表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の日常が突然終わった件  作者: カプチーノ
1章 始まり
8/9

8話 セブワ教

よろしくお願いします!

「う、うぅ... ... 」


俺は意識を取り戻す。体を動かそうとすると激痛が走る。それに体から魔力が失われているのだろう。体がだるかった。

さらに頭がまだボーッとしていて、なにか重要なことを忘れているような気がする。


「目が覚めたんだね。今はまだ体を休めておいた方がいい。内側が大分傷ついているからね」


そう言う声がし、俺はそちらに顔を向ける。

するとそこには──ルミナがいた。


「なんで、ルミナがここに... ...?」


「すごい魔力を感じたんだ。それで急いで来てみたらこんなことになってたんだよ。そしたらお腹に風穴あけてる人がいるし、サードの身体強化を使って体ぼろぼろの人いるしで、もうびっくりだよ」


「そうだ!ルミナ!た、隆志は!?」


俺はルミナのその言葉で忘れていたことを思い出した。身体中に走る痛みを無視して体を起こし、周囲を見渡す。


「おちつきなって。私が隆志くん?の風穴はしっかりと塞いどいたから。まぁとはいっても、魔力抵抗がなかったから治療できたんだけどね。

とりあえず応急処置をしといたから、あとは少しずつ回復させていくだけだね。」


俺はルミナの言葉を聞き、安心する。

俺を助けたせいで隆志が死んでしまったなんてことがあったら、俺はもう立ち直れなかっただろう。


「ルミナ、隆志を助けてくれて本当にありがとう。もし俺に出来ることがあったら何でもするから言ってくれ」


「お?何でもするって言ったね?」


「あ、いや、そのー、お、俺ができる範囲でだよ?」


ルミナの目が怪しく光ったような気がして、俺は口にする言葉を間違えたと思う。


「ならさ、私の弟子になってよ」


... ...え?


「そんなに俺の事弟子にしたいのか?」


「実はさ、いままで調査してて分かったんだけど、今回の事件は全てセブワ教っていうのが関わってるみたいなんだ。

それで、そいつらは君の魔力を狙ってるみたいで、だから私は君を弟子にして君に自衛方法を教えると共にセブワ教を潰すのを手伝って欲しいんだよ」


「は、はぁ... ...?」


セブワ教だの俺が狙われてるとかを突然聞いて混乱する。


「ま、まずセブワ教ってなんなんだ?」


「ごめん、説明を端折っちゃったね。

セブワ教っていうのはフルワールド全土で信仰されてる宗教なんだよ。セブワ教自体は孤児を保護したり、貧民の人達の為に炊き出しをしたりと世界の人々の為に頑張ってる宗教なんだよ」


その話を聞けばとてもいい宗教のように思えた。

ラノベとかだと宗教の幹部たちが寄付金を大量に集めて横領とかしてるからな... ...。


「でも、セブワ教の本当の目的はフルワールドとエンプティワールドの統合なんだよ。でも、そんなことをしたら世界がおかしくなるし、最悪の場合両方の世界が崩壊しかねない。

そんなことにならないように私たちは動いてるってわけなんだ」


... ...なんかサラッと凄いことを聞いた気がする。誰だよセブワ教いい宗教だって言ったの。

世界統合とかサイコパスじゃねーか。


「えーっとさ、スケールがデカすぎて分からないんだけど、とにかくセブワ教ってやつが俺たちの世界を乗っ取ろうとしてるって訳か?」


「まぁそういうことだね」


「そもそもさ、なんでそんなことわかるんだよ」


「なんでって、セブワ教の神、ルーリオン神様からの神託だよ?」


ルミナは何当たり前のこと聞いてるの?って顔をしてる。いや、そんな顔をして言われても俺たち現代人はほとんどの人が神様なんて信じてないんだよ。神託とか普通頭に浮かんでこないわ。


「ルーリオン神から直接使者の天使がやって来てそう言ったんだ。あと手を貸してくれって。

そう言われたら助けない訳には行かないでしょ?」


いや、まぁそうだけど。てか神様ならどうにか出来ないのかよ。神様なら全知全能であれよ。ゼウスであれよ。

ま、とは言ってもラノベあるあるだよな。神様が手を出せないっていうのは。

てか聞きなれない単語がいっぱいだ。

というかそもそも、


「なんで世界を統合するのに俺の魔力が必要なんだ?」


いままでの内容からするとなぜ俺の魔力が必要なのかが全く分からなかった。

俺ごときの魔力でなにが出来るというのだろうか。ただの人畜無害な人間でしか無いのだ。


「それはね、世界を一体化させるための魔法である《インテグレート》っていう魔法が闇の魔法だからなんだよ。

その魔法は神様がシャドウには使えないようにしたんだけど、君のように無属性の魔力を闇属性に変換したらその魔法が使えちゃうんだ... ...」


俺の魔力やべぇな。世界滅ぼすレベルの魔力かよ。

俺ある意味魔王?

