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第17話:クラフトスキルがおかしい

「国が新しい街を作るとき、絶対にミヤビは参加した方がいいよ。クラフターには見られないと思うけど」


 街を出発して四時間が経過する頃、俺はリズに呆れられていた。三つ目の森で採取をした後でも、木材を欲しているからだ。


 当然、森の木をすべて伐採するような野蛮な真似はしない。生態系に異常が出ない程度に、木々を頂戴するだけ。樫の木だけでなく、ヒノキ、ブナ、松など、すでに大量に入手した。


 今は四つ目の森に向かって、森を離れた草原にいるところだ。


「他のクラフターが遠慮しているだけで、いっぱい採取したいと考えてるさ。リズみたいに付き合ってくれる人、なかなかいないと思うぞ」


 何日も護衛依頼をする冒険者とはいえ、危険な森の中を何時間も護衛してくれるリズの存在は大きい。魔物を気にせず採取できるし、危険な魔物が出そうな領域になると、ちゃんと止めてくれる。


 魔物の足跡が残っていたり、木に付けられた傷があったり、魔物の骨が落ちていたり。色々な情報を読み取って、危険性が高まると教えてくれるんだ。


「こんなに淡々と素材採取をする人は、ミヤビしかいないよ。普通は生産ギルドが領主様に依頼して、兵士が伐採に行ったものを持ち帰るの。大掛かりな仕事になるし、伐採する音で魔物が寄ってくるから、冒険者に護衛依頼が届くんだよね」


 確か、前にも生産ギルドが素材を管理していると教えてもらったな。現実的に考えれば、すぐにインベントリがいっぱいになるし、短時間の護衛依頼を冒険者にお願いしたところで、割りに合わない出費となるだろう。それなら、生産ギルドから購入した方が時間も金も節約できる。


 インベントリの容量が増えるまで採取活動して、クラフトスキルを極めようとする人がいないのも、当然だな。もしかしたら、採取能力が向上するスキルがあることも知られていないかもしれない。


「それなのに、隠密で採取するって、なに? 木が倒れずにインベントリに入るなんて、不自然にもほどがあるよ」


 Cランク冒険者のリズが、驚きっぱなしで呆れてるくらいだから。


「俺も同じことを思うけど、スキルって、そういうもんだぜ」


「これからはクラフターって名乗らずに、開拓者と名乗ることをオススメするね」


 スッカリ呆れ果ててしまったリズと一緒に歩き進め、川が見えてきたところで昼休憩をする。


 護衛で神経を研ぎ澄ませていたリズが、革袋の水をおいしそうに飲むなか、俺は作業台を設置。拾い続けた石を使って、何個もバケツを作製した。


 バシャンッ! バシャンッ! と作ったバケツで水を汲み、昨日街で余分に買った革袋にもブクブクと水を汲む。


「一人だけサバイバルじゃん……」


 頭を抱えるリズには、刺激的な光景だったらしいが。


「毎回飲み水を確保しなくても、蓄えておいた方がいいだろう。凶暴な魔物がいたら汲めないし、雨の影響で今日よりも水の流れも速くなれば、水の確保が困難になるかもしれない」


 前回の冒険者依頼を教訓にして、俺は厳しい現実に目を向けている。魔物がいるこの世界では、生易しい考えが通用しない。街を一歩離れたら、常に危険と隣り合わせになるんだから。


「言ってることは正しいのに、行動が非常識なの。バケツに水を汲んで持ち運ぶ冒険者なんて、ミヤビしかいないよ」


「バケツの水を飲ませてくださいって、言う日が来ないといいけどな」


 水の確保が終わると、地面に木ブロックを設置していく。


 雨でぬれた地面の上に座りたくないし、石の上は冷たくて、お尻が痛くなる。リラックスできない休憩なんて、そんなのは休憩じゃない。しっかり体力を回復して、初めて休憩の意味があるんだ!


 ここはサポーターの俺に任せておけっ!


 ポンポンポンッと木ブロックを敷き詰め、二人で過ごせる休憩スペースが誕生する頃には、リズの顔が死んでいた。呆れるを通り越して、現実逃避が始まったみたいだ。


 そんなリズに朗報を入れようと思う。


 作業台の前に立った俺は、さっき取ってきたばかりのブナの木を使って、椅子と机を作製。お尻が痛くならないように、街で買った生地とグラウンドシープの羊毛を詰め込み、ふわふわのクッションも作る。


 それらを、どーーーんっ! とインベントリから取り出して、快適な空間を演出すると、リズが立ち眩みを始めてしまう。


 一刻も早く椅子に座って、体を休めてほしい。昼からの採取に影響する可能性がある。


「ちょっと待って! もう家じゃん。屋根と壁がないけど、もう家じゃん」


「仮設リビング的な雰囲気をイメージしてみた。ゆっくり休憩できるだろう?」


「過ごしやすそうだけど、周りをよく見てよ。私の言いたいこと、わかるでしょ?」


 真剣な顔で問いかけてくるリズに、俺は何か重大な見落としがないか考え始める。


 VRMMOの世界では、当たり前の光景だ。でも現実世界だったら、どうだろうか。


 これだけでは、本当に快適とは言えない……!


 ハッと重大なことに気づいた俺は、急いで作業台の前に立つ。パパパッと作製して、一つのアイテムをリズに手渡す。


「そうそう、ひざ掛け助かるー。外だと寒いもんねって、バカッ!!」


 リズのノリツッコミが、こだました。

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