闇夜
最近忙しかったので、久々の更新です
「思ったより、遅くなっちゃったなぁ……」
小さな呟きが、暗い夜道に木霊する。
いつもの帰宅時間なら、この辺りもまだ開いているお店があるので、そこまで暗くはない。
しかし、今は夜の十時過ぎ。流石にこの時間では開いているお店もなく、いつも通るこの道も不気味な程に静まり返っていた。
加えて最近では、連続殺人が相次いでいる。そう思うと、この暗さも余計不気味に思えてしまった。
ーーやっぱり、店長に送って貰えばよかった……
と、私は数十分前の選択を後悔し、項垂れる。
バイトを終えて上がろうとした際、最近の御時世を心配した店長が、近くまで送っていくといってくれていた。
だが、バイト先から自宅までそれほど距離はない。そのため、問題ないと提案を断っていたのだ。
いつもであれば、このくらいの夜道など造作もない。しかし、近頃話題の吸血鬼殺人のせいで、そんな夜道も余計に怖くなってしまった。
「……やっぱり、早く帰ろう」
そう呟くと、私は歩く速度を早め、家路を急いだ。
家路を急いでいた私の耳に、何かの鳴き声が聞こえたのは、それからしばらく経った頃だった。
『シャアァァァ……』
まるで、身を潜めた蛇が漏らしたような、小さな鳴き声。
最初は、ただの聞き間違いかと思った。だが、その後数度に渡り聞こえた鳴き声が、これが空耳でないことを証明していた。
「なにか、いるのかな……」
声の正体が気になり、音のする方へと向かってみる。しばらくして、私がたどり着いたのは、近所の無人寺だった。
「ここって、確か……」
三週間前、落雷により御神木が焼け落ちてしまったお寺。いつもならば、特に何かを気にすることなく通り過ぎている。
それでも。
夜が遅いせいか、それとも不思議な鳴き声を聴いたせいかはわからない。だがそれでも、今日のこの寺院にはナニかがある。そう、直感する不気味さがあった。
やはり、このまま帰った方が良い。だが、あの声の正体も気になる。
少しくらいならば、入っても問題ないはずだ。
「さ、さすがに、お化けなんて出るわけないよね……」
結局、直感よりも好奇心が勝ってしまった私は、そのまま不気味な雰囲気が漂う寺院へと、足を踏み入れるのだった。