バーレル
やばい。朝起きたら、ルカのベッドだった。
ルカの寝顔が目の前にある。
かわいい。
ものすごくかわいい。
ぐっ。
やばい。
無心だ。
いや。
ルカは寝ているから別に大丈夫か。
ルカ。好きだ。大好きだ。
くそう。抱き締めたい。
そばにいると、どんどん好きになる。
オレの気持ちが暴走気味だ。
ドキドキする。
どうしよう。
いや、別にどうかしようというわけじゃなくて。
いつベッドを出るかってことだぞ。
朝の支度とかあるし。
でも。
いつまでもルカのことを見ていたいな。
この時間がずっと続けばいいのに。
・・・
「ウノ?まだ起きてないんか?」
マーチの声だ。
やばい。
ベッドを出てルカとステラの部屋から出よう。
マーチ。おはよう。
マーチはゲイルとミラの部屋で寝たんだよな。
よく眠れたか?
マーチは頷いた。
「ガンテツの仲間のドワーフ3人衆が
腹が減ったって言っててな。
どうしようかと思ってるんや。」
わかった。洗面所で顔を洗ったり
ヒゲを整えたりしてもらっているうちにオレが料理するよ。
あ、そうか。洗濯してやりたいから、
朝食の前にお風呂がいいかもな。
ミラを起こそう。
ドワーフ3人衆は男だし、
風呂掃除するにしても軽くでいいな。
ちゃちゃっと風呂掃除するよ。
こうして朝の時間は早く過ぎていった。
・・・
ガンテツとドワーフに大量の芋料理各種を出した。
美味しい美味しいと連呼して食べていた。
すごく満足気だった。
それから、オレとマーチが料理しているのを
観察していて換気扇のことをガンテツに聞いていた。
ガンテツは回転好きのドワーフのことを紹介していた。
・・・
オレ、ミラ、ルカ、エルザ、マーチ、シロの朝食だ。
今日はマッシュポテト、サラダ、コーンスープ。
それから朝から肉が食いたい人用にウサギ肉を焼いてある。
オレはコーンスープがお気に入り。
開発してくれたマーチに感謝だ。
もぐもぐ。
ステラ、ゲイル、リリーナの3人がエルフの里から
帰ってくるのって今晩だっけ?
「その予定だったわよね。マーチ。」
「せや。ゲイルがアイテムボックス持ちやからな。
エルフの里のおみやげがガッポリ期待できるで。」
「マーチ。欲望がダダ漏れになってます。」
ルカが指摘。
「しまった。ウノのダダ漏れが、わいにまで伝染しとる。」
はははは。
「ルカもウノっぽくなってきてて、ダダ漏れの時があるわよ。」
そ、そうなんだ。
ルカ、悪いな。
ルカはぶんぶんと首を振って、顔を赤らめた。
それを見てオレもドキドキしてしまった。
・・・
マーチとエルザが隣の家の賃貸契約に出かけていった。
ガンテツの仲間のドワーフ3人衆は、
もうしばらくしたら、里に戻るという。
すりおろし器、頼んだぞ。
あ!ちょっと待って。
オレは木板に絵を描いた。
バケツ型。さかさまにしたチキンバーレル。
1カ所にスリットが入っている。
こういう形のカバーをミスリルの鋳造で作ってほしいんだ。
新型のホーリーアローマシンガンに使おうと思って。
バケツ型を伏せた状態で使う。
「ほう。どういうことじゃ?」
とガンテツ。
うーんとな。中身の部品は3つある。
ろくろロボットゴーレムを小型化したもの。
ホーリーアローマシンガン本体の回路。
マジックユニットを20~50個くらい。
その3つをこいつに組み込むんだ。
回転するロボット兵器だよ。
悪魔48柱の部屋の中央に
青い四角のセーフエリアっぽいところがあるだろ?
あそこに魔法使いが陣取って魔法を撃てばいい、なーんてのは
罠なわけじゃん。悪意に満ちた罠、デストラップなわけ。
ならばこちらはロボット兵器を置いて、
床から斜め上45度くらいの角度でホーリーアローを撃つ。
これなら、悪魔の陣形の内側から攻撃できる。
ミスリルだから耐久力があるし、
悪魔に殴られても壊れないだろうと思う。
そもそも床を這うものを、近接攻撃するのは難度が高いだろ?
あれだけ悪魔が密集しているならハンマーを振り回せないだろうし。
オレはついつい饒舌になってしまった。
「ううむ。たとえるならウノの掃除ロボットが
回転しまくってホーリーアローを連射するのか。
悪魔にとっては悪夢じゃな。ガハハハ。」
それでさ。
これはカバーだし精密な加工も無いんだ。
とりあえずガンテツに木工秘伝でちゃちゃっと型を
作ってもらいたいんだよ。
その型を見てもらってオレのアイデアが良さそうなら、
ガンテツ、ミラ、ルカが面白いと判断するならさ。
シロ以外の5人、ステラ、ゲイル、リリーナ、エルザ、マーチ
がいなくてもミスリルのインゴット3個ぐらいまでは
発注しちゃってもいいんじゃないかと思うんだけど。
どうかな。
「まずはワシが型を作ろう。
ウノはろくろ型ロボットゴーレムを作ってくれ。
そうすればイメージが固まるじゃろう。」
わかった。
・・・
そうそう。こんな感じ。そしてこのスリットから
ホーリーアローマシンガンを撃つんだ。
「スリットではなく、普通に穴の方が良くないかのう?」
たしかに穴の方が耐久力は増すんだけど、
射撃する角度を固定にはしたくなかったんだ。
「そういう意図があったんじゃな。わかったぞい。」
「穴でも角度は変更できます。」
ミラ。どういうことだ?
