2話 弟子にならない?
よろしくお願いします!
意識が覚醒する。まだギリ目を開けてはいない。
フッ、テンプレをやる時が来たようだな。
俺はゆっくりと目を開く。そして、
「知らない天じょ... ...って、天井じゃなくて空じゃねーか!」
人生で1回ぐらい言ってみたかったんだけどな。まぁ別の機会にお預けか。
てかなんで俺こんな所で寝てるんだ... ...?
確か、体育の周回走をしてて... ...
「... ...っ!!」
思い出した! あ、あの怪物は!?
俺は体を起こして周囲を見回す。
ここ、どこだ? なにかの建物の屋上っぽいけど... ...。
「君、気がついたのかい?」
後ろから声がした。慌てて振り返る。するとそこには... ...
「息を飲むような美少女がいましたって顔してるよ、君」
「いや、それ普通自分でいいます?」
「まぁ私は可愛いからね。というか、君。命の恩人に対して感謝の1つくらい言ったらどうだい?」
この人なんか話し方上から目線でウザイな... ...。
てか、この人が命の恩人て... ...本当なの?
見た目物凄くか弱そうだけど。
「君信じて無いね? まぁ気を失っちゃったし分からなくても当然か。じゃあ私が君に説明してあげよう」
説明しようとか言われても、正直俺はあの出来事を現実の出来事として受け入れられていない。
だって、あんな怪物が一体居れば地球なんて直ぐに崩壊するだろう。超破壊生物だ。
「まず、あの怪物はシャドウっていうの。名前の通り闇の魔力を持った種族のことよ。
あいつらは闇の魔力を理性を飲み込まれてるから、なんでも見境なく襲うわ」
... ...なにその設定。
あらやだ、この娘痛い娘なのかしら。
うん。中二病だな。
「... ...ねぇ、可哀想な娘を見るような目やめてくれる?あなたもその目でシャドウを見たでしょ?」
そ、そうだけれども... ...
「正直自分の目で見ても信じられないんだ」
「でもそれが現実。受け入れるしかないのよ。」
ま、まじかよ... ...。
「ちなみにものすごく絶望してる所悪いけど、あいつはシャドウの中でも底辺レベルだよ?
か弱い私1人で倒せたからね」
いや、こいつあれ倒せるとか地球滅ぼせるだろ。どこがか弱いだ。か弱いの意味を辞書で調べてから出直してこいよ。
「まぁそのあとは... ...」
そして彼女はシャドウとやらを倒したあとのことを教えてくれた。
怪我をしたクラスメイトたちは彼女が魔法で治療してくれたそうだ。魔法バリ優秀。あんな怪我も治せるんだな。
ちなみにだが、てか普通だな。即死の場合は直せないそうだ。
そしてクラスメイトたちの記憶だが、本来は今回のようなことが世界に広がり、混乱するのを防ぐために目撃者たちの記憶を消す必要がある。
しかし、今回クラスメイトたちは魂が抜けたような状態になっており、だれもなにも覚えていなかったそうだ。
彼女もなぜだかわからないようだ。
あ、俺の記憶も消さないといけないらしい。え、そんなの嫌なんですけど... ...。
彼女曰く、記憶を消されるかどうかは俺次第らしい。どういう事なんだ?
そんなことを考えていると彼女が
「とにかく、なぜあの子たちがあんな状態になってたのか調べないといけないかな」
「調べるって言っても、何か調べてわかるもんなのか?」
「どうかは分からないけど、やってみるしかないよ。エンプティワールドに危険が迫ってるかもしれないし」
「エンプティワールド... ...?」
エンプティワールドってなんだ?
「あぁ、そう言えば説明してなかったね。
私の名前はルミナ。フルワールドから来たの」
... ...え、世界2つあんの?ドユコト?
