アシスタント
時は遡ってウノが異世界転生する直前のこと。
神界の最もへんぴな場所で
女神と、黒いもしゃもしゃのヒゲのドワーフが言いあっていた。
「なんでワシが芝居をせにゃならんのじゃ?」
ガンテツである。
「あなたが転生した直後、私に借りが1つありましたよね?
それを帳消しにしてあげます。」
女神には泣きぼくろがある。
「それを言われると弱いが…。
ワシは芝居なんぞ、生まれてこのかた、したことがない。」
ガンテツは乗り気ではなかった。
「大丈夫です。
姿形はあなたが木の神だった頃の姿にします。
誰にもバレることはありません。
話す時間も短時間です。
軽く説明してくれれば後は私が全部説明します。
安心して自由に芝居してください。」
創世の女神アイア。
この世界を創造した存在である。
女神アイアは異世界で死んだ人間を
この世界に転生させようとしていた。
・・・
「そもそも、なんでワシが神の役なのじゃ。
アイアが神で良かろうに。」
ガンテツはぶつくさ言う。
「それは私にアンチストーカースキルがあるからです。
私に会った者は、神格を持たない限り、記憶を無くします。
転生者が神様に会った記憶を失ったら問題でしょう?
ガンテツが神様、私がアシスタント。
それが転生者にとってベストです。」
300年前、女神アイアは異世界転生者にしつこく付きまとわれた。
その反省点を活かして、
アイア自身が開発したスキルがアンチストーカースキルだ。
女神アイアに会ったとしても、神格を持たない限り、
アイアに会った記憶は消えてしまう。
これでアイアがストーキングされる可能性はゼロだ。
このスキルはその性質上デメリットも大きいのだが
そのことに女神アイアは気づいていなかった。
・・・
ガンテツは先代の木の神である。
木の神の立場に飽きた彼は金属に興味を持った。
次代に木の神の座を譲り、ドワーフのガンテツとして転生した。
「ワシにとっては立場より学びが大事だ。」
ドワーフに転生する前の、木の神としての最後の言葉だ。
転生によって当時よりも神格はダウンしたものの
さすがは元、木の神。今でも下級神より神格は上だ。
ガンテツは「神の鉄鎚」を意味する。
ハンマーを意図する漢字には槌(木へん)と鎚(金へん)
の2種類があるが、ガンテツは金へんである。
もっとも得意な木魔法が多少不得意になろうとも
金属を学びたかった。
ガンテツの転生後、他の神々から
「贋神の鉄鎚」と揶揄され、大小様々の嫌がらせを受けた。
女神アイアには、嫌がらせから守ってもらった借りがあった。
・・・
女神アイアは、アシスタントを演じてウノに丁寧に対応した。
いつもよりもテンションを高めて頑張った。
しかしウノは安易に種族、職業、パラメーターを選択。
女神アイアは混乱した。
ウノが選択した種族がノームという、
いつ絶滅してもおかしくない種族という理由から、
本来は僧侶が使えないはずの土魔法スキルを与えてしまった。
それでも心配は尽きない。
(この子は、この世界で生きていけるの?)
女神アイアは2つのアイデアを思いついた。
ウノがこの世界で生きるための2つのアイデア。
(ちょうど今、戦の神が別の人間を転生させています。
その異世界転生者と同じ場所に、
タイミングを合わせて転生させましょう。
そうすれば異世界転生者同士で仲良くするでしょう。
きっと助けてもらえるに違いありません。)
(それから、開発したばかりの新スキル、
家事スキルを隠しスキルとして与えましょう。
そうすればちょっとした努力でスキルを取得し、
健康に長生きできるはずです。)
前者のアイデアは悪くなかったが、
後者のアイデアは安易だった。
ウノが自分で選択したマッサージ術スキルと
ウノが知らないうちに隠しスキルとして与えられた
新作の家事スキルはテスト不足で、
どちらもバグだらけのチートスキルだった。
女神アイアは、アシスタントとしてはダメダメだった。




