第20話
次の日、龍宮は用事を早めに切り上げたと言って戻ってきていた。
あまねは極力龍宮にあわないよう、会っても必要な言葉だけ交わしてその場を離れるようにしていた。
顔を見るとつらくなる。
そんな風に無視し続けて数日がたち、龍宮はあの日の事を聞きたくて会おうとするのだが、ことごとく無視され少しイラついてきていた。
ある日あまねが社務所で1人座っているのを見かけ、龍宮は話をするために向かった。
そこに紫藤が現れる。
「紫藤さん・・・この間はありがとうございました」
紫藤の肩を借りた・・・とはいえ胸の中で泣いたのだ。少し恥ずかしく照れた笑顔で紫藤を見る。
「いえ・・・元気なようですね・・・よかった。・・・ところで今日はお暇ですか?」
「え・・・?」
紫藤はにっこり笑いながら懐から笛を見せる。
「あ・・・はい♪」
約束をして去っていく紫藤。ここ数日湖にも上がらず稽古も体調不良ということにして休んでいた。踊ってもうたってもいなかったので、あの紫藤の笛の音で舞えるのは久しぶりに心がわくわくして思わず顔がほころんでしまう。
交代には少し早いが、みなもに替わってもらおうと席を立ち部屋を出たところで龍宮とばったり出会う。
「あ・・・」
一瞬驚き、すぐに表情を硬くし、挨拶をして横をすり抜けようとしたときだった。
腕をつかまれ引き寄せられる。
「なぜ避ける?」
その問いに返事を返せないあまね。
「あの男は何者だ?・・・普通とは違う匂いがする」
紫藤が去った方を見つめ険しい表情を浮かべる。
「先生には関係のないことですわ」
あまねは龍宮と視線を合わさないように顔をそらし、一切を拒否するように言葉を発する。
「なぜそんな態度を取る!この間のことといい・・・何が言いたいんだ?」
龍宮にはあまねの取る態度の意味がわからない。
「もういいんです・・・私、これから用事がありますので」
そういうと龍宮の横を抜け、みなものところへと行く。
龍宮はあまねの姿を見えなくなるまで目で追っていた。
あまねは空き部屋に入るとドアにもたれかかり目を瞑る。
掴まれた腕が痛い。
頬に一筋涙が零れ落ちる。
”忘れなきゃ・・・忘れるの。私と龍宮先生はただの師弟・・・そしてただの龍神と巫女・・・その間には何もないのだから・・・”
いったんあふれた思いは止まることはないのだろうか・・・
もう一度奥底に閉じ込めてしまわなければ・・・
ギュっと拳を握りごしごしと涙を拭く。
「忘れるって決めたんだから!」
そういって外に出て後ろ手でドアを閉める。
さっきの出来事で、少し気が重かったが紫藤との待ち合わせの場所へ行く。
紫藤の物腰の柔らかさと優しさは、今のあまねの心にしみこむものだった。




