第8話
龍神はあまねと出会った頃のことを思い出していた。
いつの頃だっただろう・・・ふと歌が聞こえ目を覚ました。
幼い人間の女の子の声だ。それはつたなかったが心がこもっていた。
長い間ずっと眠っていた龍神の目を覚まさせた歌声。
ある出来事で眠りについた龍神の心に響いてきたのだ。
それは毎日のように聞こえてくるようになり、だんだんとうまく心地のよいものになっていった。
それは傷ついていた龍神の心を癒すものでもあった。
最初はうつろいながら湖の中で聞いていたが、興味が湧き、気づかれないように覗き見ると少女の周りには光の玉がいっぱい浮かんでおり、歌と共にそれが空へ舞い白金に輝きキラキラと浄化されてゆく。自然の魂たちもそれに引かれ集まってくる。内からの光は大地を通してやってきて、歌でまわりに伝わり、舞で天へ返す。それはそれは美しい光景だった。それも龍神の目だからこそ見えるのだ。
しかし一旦歌をやめ黙ってしまうと、内からの光も消え、ただの人の子と変わらない。
お世辞にもうまいとはいえないのだが、小さいながらに一生懸命、舞と踊りを練習している。
そのギャップに妙に引かれ、雨や行事であまねが湖に来ないときはたびたび神社まで見に降りたりしていた。
歌や舞を舞っている以外のあまねはとても元気で、おてんばで、おっちょこちょいで、じっとしていない。普段のあまねはまったく巫女という感じではないのだ。
だが龍神はそのあまねのくるくると変わる表情になぜか惹かれていたのだ。
ふと今のあまねを思い出す。今もそう変わりはしない生き生きとまさにの山を駆け巡る子だ。だが・・・あまねが死ぬとそれを見ることも湖に来て話す独り言を聞くこともなくなる。
永久を生きる龍神にすれば、少女の成長などほんの一瞬の出来事。
人の生き死になど瞬く間に終わってしまう。それでももう少し見ていたいという思いがわきあがってくる。
「もう人にかかわることをやめたのではなかったか・・・私は・・・」
「あまねちゃん〜〜〜」
みなもがあまねを呼んでいる。
龍宮は次の日から神社に住むことになった。
それでみなもは朝からそわそわと龍宮を覗きに行ってはあまねにどうだったかの報告をしているのだ。
「・・・みなも姉さま・・・しあわせそうですね・・・」
ちょっとみなものテンションについていけないあまね。
「そうなの〜〜龍宮先生と同じ屋根の下に居れるなんてぇ〜☆」
「・・・・」
あまねは龍宮が口の悪い龍神だとは口が裂けてもいえないし、幸せそうなみなものかおを見て複雑な気持ちだった。
「もう・・・私・・・お仕事してきますから」
いつまでもみなもの相手をしていては疲れる一方なので早々に退散する。
社務所に行こうとぞうりを履いたときだった。
どくん
体中の血が止まったような感じがして、目の前が暗くなる。




