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第27話

あたりは雨と風で枝が折れそうなくらいに木々がしなっている。木の葉がちぎれて舞う。

風が嵐のように吹き、雨がいたるところに打ち付けられる。一寸先が見えないほどの雨。龍たちがぶつかり合うたび稲妻が空一面に広がり、雷がとどろく。

ふたりの力は互角で勝負はつかない。


その時、湖の表面に異変が起こる・・・

今まで光っていた湖面が急に光を失い、嵐のように風が吹いているのに波ひとつ立たない凪いだ湖面に。

そこに映るのは黒龍と白銀の龍の姿。

湖の異変に気がつき、龍達は戦いをやめ、湖を見る。

湖面が揺らぐと立体的になり一人の少女の姿をとる。


「…あ…朱音!」


龍宮は人型を取り朱音と呼んだ少女の前に立つ。


「…聖…」


潤んだ瞳で龍宮を見る。


「…朱音」


龍宮は目の前にいるのは夢幻か…まだ信じられずにいた。


「久しぶりだね…本当に久しぶり…ごめんね…あなたを一人にして…」


「天音はね…私の転生した姿なの。あなたに私だと気づかれないよう自分を奥底に封印してた。いつの世も私たち二人、引き合って出会っては悲惨な結末ばかりで…だからもう悲しい思いをしたくなかった。ううん…させたくなかった。…でも…だめね…やっぱりどんなに封印しててもあなたを見つけて惹かれちゃう」


にっこりとほほえんで龍宮を見つめる。


「あか…ね…」


龍宮は恐る恐る朱音のほほにふれる。

実体があり温かみを感じた。幻ではない。ほっと安心して朱音を引き寄せ、抱きしめる龍宮。

朱音も肩に頭を預け龍宮にささやく


「会いたかった…聖…」


そして思い出したように龍宮の顔を見上げ、きらきら輝く瞳を向ける。


「聖…見つけたの…この星の…無限の旋律」


朱音は歌を歌い始める。重なるあまねの姿。あまねがいつもするしぐさ、大地をとんとんとつま先ででたたく。大地への挨拶…感謝の気持ちをこめる。

朱音が、あまねが、足元から光に包まれ内側から光りだす。

すると曇っていた空が晴れ渡り、あたり一面が輝き始める。大地が、空が、呼応しているようだ。

龍宮も光りにつつまれ、大地からの祝福の光りを受ける。

自然に龍宮の人型がとけ、龍の姿へと戻ってしまう。まだまだ光りは増し、白銀だった体は黄金へと変わって行く。

虹色に輝く黄金だ。


「あなたにも…」


そういうと朱音と天音は黒龍に向かって手を差し伸べ、歌い始める。

光に包まれた黒龍は宇宙のような漆黒に星が浮かぶような、とても不思議な色合いに変化する。


「な…なんだこれは…」


「地球のうた…愛の調べよ…美しいでしょ?」


そういうと二人はにっこりと笑いかける。


「あま…ね?」


黒龍はこの初めて感じる心地よさに戸惑っていた。

今までは力でねじ伏せた心地よさを自分で引き寄せることしかしてこなかった。

それを人から与えられ、心地よいと思う自分がいることに驚くのだ。

自分の心の中が満たされてゆく…

いつも何かを求めていた。足りない何かを埋めるために。

あまねたちの光に触発され呼応し、だんだんと満たされてゆく。

そう…自分の中に。


あまねと朱音は大地からの歌を天へと繋げる。

大きな大きな光りの柱が立つ。天と地を繋ぐ大きな柱…その周りを自然の精霊やいろんな存在たちが取り囲む。

あまねと朱音が両手を上げ天を仰ぐ。金色に変化した龍が柱の中へ入り天へ登ってゆく。

金龍の姿は小さくなり消えて見えなくなってしまう。そしてしばらくして姿が見えると金の粉が降ってくる。

それはそれは美しく、地上に着くとしみこむように消えていく。


あまねと朱音は黒龍にも柱の中へ入るよう目で合図する。

黒龍が入ると金龍と共に二重の螺旋を描きながら天へそして地へと行き来する。

黒龍が入ることでもっと高くもっと深く…音が、歌が変わってゆく。

天と地と龍たちのハーモニー…その波動は大地を伝い、天を伝い、空を伝う。天音と朱音は心が震え、知らずのうちに涙がほほを伝う。


歌い終わると次第に光は消え、龍たちは余韻を味わうようにゆっくりとあたりを旋回する。

それを下にいて見上げながら眺めている朱音とあまね。

二人重なっていた朱音の姿は次第にあまねの中に消えてゆく。

金色の龍はそれに気がつき人型を取ってあまねの前に立つ。


「朱音は…」


不安そうな顔であまねを覗き込む。


「私の中に…今生きているのは天音わたしだから…でもセンセ…覚えてるよ…朱音だったときのことは」


≪朱音がどれだけ大切に愛されていたかも…≫


そういおうと思ったがなんだか照れくさくて飲み込んでしまった。

まだ朱音だったときの思いが体中に、心のあちこちに残ってるのだ。


「あまね…」


後ろから人型を取った紫藤が今までの態度とは違い、すまなそうにおずおずと声をかけてくる。

龍宮があまねをかばうようにすっと前に立つ。


「安心しろ…もう無理やり我がものにするつもりはない。いつもそうだった…我がものにすると、とたんに輝きを失う。だからいつも壊して捨てた。そして満足のいく輝きをそのままにねじ伏せられる力を常に捜し求めていた。」