んなわけないか。ただの無害な高校生だ。たぶん。


「だから世界のためにも君のことだけは保護しないといけないの」


ルミナは真剣な顔をしてそう言う。


「たしかに、俺がいまみたいにここにいると絶対にセブワ教とやらに連れていかれるわな」


自分でもわかっていることだが、俺はマジで弱い。多分ほとんどの奴に勝てないだろう。

さっきイノシシに勝ったのだってほとんど偶然みたいなものだ。

ということは俺がとるべき行動はたったひとつに絞られてしまう。


「... ...俺をフルワールドに連れてってくれないか」


「わかった。とりあえず君は一旦家に帰って荷物を持っておいで。

あと、隆志君のことどうしようかな... ...?」


隆志のほうに目をやりながらルミナが本当に困った顔をしてこっちを見てくる。

俺に聞かれても分からないわ。


「隆志くん、今は落ち着いてるんだけどあくまでしたのは応急処置だから、このまま放置してたら死んじゃうかもしれないの。

たぶんこの世界の病院じゃ治せないと思うんだけど... ...」


「なら連れていくしかないんじゃないか?」


俺が勝手に決めるのはどうかと思うけれど、すべてのことは命あっての事だ。

それに俺は命を助けてもらったことのお礼を言えてない。なのに死なせる訳にはいかないんだ。


「わかったよ。じゃあ私は隆志くんを連れていくから、3時間後に準備をして如月高校の校舎の屋上に来てくれる?」


ルミナはそう言って、ゲートの準備があるということで、隆志をつれて先に学校の方へと向かって行った。










俺は今家へと向かいながらゆっくりと歩いている。家へ帰って荷物を準備して学校へ向かっても時間には余裕がある。なので俺はこれからお別れするこの街をゆっくりと見たいと思ったのだ。

1年ちょっととはいえとてもお世話になった街だ。俺にとっては大事な街である。


あそこの家はいつも声をかけてくれるおばさんの家。あっちもおばさんの家。あっちも、こっちもおばさんの家。

... ...あれ?俺の知り合いおばさんしか居ないのか?

まぁいっか。声を掛けてくれたのは大事な思い出である。



普段なら10分程の道だが今は20分くらいかけて歩いた。この角を曲がればもう家に着くというところまで来た。

今日ここに来たのは2回目である。1回目はあのイノシシ。


「思い出したら寒気がしてきたな... ...」


生きてはいるが今思うと俺は命を投げ捨てるような真似をしたんだなと思う。

そして、俺は1歩を踏み出し家への道を進む。


するとそこには黒いフード付きのコートを来た何者かが俺の家の前に立っていた。

この角とりあえずなんかいるよな... ...。

体格的になんとなく女子な気がするが、距離もあるしフードを深く被っており顔は見えない。


見たかんじすごく怪しいが、まぁそんな人がいてもおかしくないなと思いながら俺は歩みを進めていく。


「止まれ、桐間光」


その人まであと5mという所で声をかけられる。その声は男性か女性か分からないように加工されており、機械っぽい声がした。

俺はその言葉に従い止まる。


「我々の目的のため同行してもらう。拒否するというのであれば、少々手荒な真似もさせてもらう」


目の前の謎の人物は俺に向かってそう言った。

このタイミングで俺を連れていこうとするヤツらといえばひとつしかないだろう。


「セブワ教か... ...」


「ほぅ... ...知っていたか。そういえば我々からのプレゼントは気に入って頂けただろうか?」


「プレゼント... ...?」


何故こいつらが俺にプレゼントを渡すというのだろうか。それにプレゼントなんて最近貰った記憶がない。


「そうプレゼント... ...我々が操ることが出来るなかでも最高のシャドウを貴方にプレゼントさせて頂いたんだが」


シャドウ... ...つまりあのイノシシのことか。

俺はふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。


「お前らかよ、俺の親友の隆志を傷つけたクソ野郎は、お前らなのかよ... ...!」


「おや?何故かお怒りのようだ。我々のプレゼントはお気に召さなかったようだね。まぁいい、時間です。貴方には我々の崇高なる目的のために着いてきて貰います」


「... ...まれ」


「おや?なにか仰いましたか?」


「黙れっつったんだよ!誰がお前らみたいなサイコパス野郎に着いていくんだよ!俺はお前らのせいで死にかけて、親友まで奪われてさらに日常まで奪われてんだよ!そんな奴について行かねぇよ!」


