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【第3話】

あまねが目を覚ますと布団の上で、心配そうに覗き込む顔が、布団の周りを囲んでいた。


「・・・あ・・・れ?・・・・みんな・・・どうしたの?」

「あ!!」


寝坊したのかと、勘違いして飛び起きようとするが・・・身体が思うように動かない。


「だめよ・・・起きちゃ・・・」


泣きそうな顔でおきようとするあまねを止めるみなも。


「ほんとうにあまねは!行方不明にはなるし!帰ってきたと思ったら!!死んじゃうところだったんだから!!」


怒ったような言い方をしているが、さっきまで心配顔であまねの手を握りさすっていたのはみさとだ。


あまねは丸1日行方がわからず皆が総出で探していた。

そこへ夜中、とんとんと音がするのでみさとが音のする方へ行って見ると、びしょぬれの状態であまねが横たわっていた。熱があり、腕は腫れていたが、もう直りかけのようだった。見たことのない薬草のような粉が施してあって、その布をはがそうとするが、どうやってもはがすことができないのでそのままにして、飲み薬を飲ませ、もう2日眠ったままだったのだ。


ふと、みさとがその腕の布に目をやるとするっと布が落ちている。

傷口を見るとほとんど傷が残っていない。


「不思議な薬…」


そうつぶやきながらあまねを見つめていた。


あまねに行方のわからない間の記憶はなく、なぜびしょぬれだったかもわからなかった。

どこに行ったのかも聞かれたが、湖にいたことを言うわけにもいかず、すべてわからないことだと話した。

なぜぬれていたのか、腕に巻かれた薬はどうしたのか、誰かがいたのか、謎は多く、しばらくの間、色々なことを姉たちや義父や義母にかわるがわる聞かれ、あまねは辟易し、ストレスがたまってきていた。





「ん〜〜〜わからないものはわからないんだってば!!」


みんなに囲まれ抜け出す間もなかったのだが、無理やり隠れるように抜け出し、久しぶりに来た湖で、倒れてからのことを思い出して、誰もいない湖に向かって叫ぶ。



「・・・・・って言いたい・・・・」


大きなため息と共に吐き出す言葉・・・


「龍神様・・・きっと龍神様なのでしょう?私を助けてくださったのは。ありがとうございます。おかげで元気になりました。」  


人影も見えない湖に挨拶をする。


「覚えてないのが悔しいな〜☆龍神様にあえたかもしれないのに・・・」

「ちゃんと目の前にしてお礼がいいたかったなぁ〜」


心の中の思いをぶつぶつと・・・でも聞こえるように話すあまね。


「今日はお礼をいいに来たの。でも皆が心配するからもう帰りますね。出てくるの大変だったんだ。あれから必ず私のそばに誰かいるから。・・・・息が詰まっちゃうんだけど・・・私が心配かけたんだもんね」


舌をペロッと出して肩をすぼめる。


「じゃ、またきますね。ありがとうございました」


頭を下げながらそういうと、すぐにきびすを返し山を降りる体勢に。

そこにけたたましく鳴きながら鳥があまねの前に落ちてくる。

見ると羽根を怪我しているようだ。

手の届きそうな場所にいるので、あまねは手を出し捕まえようとする。

鳥も必死で、怪我をしている羽根を引きずりながら、地面をぴょんぴょん飛びつつ逃げてゆく。


「逃げないで・・・手当てしてあげるから・・・」


その鳥を追っていると、いつもの山を降りるほうではない場所から、ふもとのほうへ降りていく。

大きな岩の上に鳥が止まった。

それを捕まえようとゆっくり動き、ぱっと覆いかぶさったときだった。


「きゃ!!」


ずるっと足元がすべり1メートル下の草地へ落ちた。


「あたた・・・」


あまねは少し腰を打ったようだが、鳥は腕の中でぴちゅぴちゅと何かを言葉にしているようだ。


「よかった・・・ごめんね・・・びっくりさせて」


そういいながら立ち上がる。

とたんに寒気が体中を駆け巡る。

周りを見渡したとき、黒い霧のようなものが取り囲んでいた。

いつも死者たちを光へと送っているが、これは死者というより悪意のような黒い大きな塊。

ここまでの大きな悪意をあまねは見たことがない・・・

どこかに隙はないかと見回すが、囲まれているので逃げることもできない。

死者にするようにあまねは歌を歌い始めた。

すると少しずつ囲んでいる輪が広がり始める。

ほっとしながら歌を続けていたときだった。横のほうから黒い触手のようなものが伸びてくる。

あまねがかわすとそれは鳥を捉え、腕のなかから剥ぎ取って行った。


「あ!!だめ!!」


そういうが早いか鳥は黒い霧の中へ消えてゆき、聞いたことのない悲鳴のような鳴き声が聞こえた後、しんと静まり返った。

あまねは両手で口を覆い、歌をやめた。


『怖い』


あまねは生まれて初めてそう思った。


死者は我を忘れている人もいたが、話せばわかったり、歌えば我に返り、光へと帰って行った。

この霧のようなものは異質で、話も歌も通じそうにない。

恐怖で心臓は早鐘のように打ち、息が荒くなり、手は震える。

歌をやめたため、じりじりと霧はあまねの方に近づき、足元からゆっくりとあまねを飲み込んでいく。

ねっとりとした霧は皮膚から身体にしみこむような変な感覚だ。

いろんな負の感情が湧き上がってくる。それは自分のものなのか、ちがうものなのか・・・それさえも段々とわからなくなる。そして頭まですっぽり霧に覆われると、気が遠のき自分がだんだんとなくなっていく。そんな感覚だ。息をするのもだんだんと緩やかになり最後の息を吐ききろうとしたそのとき。

あまねは抵抗することもすべてあきらめ、自分という意識ももうほとんどなくなり、光を失った瞳を静かに瞑る。


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