第七階層
第七階層は氷雪地帯だった。
真っ白な世界。
まぶしい…?
何も見えない。これは白い闇だ。ホワイトアウトというやつだ。
「こりゃ、あかんわ。」
「むう。白い世界か。対策が必要じゃな。」
マーチとガンテツが撤退を提案した。
「ちょっと待ってくれ。あれを見ろ。」
ゲイルがしゃがんで地面を指差した。
オレたちもしゃがんで目線を下げる。
そこには、オオカミの足跡が点々と残っていた。
雪オオカミ、スノーウルフか。
「それだけじゃないぞ。もっと大きな足跡がある。」
スノーウルフの足跡はとぎれとぎれだ。
なぜ、とぎれとぎれなのか。
ん?
オレは目を疑った。
2mほどの大きな足跡が、
スノーウルフを追いかけているのだ。
だからスノーウルフの足跡が潰れている。
雪男イエティ?いや、この大きさならば。
「氷の巨人、フロストジャイアントじゃ。」
ガンテツが断言した。
・・・
オレたちは一旦撤退し、第六階層の迷宮別荘で休憩している。
「いったんダンジョンを脱出して私たちの家に帰ってから考えましょう。」
ルカが提案した。
「そうですね。」
「マーチが腕を振るったシチューが食べたいわ。」
「ええで。なんぼでも作ったるで。」
「やったぁ!ゲイル、シチューですってぇ!」
「ホワイトシチューか。雪を見た後にはいいな。」
うおっ。
この感覚は何だ?
オレの頭にCMの映像が浮かぶ。
胸が苦しい。
雪の夜に暖かい家、家族団らん。
有名メーカーのホワイトシチューのコマーシャルだ。
冬の深夜によく流れるやつ。
胸が苦しい。
これはおそらくホームシックだ。
そんなバカな。
オレがホームシック?
そんなバカな!
オレは胸を押さえ、呻いた。
「ウノ。どうしたのですか?」
ルカ。
ルカ!
・・・
「ウノはどう?」
「よく眠っています。」
「そう。一安心ね。」
ステラとルカが頷きあった。
・・・
「すこし攻略を休んだほうがいいわね。」
「せやなあ。
ウノはマシンガン開発で根を詰めとったしなあ。」
「ウノは急に胸を押さえて、苦しんでました。
ホームシック?そんなバカな!って。」
「俺にも聞こえた。
元の世界の事を思い出したのかもしれないな。」
「ゲイルも元の世界の事を思い出しますかぁ…?
ウノと同じく異世界転生者ですもんねぇ…。」
「俺は思い出さないな。元の世界にはリリーナがいない。」
「///…もう。ゲイルったらぁ。」
「ほほう。そうなったか。」
「へえー。良かったやんな。」
「そうね。」
・・・
オレたちは翌日ダンジョンを脱出した。
体調を心配されたが、別に体調は悪くないぞ。
あの時は、誰かに脳みそをジャックされた感じだった。
攻略の疲れでは?とみんなは言うが…。
とりあえずオレたちの家に帰ろう。
スノーウルフとフロストジャイアント。
すこしのんびりしてから攻略方法をゆっくり考えよう。
今晩はホワイトシチューだろ?
やっぱホワイトシチューは、
芋がごろごろしてるのがいいよな。
「芋は当然じゃ。鶏肉も欲しいのう。」
そうだな。
ブロッコリーとニンジンはどうだ?
「野菜はいらん。」
はははは。
ガンテツは相変わらずだなあ。
そうだ。
ホワイトシチューならフリーズドライして
インスタントにできるかもな。
たくさん作ったら実験してみるか?
「たくさん作っても、みんながおかわりするから
すぐ無くなります。」
「ルカ。一番おかわりするのはルカよ。」
「ルカはいっつも食べ過ぎですぅ!」
「マーチの料理は美味しいから仕方ないわ。
料理でアタシを落としたんだから。」
「わいは料理人やない…料理人でもええな。」
はははは。
いいね。
オレにとっての家族団らんは、いまここだよ。




