第13話
神社で龍宮にうたや舞いを習いながら、時にふたりで協力し、町や都の浄化をしながら平和に年月が過ぎて行った。
そしてあまねは18才。
朝、あまねは神社の庭の掃き掃除をしていた。
相変わらずの抜けるような青空。鳥の鳴き声が朝の新鮮な空気に響き渡る。
「う〜〜ん!今日もいい気持ち」
箒を持ったまま、のびをする。
「ん〜〜☆今日は上まであがろうかな。確かお昼から何もなかったよね」
上とは龍神の湖のことだ。
しょっちゅう湖に行っては窮屈な日常のストレス発散と、うたと舞の稽古に行くのだ。
龍宮は今も神社に住んでいる。暇なときには湖に戻っているようだが・・・
今日は龍宮は所用で出かけることになっている。
舞の手直しが入らないので、のびのび舞える。
別に湖で舞うときには龍宮も口を出さないのだが、いつも稽古のとき、とても厳しいので、黙って見られる分、なんだか緊張するのだ。
お昼前・・・社務所。
くぅ〜 あまねのおなかがなっている。
「おなか減った〜〜☆もう少しで交代時間〜☆がまんがまん」
そういっていると、社務所に向かって人がやってくる。
切れ長の目、鼻筋が通り、端正な顔立ちをした若い男性。
一目見ると女の人ならば誰でも見とれてしまうような雰囲気も持っている。
お守りをじっと眺めている。
≪うわぁ〜☆みなも姉さまが卒倒しそうな綺麗な人〜☆≫
ひとつお守りを買って渡すときに手がふれる。
まっすぐなまなざしであまねを見つめ「ありがとう」と答える。
男の人にはまだまだ興味はないあまねだが、さすがにこのまなざしには心を奪われそうになる。
男の人が去って、みなもが交代に来る。
あまねを見て
「あまねちゃん・・・どうしたの?顔が赤いけど・・・」
「え・・・あ・・・なんでもない・・・日差しにあたりすぎたかな??ここ日が差すからね・・・おなかすいちゃった!ご飯食べてからお出かけしてくる!」
そういって早々に立ち去る。
「??日差し・・・?ここ朝のうちは日差し入んないよ?・・・へんなあまねちゃん。」
首をかしげながらみなもは社務所のあまねが座っていた場所に座る。
ご飯を食べ、服を着替えて湖に上がるべく神社の裏にでたところで、いつもと違う感覚があまねを捉える。
その感覚に足を取られ転びかけた時・・・横からさっと手が伸びる。
倒れそうなところを支えてくれたのは、先ほどの男の人だった。
「大丈夫ですか?」
「は・・・はい・・・ありがとうございます」
あまねは体勢を整え礼をする。
その男は足元のものを拾い上げる。
あまねの竜笛だ。転んだ拍子に落ちたのだ。
「竜笛・・・ですか・・・」
竜笛についた土ぼこりを払うとあまねに手渡してくれる。
「ありがとうございます」
「あ・・・先ほどの巫女さんですね。巫女の姿でないのでわからなった。今の姿もとてもかわいいですね」
あまねは生まれてこの方、かわいいなどといわれたことはなかったので目を真ん丸くし、顔を真っ赤にして照れる。
「私はこの近くに越してきたので今日は神様にご挨拶に伺ったのです。またこれからもお会いできますね」
そういうと優しい笑顔で微笑みかける。
あまねはどうしてよいかわからなくなり、にっこりと笑顔になり
「引越しでここにいらしたのですね。この町はのんびりしていて、人も優しくていいところですよ。また神社にいらしてくださいね」
照れ隠しと男の人が苦手なのとで、職業用の笑顔で答えるあまね。
そしてお礼と挨拶をし、早々にその場を去る。
「はぁ・・・緊張したぁ〜。綺麗な男の人って何を話せばいいのかわかんないし。龍宮センセと違ってやさしそうで・・・・ふふ・・・かわいいだって♪」
少し気分をよくして湖のほうへと上がる。