第4話
「・・・たえ・・・・・・う・・・た・・え・・・」
遠くのほうから光のようなものと声のようなものがかすかに頭の中にきこえてくるが、意識がないため、届かない。
「歌え!!」
雷に打たれたように身体に衝撃が走る。声ははっきりと聞こえ、意識ももどってくる。
「早く歌え!」
また聞こえる。夢ではない。
あまねは歌おうとするが、暗闇の中、喉が何かで詰まっていて歌えない。
「心で歌え!!」
まだまだ黒い霧の中、何も見えないのに、まるであまねの状態がわかっているようにその声は指示を出す。
あまねは心をこめて声を出さずに心の中で歌を歌う。
するとすぅっとあまねのからだから黒い霧が離れる。
とたんにのどのつまりが取れ、声を出して歌い始めるあまね。
そのとたん大地から光が上がって、あまねの身体を光で満たすとまっすぐ天へと突き抜ける。
そのエネルギーは相当なものであまねは歌いながら自分の身体を驚きの表情で見つめ、光の登るほうを見つめる。
すると上のほうから白い長いものが光の柱を伝って降りてくる。
龍だ。白銀の龍の体の回りからキラキラとしたものが落ちて来る。
それが光にふれると大きな虹が周りに現れる。
あまねが歌に祈りをこめ、天に手を伸ばし龍へと放つ。
虹が大きく広がると、黒い霧が散り散りに消え、そこにはキラキラと金色の光が舞っている。
しばらくそのキラキラとした光を見つめていたが、後ろに気配を感じ、振り返ってみる。
そこには先ほどあまねが落ちた大きな岩で、穴が開いており、そこからまた黒い触手のようなものがすごい勢いであまねをめがけ飛んでくる。
「きゃ!」
防御しようと手を前に出すとその手を巻きとられ引っ張られる。巻きつかれたとたんに力が抜けて引きずられてしまう。
そのとき、龍がその黒いものを尾で払い切る。その場に倒れるあまね。残った手に絡み付いている黒いものがあまねの腕にしみこんでいった。
「こんなところに穴を作っておったか。どこかにあるとは思っていたが・・・」
「閉じるぞ!手伝え!」
そう命令されたあまねだったがどう手伝えばいいのかわからない。
「お前は歌えばよい。早くせぬか!」
そうせかされ、あわてて立ち上がり歌い始めた。
大地から登る光が歌を通して回りに広がり伝わる、それを龍が変換しているのか息を吹くように光を口から吐くと岩が光り、黒い穴は黒いものたちごと消えてしまって後には大きな岩が残っているだけだった。
「・・・お・・わった?・・・」
あまねは緊張感がとけたからなのか、大きな息を吐きながらその場にうずくまる。
まだ体が震えている。とても怖かった。
そしてはっとして前方を見回すともう龍の姿は見えない。
ガックリと肩を落とし、今度は大きなため息を吐く。
すると後ろのほうから
「そんなに息を吐いてばかりいると中身が出るぞ」
と声がする。
ばっと振り向くとそこに龍がいた。
「あ・・・・よかった・・・・いなくなってしまったかと・・・」
ほっと一息つくあまね。立とうとするが足が立たないので、そのままの体制で龍神のほうを向き、お礼を言う。
「龍神様ありがとうございました。2度も助けていただいて」
「ハァ・・・お前があまりにもおてんばで、あぶなっかしいからだ。見るに見かねてつい手を出してしまった。本来なら姿とて見せるものではないというのに・・・」
ため息混じりに話す龍。
あまねはあまりのいいように面食らってしまった。
あまねの想像では物静かで寡黙で文句も言わない優しい人(龍?)だと思っていたので、文句を言われるとは思っていなかったのだ。
「す・・・すみません・・・」
「そう思っているならちょっとはおとなしくしたらどうだ?本当に死ぬとこだったんだぞ。わかっているのか?ちびすけ」
「ご・・・ごめんなさい・・・」
すごく複雑な顔をして下を向き謝るあまね。ちびすけという言葉は少し引っかかるが神様なので言い返せないのだ。
「そんなにやんちゃでおてんばでよく神に使えられるものだ。それでは猫でも犬でも巫女になれそうだな」
あまねの中の何かがぷちっと切れた。
「わ・・・私だって一生懸命お仕えしているんだから!!やんちゃでおてんばだって・・・いつかはきっと役に立つ時だってあるんだから!!」
怒りのあまり立ち上がりながら話し、びしっと龍神に向かって人差し指をさし
「ちびすけだなんて言わせないわ!きっと一人前の巫女になるんだから!!」
そういいきった。
「ほう・・・それは楽しみにすることとしよう」
龍に表情などあるのかどうか・・・しかしにやっと笑った気がした。
腰に手を当て人差し指を龍神に向けたままであまねは”はっ”と我に返る。
「・・・・またやっちゃった・・・・」
「ご・・・ごめんなさい・・・生意気でした・・・・」
半べそになりながら頭を下げるあまね。
「見せてもらうぞ、なにが一人前の巫女というのかを・・」
そういうと龍神はすうっと消えて行った。