「君今すごく馬鹿な顔してるよ?」
「い、いや、いきなりエンプティワールドとかフルワールドとか言いわれたら... ...なぁ?」
さっきから訳の分からないことばかりで頭がパンクしそうだ。てかもうしてるわ。
「エンプティワールドっていうのは、魔力がない世界のこと。だからこの世界の人は基本的に魔法を使うことが出来ないの」
ほー、そーなのか。魔法使えたら便利だろうなー。登校するのに遅刻とか寝坊しない限りしないもんな。
いやまてよ?寝坊すらも防げるんじゃないか?
「そういえば君がさっき使ってたのも魔法だね。君に関してはよくわからないんだよね。で、次にフルワールド、魔力で満たされた世界ってこと。
フルワールドの人はほとんどの人が魔法を使えるんだ」
俺に関してはよく分からないって。... ...あれ??
「魔法はエンプティワールドだっけ?その世界の人には使えないんじゃないのか?」
「そうなの。あれは単純に魔力を放出して壁をつくる、魔法障壁っていう魔法なんだけど... ...どうして使えたのかは正直よく分からないのよね」
よくわかんないって... ...。俺実は人間やめちゃってる案件か?
「それでなんだけど、比較的魔力量も多そうだし、こっちの世界のことも知っちゃったんだから、君私の弟子にならない?」
「... ...は?」
「一応前々から手紙送ってたんだけど」
手紙の犯人はお前か!俺はあれですげぇ困惑したんだぞ!
「君が魔力を持っていることは遠くから見ても分かったからね。君割と魔力ダダ漏れだし」
そんなダダ漏れとかいう言い方されるとなんか恥ずかしいんだが... ...。社会の窓開けてるみたいな感じだな。
「弟子にしてどうするんだ?まぁなるかどうかは別として」
そりゃそうだ。いくら美少女とは言え何かわからない力を使う人の弟子になんてなれない。
いや、ただの美少女だったらついて行くとかではないぞ?うん。そういうわけではない。
「私が君を弟子にしたいのは、君の魔力が属性に染まってないからだよ。いわば無属性ってことだね。無属性はどんな属性の魔法でも使えるの。それで私は私の魔法を次の世代に繋ぎたいの。だから弟子が欲しいわけ。
あ、あと君がこの世界で無属性の魔力が使えるってバレたら、何されるか分からないよ?人体実験とかあるかもだし。
それならいっそ魔法を学んで自分で自分の身を守れるようにならないとね」
「い、いや。いきなりそんなこと言われても... ...」
人体実験とか言われても、正直... ...ついていけない。
自分が異形の怪物に襲われただけでも信じられないのに、さらにその上魔法が使えて、別の世界が存在してって... ...。
「まぁそうだと思ったよ。私はこっちの世界に1週間ほどいるからどうするか決めてね。
あ、それと私の弟子になるんだったら私と一緒にフルワールドに来てもらうからそのつもりで」
彼女はそう言って立ち去ろうとする。
「あ、そうだ、渡し忘れてたものがあった」
彼女はそう言ってあるものを投げてきた。
危うく落としかけたがギリギリでキャッチする。
これは... ...
「指輪... ...?」
それはシンプルな鉄というか銀というかよくわからない金属の指輪だった。
「見た目はね。それは私のお気に入りの魔道具だよ。魔力を流すと剣を生み出してくれる。まぁ、君運が悪そうだからね。なにかやばいものにでも遭遇したら使いなよ。私にはもう必要ないしね」
そう言い残し彼女は去っていく。
「ちょっ、ちょっとまてって!」
そう叫ぶが彼女は止まらない。
彼女は胸のあたりまである柵の近くまで行くと軽くジャンプして、柵を乗り越えて下に落ちていった。
人間離れしてる... ...。
じゃなくて!
ここはなんとなくだが8階ほどはありそうな建物だ。そんな所から飛び降りて助かるわけが無い。
俺は急いで彼女が落ちていった所を覗き込む。
... ...何も無い。人通りもあるが何かが落ちてきたような反応は一切ない。やっぱりこれも魔法でどうにかしたのだろうか。
いや魔法万能すぎな?ほぼ無敵じゃねーか。
頭が混乱している中、その日はとりあえず家へと帰ろうとする。
「いや、てかここどこ?」