表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/168

第49話:のぼせるリズ

 翌朝、俺はリズに……怒られていた。それも、とても理不尽な理由で。


「たった一日で、どうしてあんな豪華なお風呂ができてるの! 大自然を独り占めしてるみたいで、二時間も入っちゃったじゃん!」


 のぼせて顔が赤いリズは、気持ちいい風呂を堪能しすぎて、逆に不機嫌になっている。この現象を八つ当たりと言うが、それを突っ込むと逆上させてしまうため、黙っておくことにした。


 しかし、一つだけ弁明させてほしい。俺が朝風呂を勧めた理由は、リズが寝坊したからだ。


 付与魔法を施した肌着と久しぶりのふかふかベッドで、熟睡モードに入ってしまったんだと思う。恐る恐るリズの部屋に入って、何度も肩を叩いたり揺らしたりして、優しく起こしてあげたよ。それなのに、眠い目をこすりながらリズが起きたと思ったら、目が開いてなかったんだ。


 仮拠点生活の初日で早くも実家感覚かよ! と突っ込みたい思いを心の奥底に抑えつけ、風呂好きのリズのことを思って、俺は大浴場に入るように促しただけ。ハッキリ言って、何も悪くない。


 すでに一番風呂はいただいたけど、目を覚ますには最適な環境だったはずだから。


「大浴場、最高だっただろ? 扉を開けて入った瞬間、熱気が霧みたいになっててさ」


「そうなの。暖かい空気が身を包むように出迎えてくれて、まるで山の中にいるみたいだったよ! お湯の温度もちょうどよくて、大きな岩がすっごいリアルだった。奥に行くとブクブクと空気が出てくるところがあって、ちょっとくすぐったかったんだよね」


「最初は変な感じがするけど、ジェットバスは慣れると気持ちいいんだよな。風呂場で全身マッサージされてるような感覚があって、クセになるんだ」


「わかるなー。私も最初は抵抗あったけど、なんか気になって、何回もトライしちゃったもん。心なしか肌がツルツルになった気がして……オーーーイッ!」


 どうした、リズ。ノリツッコミが下手になってるぞ。のぼせて顔が赤いから、恥ずかしいのか、怒ってるのか、こっちで判断できないじゃないか。


「ミヤビ、お願いだから、もう少し常識の範囲内で建築してほしいの。毎日が楽しみになる風呂場ができて、本当にありがとうなんだけどね」


 真剣な顔でリズが訴えかけてくるけど、俺だって同じことを思っている。もう少し普通の建築をしようと思って、最初は作り始めたんだよ。


 でも、建築途中に露天風呂計画が思い浮かんだから、仕方ない。悪いことをしてるわけじゃないし、今後はサウナ機能のアップデートも予定している。快適な拠点生活を過ごせると思って、目をつぶってくれ。


 周りにバレて問題になりたくない気持ちは俺にもある。領主邸の前で無茶なことしたら、絶対に悪い意味で目を付けられるからな。


「庭に木を植えておいたし、外からは建物自体が見えないようになってる。大浴場の周りには落とし穴を掘った影響で、覗かれたりバレたりする心配もない。さすがに俺も、領主邸より大きな建物を作らないように配慮してるんだぞ。見た目だけな」


「んーーー……バレないんだったら、別にいっか。ごめんね、きつく言っちゃって。でも、落とし穴の存在は早めに教えてもらいたかったなー」


「ごめん、スッカリ忘れてたわ」


 ハハハと笑って誤魔化せる間柄の俺とリズは、非常に良い関係と言えるだろう。伝え忘れていたとはいえ、落とし穴でケガはしなかったし、今後は快適な露天風呂を楽しめるんだ。


 もはや、最高のパーティ拠点生活が確保されたと言っても、過言ではない。


「価値観が違いすぎてツライ。私、もう貴族の生活でも満足できない気がする」


 リズが心に深刻なダメージを負ったみたいだが、気にしてはいけない。今後はもっと快適な生活に向けて仮拠点のアップデートを行い、本拠点の建築を進めていこうと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作『女神の使徒に選ばれた私の自由気ままな異世界旅行とのんびりスローライフ』も、チェックしてみてください!

https://ncode.syosetu.com/n3708ii/

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