「昨日完成したばかりのホーリーアローマシンガンの本体
そのものを組み込む必要はないってことです。
ホーリーアローマシンガンは複数の部品で構成されています。
それらの部品をいったんバラバラにすればいいんです。」
ほう。
ホーリーアローマシンガンをバラバラにする。
言われてみればそうだな。
オレも回路って言葉にしたもんな。
でもいつのまにか、本体をそのまま入れる気になってた。
「部品のレベルなら、そのカバーの中には自由自在に配置できます。
そうすれば固定された穴でも角度は自由に変更できます。」
わかった!
あれだ。脳外科の鍵穴手術。
ゴッドハンドで超有名な脳外科医のガン摘出手術。
このバケツを頭蓋骨に見立てて
ガンの位置から射撃するって考えるんだ。
ガンだけにな。ぶふっ。
それなら角度には余裕があるぞ。
「欠点は戦闘中や戦闘直前に角度を変更しにくいことですが、
そういう予定はありますか?」
そういう予定はないぞ。
基本斜め上45度だし、せいぜい微調整するくらいだ。
微調整程度なら内部空間の工夫でなんとかするさ。
よし。
穴にしよう。そしたら強度上の心配はゼロになる。
「きっと、すごく安心な兵器だと思います。
兵器と呼ぶのが可哀想なくらい、人に優しい良い兵器です。
作るのに賛成です。一緒に作りたいです。」
ルカが饒舌だ。
安心な兵器か。
人に優しい良い兵器。
まあ、斜め45度にホーリーアローを撃つだけだもんな。
相手が邪悪でない限り、肉たたき程度の威力だ。
「これなら、ステラ達も納得するじゃろう。」
「ええ。ステラは出発前に、
ルカ、ウノ、ミラ、ガンテツに
ホーリーアローマシンガンの開発を任せる、
そういう意図で発言していました。
昨日の次世代蒸し器で次世代炊飯ジャーが
不要になりましたし、エルザとマーチにも
事後承諾でいいように思います。」
うん。
そうか。
あのな。オレが提案しておいて、なんなんだけどさ。
事後承諾ってさ、勝手に進めたみたいな感じあるよな。
実はそこを心配してる。
なんていうのかな、
良かれと思って決断したことが
信頼関係に亀裂をいれるというか。
「確かに事後承諾を乱用するのは良くないんですが
この機会を外すと3日程度のタイムロスが出ます。」
タイムロスか。
考えてみよう。
ステラ達が今晩戻ってきて承諾をとる。
ドワーフの里に向かう移動時間。
ドワーフの里で説明する時間。
なるほど。うーむ。
「もしもウノが罰を受けるなら、私も同罪です。」
「当然ワシも同罪じゃな。」
「僕も同罪です。」
(よくわからないけど、オイラもどーざいっす。)
(ところでどーざいってなんっすか?)
ずこーっ。
わかった。
オレからガンテツの仲間のドワーフ3人に説明しよう。
ミスリルインゴット3本でカバーを3つお願いしようと思ってる。
いいかな?
みんな頷いた。
ガンテツは穴バージョンを2個お願い。
すぐに作り始めるから、まったく同じ型にしよう。
カバーだから差し替えることが出来るし。
ガンテツはちゃちゃっと同じ型を2個作ってくれた。
さすが。
オレはガンテツの仲間のドワーフの1人に
ミスリルインゴット3本とガンテツが作った型を渡してお願いした。
世話になったので、最優先で作ると約束してくれた。
完成したら即届けるとのこと。ありがたい。
・・・
オレたちは、開発作業というものに、
いつの間にか熟達していたらしい。
オレが何の作業をし、ガンテツが何を作り、
ミラが何を解析し、ルカが誰を抱き締めるか。
誰も指示せずとも開発が進んだ。
何を作るかは明確。作ったらすぐに実験する。
実験で不具合が見つかったら、すぐに修正する。
あっという間に1号機が完成した。
今はマジックユニットにホーリーアローをチャージ
していないのでくるくる回るだけだ。
「あとは、いつ撃ち始めるようにするかですね。」
そうだな。ミラ。
「時限式、あるいは外部からの刺激かのう。」
「これまでは外部からの刺激が多かったです。
ポカリと頭をたたく感じです。
掃除ロボットもそうですしオーク部屋攻略もそうでした。」
そうなんだよ。
これで使い勝手が変わってくるように思う。
出来れば撃つか撃たないかを遠隔制御したい。
遠隔でONにするだけでなく、
遠隔でOFFにも出来るのがいい。
「それが出来ればすごいのう。出来るのか?」
ガンテツ。
オレは作る。
いやオレたちは作る。
オレは最近、開発に関しては、
技術的に出来るのか出来ないのかを考えてないんだ。
オレが考える「出来る/出来ない」は
オレだけの知識が元だ。
その判断はイマイチ信用できないと気づいた。
実際に開発するのはオレ1人じゃない。
脳みそは拡張できるんだ。
みんなの知恵を借りて、オレは作る。
いやオレたちは作る。




