があった故、余り好かない……」
なるほど。心的外傷というわけね。
「大丈夫ですよ、殿下。まだ仔猫ですから、怖くないですよ」
フランチェスカは安心させる様に笑うと、仔猫をリカルドの前に差し出した。
にゃあ~。
彼の顔は強ばる。
「殿下」
フランチェスカが優しく声を掛けると、リカルドはプルプルと震わせながらも、恐る恐る仔猫へと手を伸ばして来た。そして……。
カプッ。
触れたかに思えたが、その前に仔猫に指を噛まれていた。
「っ……⁉︎痛っ‼︎」
「あら」
「殿下、大丈夫ですか?」
フランチェスカはリカルドの指に包帯を巻いている。そんな大した怪我ではないが、本人が痛い痛いと騒いでいるので、消毒して包帯を巻く事になった。
「大丈夫じゃないっ。だから猫は嫌なんだ!」
リカルドは、不貞腐れた様にそう言って仔猫を睨みつけている。仔猫は仔猫で、リカルドの事が気に入らないのか怒った様子でシャーッと威嚇をしていた。
こんな筈ではなかったのに……生き物を飼う事で責任感を養おうと考えたのだが、まさかの猫嫌いだったとは。
犬にすれば良かったかしら……いや、どの道同じ様な事が起こりそうな気がする。
ため息を吐いてリカルドを見ると、彼はまだフランチェスカを挟んで仔猫と睨み合っていた。




