4 そして……初デートに付き添うことになる……と
さて、お約束の急展開。
この2年、一度も食堂であったことが無かった木下と、まさか遭遇するとは思わなかった。……と、思う間もなく勝亦とその彼女との痴話げんか。おまけに榊原の告白かよ。
なんだけど、時間切れで昼休憩が終わってしまった。なので俺たちはそれぞれ、研究室へと戻ることになった。
で、榊原は落ち込みまくりやがって、全然戦力になりゃしない。勝亦と(しゃーねえなー)と、アイコンタクトして、二人で仕事を進めていった。
あんまりにも鬱陶しいし使えなくて邪魔だったから、15時の休憩で飲み物を買いに榊原を追い出した。部屋から出てたっぷり30秒が経ってから、勝亦が口を開いた。
「それで、東野木はどうするんだ」
「どうするって、何がですか?」
意味ありげに見てきたけど、一応とぼけておく。
「どうにかしてやろうっていう気はないのか?」
「ないっすねー」
「ないっすねー、じゃねえだろ。使えねえから何とかしろ!」
勝亦の言い分はわかるけど、下手に手を出して藪蛇は嫌だ!
「いや、あれを見てりゃ、木下もまんざらじゃなかったのはわかるもんでしょう」
榊原の告白を、一瞬呆気にとられたように固まった木下は、次の瞬間ボンっと、音がしそうなくらい真っ赤になっていた。恥ずかしそうに俯いたあれは、ニヤけるのを見られないようにしたんだ。
そういえば木下は、面食いな上にダメンズなやつを好きになっていた。まだ榊原がダメンズだとは知らないだろうけど、奴の顔は好みドストライク……な気がする。
よし。やっぱり放っておこう。
と、思ったのにスマホにメッセージの着信の音が聞こえてきた。なんだろうとメッセージを開くと木下から。
「えーと、勝亦さん」
「おい。いきなり敬称をつけて呼ぶなよ。呼び捨てが標準装備だろうが、お前は!」
「あのですね、今夜って空いてます?」
「いや、聞けよ。っていうか、なんだよ、今夜って」
俺はスマホを勝亦に見えるように向けた。
「その木下が『是非とも榊原さんと付き合いたいから、まず今夜、飲みに行きましょう』と、言ってきてます。もちろん勝亦さんの彼女さんと小沼さんも巻き込まれてますよ」
「はあ?」
スマホをジーと見つめて、何度も書いてある言葉を確認した勝亦。
「えーと、東野木、木下さんって、決断が早い方の人?」
「いや。単純に榊原の顔が好みなんじゃないかと思います」
勝亦は呆気にとられた顔をして、ちょうど戻ってきた榊原に言った。
「喜べ、榊原。木下さんがお前と付き合いたいってさ」
「えっ? はっ? ええっ!」
一足飛びにそばに来た榊原は、俺からスマホを奪い取ると画面を見て、すぐにパパパッと何事かを打ち込んだ。そして、満足した顔で言ってきた。
「さあ、今夜のためにも、ちゃっちゃっと仕事を片付けようぜ」
……えーと、一応言うべきか?
復活した榊原は、すごい集中力で終業時間の5分後に、本日の仕事を終わらせた。おかしい。残業1時間は覚悟したのに。
そして、研究所の入り口で待ち合わせた木下たちと、焼き鳥のうまい店へと行った。木下と榊原は……とてもいい雰囲気だ。勝亦と……えーと、彼女さんもいい雰囲気だった。あぶれた俺は同じようにあぶれた小沼さんと話をした。
小沼さんは可愛い人だ。女性3人の中で一番年上だと思えないくらいに、可愛い。
そして、話の流れで2週間後に行われる夏祭りに、このメンバーで行くことになった。なぜって、榊原がデートなんてしたことが無いから、付き合えと理不尽なことを言ったからだ。
頼むから、話を聞けよ! 勝亦と彼女さんはいいだろうけど、俺と小沼さんは巻き込まれだろ。小沼さんの予定を考えろよ。彼氏と出掛けるんじゃ……。あっ、彼氏はいないんだ。予定もなかったから……というか、もともとこの祭りに、木下と栄子さんと出掛けるつもりでいたんだ。ふう~ん。
小沼さんの言葉に顔色を変える勝亦。
勝亦、ドンマイ!
木下さんも大概な性格をしています。
基本はさっぱり、でも、男の好みは顔がいいこと!
次に少し頼りない感じがする人がいい。
そうして、男に尽くす、自分が好きなんです!。