今は夜だ。しかし近所迷惑なんて関係ない。俺はこいつらに感じた怒りを全力でぶつける。


「そうですか... ...そうですか、そうですか。

わかりました。では無理やりにでも連れていかないと行けませんね... ...」


奴はそう言い終わった瞬間姿を消した。俺はびっくりしたが奴を探そうと周囲を見回す。


「──っ!!」


俺は直感でやばいと感じ後ろに仰け反った。

その瞬間目の前には探していた奴がおり、そしてそいつはいつのまにやら短剣を持っており、その短剣は俺の首を狙っていた。


「ほぅ... ...。魔力に選ばれただけでなく戦闘のセンスもあるということですか。観察してたかぎりただの一般人だと思っていたんですけどねぇ。まぁ戦闘のプロとは程遠いですけども」


そいつは余裕があるからだろうかそんなことを言いながら俺のことを短剣で攻撃し続けてくる。

それに対し俺は紙一重で避けるので精一杯だ。

さらにこいつは俺で遊んでいるようであり、全然本気を出していないように思われた。


俺はこいつに対抗しようと指輪から剣を出そうとする。しかし、指輪の魔力は先程のイノシシとの戦闘で切れており剣は現れない。

魔力を補充しようにも、こんなに激しく動きながら魔力の補充は出来ないし、そもそも俺の体の魔力も残っていない。


「さて、そろそろ終わりにしますか。

ああ、安心してください。あなたを殺すことはありません。私も手加減しますから」


こいつがそう言うとこいつの体内で魔力が練られていくのを感じた。

近くにいてはまずいと思い俺はこいつから距離をとろうとする。こいつが振るう短剣を無視して全力で後ろに飛ぶ。

短剣を回避するための行動をしなかったため、こいつはやばいと思ったのか、俺の顔を向かって突きをしようとしていた剣を咄嗟にずらすが、俺の左頬を掠めた。俺の左頬から血が流れる。


《ファイアバーン》


あいつは短剣を持たない左手を俺に向けてそう唱えた。いままで見てきた魔法は毎回魔法陣のようなものがあったが今回はなく、そのまま手から炎の弾が飛んできた。


その炎の弾はハンドボール程の大きさで、それなりの速度が出ていたので俺は避けることが出来ず、もろにお腹にヒットし、爆発した。


「グワッ!」


爆風で俺は飛ばされる。俺は直ぐに自分の怪我の状態を確認する。最近こんなことばかりが続いているため、そんなことが出来るようになっているのだ。


身体中が擦り傷ややけどだらけでとても痛いが動けないことはなかった。咄嗟に距離をとったおかげで魔法の威力が弱まったのだろうか?


俺が体を起こすと、こいつは俺の顔に短剣を向けていた。


「まさか短剣を避けないで距離をとる方を選びましたか。あの魔法は遠ければ遠いほど威力が落ちるんですよ。この世界でぬくぬくと育った小僧ごときがそれを見抜くとは」


いや、見抜いてないです。とりあえず距離取っただけです。

でもそれが結果として良かったのだが、今俺は短剣を顔に突きつけられており、どう考えても絶体絶命である。


「さて、では連れていきますか... ...おや?」


俺を連れて行くのかと思ったらこいつはなにやらブツブツと言い始めた。


「いえ、もうあとは連れていくだけです。... ...え?ですが!... ...あのグリームがこちらにいるのですか!?... ...わかりました」


こいつは何かと通話しているように話し続けた。


「いまはとりあえず引かせていただきます。ですがいずれは貴方のことを捕えさせていただきますので、そのおつもりで。それではまた会いましょう」


こいつはそう言い残して立ち去っていった。

正直言って俺は焦っている。

いやだって!いまさっきまで俺を殺そうとしてたんだよ!?それなのにいきなり立ち去っていくなんて!


「でも、助かってよかったぁ... ...」


俺ほんとうに最近命を落としかけすぎだろ... ...。絶対俺早死するんだろうな。

俺は立ち上がろうとする。


「いてっ!」


やっぱり魔法をくらったダメージはわりと大きいようだ。

俺はそれでも体を動かし家へ入る。


「とりあえず、鞄は宿泊行事で使う奴とリュックサックにするとして... ...」


俺は服を鞄いっぱいに入れて、リュックサックにはお菓子を何個か入れる。

他になにか必要だろうか?スマホ... ...は電池切れたら終わりだろうし、そもそも電波通ってないだろうから意味ないよな。

ほかにも消耗品とかはなくなったときになんか切なくなるから嫌だよな。


そう思いながら俺はふと目をたんすの上にやる。


「あっ!!」


そこには交通事故で死んでしまった父から貰った万年筆があった。

俺が小学生のときに父から貰ったものである。専用のケースが付いており割とお高いやつである。絶対に忘れてはいけないものなので俺は鞄に入れた。


「さてと、これで準備は終わりかな」


俺は最後に1年程という短い時間ではあるがお世話になったこの家の玄関を開ける。

家を出る前に振り返って


「じゃあな。今までありがとう」


そう言い残して、俺は家を出た。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