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第18話

湖から駆け下りる途中、何かにぶつかり倒れそうになる。

森の中、かなりの傾斜になっているので、転げ落ちれば怪我は免れないだろう。下手をすると死ぬかもれない。あまねは身構え、持ち前の反射神経で体制を整えようとしたが、ふとその身体の反射を緩め、身を投げ出す。


≪もうどうなってもいい・・・≫


そう思ったのだ。

そこに白い腕が横からさっと出てきて支えられる。

あの男の人だ。


「あ・・・あなたは・・・」


「よかった・・・正気に戻っ・・・」


あまねの顔を覗きこんで、言いかけた言葉を呑む。

あまねは涙を流していた。


「あ・・・」


あまねはあわてて涙を拭き体勢を整えお礼を言う。


「かまいませんよ・・・」


「え?・・・」


「私の肩をお貸ししましょう。その辺に生えた樹だと思って泣けばいい」


「あは・・・私は大丈夫ですよ・・・」


笑いながらそう言ったが、瞳からは抑えきれない涙が溢れ出していた・・・


「あ・・・れ?・・・」


男は自分の肩にあまねの頭が来るよう優しく抱き寄せた。

後から後から涙があふれ止まらない。嗚咽がでるほど泣き、しばらくして涙が枯れた頃、顔を上げて男から少し離れた。


「ご・・・ごめんなさい・・・ありがとう」


かなりな時間泣いていたので、恥ずかしくて顔が上げられない。

男は微笑むとハンカチを差し出す。


「まだお互い名前を知りませんでしたね。私は紫藤です」


「私は・・・あまねです」



「あまね・・・かわいい名前だ・・・昼間ちょっとあなたの様子が気になって・・・すみません・・・あなたに重なって女の人が見えたので・・・」


「・・・見えるんですか?」


あまねは驚いて聞き返す。


「はい・・・それであなたが山に上がっていくのが見えたので、後をつけたのですが・・・途中その女の人に巻かれてしまいました。あなたを引き込むつもりのようだったので危ないと感じて探していたんです。よかった・・・無事で・・・」


「何度か会っただけなのに?私のこと心配するんですか?」


微笑む紫藤。そして女が中にまだいる事に気がつく


「・・・まだいるんですね・・・あなたの中に」


「はい・・・でも大丈夫です・・・この人を上げるくらいは自分でできますから」


さっき龍宮にたんか切ったのを思い出し、かたくなになるあまね。

それをみてフッと笑顔を浮かべる紫藤。


「ぶしつけですみませんが・・・ちょっと付き合っていただけませんか?少し落ち着いて話のできる場所へ行きましょう」


そういうとあまねを軽々と抱え上げ、横道へと入っていく。


「あ・・・あの・・・歩けます・・・私・・」


真っ赤になって降りようともがくあまね。


「またつまずいてもいけませんし・・・すぐそこですから・・・」


そう言って下ろそうとはしない。

紫藤はあまねを女性として扱ってくれる。

あまねはそんな扱いを受けたことがないので、どうしていいのかわからない。なんだか少し居心地が悪いのだ。

整った顔、見とれてしまうほどに美しい。そして紫藤の身体からはさわやかな森の香りがする。

細身に見えるが大きながっしりとした抱きかかえられ、間近に見える紫藤の顔に思わず顔が赤らむあまねだった。


少し行くとあたり一面に広がる空間。

月見草が一面に咲いている。

月あかりに白い花がぽぉっとひかっているように見える。

紫藤はあまねを白い花を見渡せる場所へ下ろす。


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