苦しそうな顔、いつも一人で何かを求め、さまよっていたのだろう。自分に足りないと思っていた何かを求め…


「もういいのだ…新たに力を必要としなくても…必要なものはすべてここにあった」


そういい自分の胸に手を置く。穏やかな顔をしている。


「あまね…すまなかった。お詫びに必要なときにはいつでも私を呼ぶがいい…すぐに駆けつけ力になろう…契約も交わした仲だしな…で…時々は遊びにきても…いいか?」


「もちろん。でも…友達として…ならね」


にっこり微笑みながら答える。紫藤のひどい仕打ちをあまねは許した。

あの美しい笛の音を奏でられる者に、心の底から悪いものなどいない。音は嘘をつかないということをあまねは知っている。


ほっとした顔で喜ぶ紫藤。手に入れそこねはしたが、あまねの事は本当に気に入っているのだ。

龍宮に向かうと、とたんに先ほどの敵対していたときの表情に戻り


「もしもあまねを泣かせるようなことがあればすぐに奪いに来るからな」


と去りながら龍宮だけに聞こえるような声で言い、肩に手を置く。かなり力を入れている。


「大丈夫だ…心配ない」


平気な顔でそう答えるのを確認し、紫藤は黒龍に変化し消えて行った。


「・・・?何か話したの?センセ?」


あまねは龍宮を覗き込みそのあまねの瞳を見つめながらそばに引き寄せる龍宮。


「なぜ…今まで気がつかなかったんだろう…こんなにそばにいたお前に…」


「仕方ないよ。朱音は本気だったから。悲しみの繰り返しはもう終わりにしたいって」


「私にはお前がいないことのほうが悲しみと苦しみで狂いそうだった」


「……」


あまねはどう言っていいのかわからず、すまなそうな顔を向け、下を向く。

朱音の思いや記憶は残っているが今はあまねとしての意識のほうが強いのだ。



「で……黒龍と契約を交わしたって?」



急にそう聞かれ、あまねは顔を真っ赤にする。

龍宮は紫藤に聞いた契約(キス)のことを気にしているようで冷たい視線を送ってくる。


「どうやって契約したんだ?」


わかっていて意地悪な質問をする。

あまねはうつむいたまま答えられない。


「答えろよ…」


あごをくいっと引き上げられ龍宮を見上げる形になり目と目が合う。

卑怯だ…朱音の気持ちも持っている今、そんな目で見られて答えられるわけがない。


「いじわるだよ…センセ…あれは不可抗力だもの」


ぷっくり膨れるあまね。

龍宮はにやっと笑い、顔を近づけてくる。

耳元で小さな声で何かをささやく。びっくりして龍宮を見上げると、唇に暖かいものがふれる。

あまねはなにが起こったのかわからないでいた。目の前には龍宮の顔。ありえないくらいに近い。心臓がドキドキと早鐘を打つ。あまねにとっては龍宮との始めてのキス。体中が熱くしびれるようで力がだんだん抜けていく。しまいには立っていられないほどで龍宮に背中を支えられ抱きしめられる。


「これも不可抗力?」


「…い…いじわる!」


顔を真っ赤にしてぷーっとむくれるあまねを見てははは・・・と声を上げ笑う龍宮。

その笑顔は朱音のときに見た少年のような笑顔。

つられてあまねも笑う。


「センセが声を上げて笑うの初めて見た」


あまねが楽しそうに龍宮を見上げる。


「そうだな・・・今まで心から楽しめなかったからな…でもお前とのやり取りはある意味楽しませてもらったが・・・」


また少し意地悪な表情になる。


「…どういう意味?」


きょとんとした表情。


「お前のドンくささはある意味人を元気にさせるんだよ。気持ちを逆なでするというか・・・」


「!!それってどういう意味?……それにまたお前って呼んでる!あたしはあまねだってば!!」


龍宮に食って掛かるがあまねが騒いでいるのもどこ吹く風で涼しげな顔をしている。


「一人前の巫女になったら呼んでやるよ」


「え?ちゃんと私、巫女やってるよ」


「憑かれたり、利用されたり…そんなことも見抜けなくて一人前といえるか!」


「あ…あれは…」


口ごもるあまね。それはいつも龍宮の言動が元で、気になって注意散漫だったのだ。


「半人前にはお前で十分!」


「ひどい〜〜☆」


口答えをしながら、あまねはいつもの龍宮の様子を見て安心した。

これからもまた色々あるかもしれない。

でももう悲しい繰り返し(輪廻)はしない。

きっと大丈夫。

あまねは射しはじめた朝日に目を細める…はっと気がつくあまね。


「やだ!こんな時間!!姉さまにしかられる!!」


外泊したことになってしまったあまねは、あわててふもとに下りようと急ぐ。

龍宮はいつものあまねの様子にやれやれといった目線を送る。


二人の物語はこれからはじまったばかり。

まだまだ物語は紆余曲折あるのだが、とりあえずのあまねと聖の物語はここでFin〜♪


〜終わり〜


あまねと龍宮の物語、読んでくださってありがとうございます。

二人の物語はまだ続く予定♪

よければ感想をお聞かせくだされば今後の参考にします。

あまねと龍宮は進展があるのか?紫藤は意味深に去っていったけど素直に引き下がるのか?当のあまねはこれからちゃんと女の子らしくなっていくのか??

楽しみにしてください♪


第二部始まりました。こちらです→ http://syosetu.com/pc/main.php?m=w1-4&ncode=N2446H


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