囮
スノーウルフの群れのリーダーとシロのやり取りだ。
(ではお前は、冒険者を手伝うというのか?)
(そうっすね。)
(バカなことを。囮にされるに決まっている。)
(まあ、大抵はそうっすね。)
(まるで生贄ではないか。)
(どうせ弱い順番に、ヤツにエサにされるっす。)
(弟を庇いたい。そういうことか。)
(そうっすね。内緒っすよ。)
(ふん…。まあいい。
赤い布の冒険者を襲うなとみんなに伝えて守らせよう。
お前は死ぬなよ。)
(うっす。)
・・・
おーい。
シロ!戻ってきたぞ。
(うっす。早かったっすね。)
ああ。急いで戻ってきたんだ。
(それで囮以外の作戦は思いついたっすか?)
ああ。
今回はオレたちが囮になる。
(そうっすか。って何言ってるんすか?)
ええとだな。
まず、シロたちには芝居してもらう。
シロと仲間のスノーウルフたちに
オレたちを囲んでもらう。
そして戦っているように芝居をしてもらう。
(うっす。)
んでオレたちは血まみれになる。
(芝居でウノたちが血まみれっすか?)
ああ。血っぽいのを使う。
匂いも完璧に血だぞ。
匂いに興奮しても噛むなよ。
シロが頷いた。
(それでどうするっすか?)
フロストジャイアントを待ち構える。
それまではずっと芝居だ。
オレたちはあー!とかうー!とか叫ぶ。
シロたちは周りをウロウロしながら
遠巻きに威嚇したり、
攻撃するフリをしてくれ。
(うっす。ヤツが来たらどうするっすか?)
あらかじめ、オレが落とし穴をしかけておくんだ。
オレは土魔法が使える。
氷魔法も使える。
落とし穴に落ちれば、
いくら強くてもそう簡単には出てこれないだろう?
まさかフロストジャイアントは2匹以上いるのか?
(1匹だけっす。でもとんでもなく強いっす。)
そうか。
1匹だけならどうにかするよ。
ヤツが来たらシロと仲間たちは逃げてくれ。
(一緒に戦わないでいいっすか?)
大丈夫だ。
オレたちに任せてくれ。
(ウノって変わってるっすね。)
そうか?
そうだな。
(この作戦って、スノーウルフがいなくても
成立するんじゃないっすか?)
それは違う。
強者ってのは、いかに楽をするかが大事なんだ。
美味しいところに登場して横取りするってのが
一番楽だろう?
そういう時は落とし穴には気づかない。
だからスノーウルフに芝居してもらうんだ。
(けっこう納得できる説明っすね。)
良かった。
この作戦はシロだけに手伝ってもらっても
効果が低い。
群れのみんなと相談して決めてくれ。
じゃあな。
また2日後に来るから。
(またっす。)
・・・
(納得したけど、容易には信じられないっすね。)
(スノーウルフにリスクがないっす。)
(リーダーと群れのみんなを説得しやすいっす。)
(作戦が成功したら、ウノの仲間になると面白そうっす。)
・・・
スノーウルフたちが協力してくれることになった。
この作戦の芝居中のリーダーはシロ。
サブリーダーがオレだ。
これはスノーウルフが一番、
フロストジャイアントの気配に敏感だからだ。
フロストジャイアントが落とし穴に落ちたら、
ゲイルがリーダーになる。
現時点ではフロストジャイアントを殺すには、
オレたち攻撃陣の攻撃力が足りない。
オレたちは新しい武器または兵器を準備する。
それまでしばらく作戦開始を待ってもらう。
待ってもらう間、スノーウルフが
フロストジャイアントにエサにされないように
オレたちは第二階層から第六階層で
動物型モンスターの死骸を集め、シロたちに届ける。
腐りにくいようオレのブリザードで凍らせて運ぼう。
ちなみにスノーウルフは
低位のモンスターである雪ウサギを食うのだという。
スノーウルフが人食いモンスターじゃなくて助かった。




