ワンド
小規模戦闘のお試しが終わって、第五階層のお風呂に入った。
ダンジョン攻略後のダンジョン風呂はすごく気持ちいい。
今はダンジョンを脱出して、オレたちの家で打ち上げパーティをしている。
・・・
料理はオレの得意な、いつもの芋の千切り油炒め。
今回は皿のわきにひき肉炒めとダイスカットのトマトを付け合わせている。
たまたま、ひき肉が売られていたんだ。
それからマーチが腕を奮ってくれた。
料理自慢らしい。
とろりとした白いスープ。
ホワイトシチューじゃないか?牛乳を使ってるよな?
「当たり前や。新鮮な牛乳が味の決め手や。」
どこで入手できるの?そこでオレも買える?
オレはマーチに質問攻めしてしまった。
「牛乳に興味ありすぎやろ。わいの料理の腕を褒めてくれや。」
すまん、マーチ。
・・・
エルザは、今回の戦闘でオレたちの戦術、
ワンド無双の運用を実体験して感じることがあったらしい。
「この戦術はすごいわ。革命的よ。感動したわ。
今すぐ特価品のワンドを買い占めてくる!」
まあまあ、焦らなくてもいいだろ。
オレがこまめに武器屋に通ってたから30本隠し持ってる。
これまで運用していた12本に追加でたぶん15本だから
稲妻杖は27本くらいあるはずだぞ。
「えっ。ウノも買ってたんです?」
もしかしてミラも買ってた?
「うん。こっそり買ってました。30本隠し持ってます。
稲妻杖はたぶん40本以上になりますね。」
いいじゃん。
よし、パーティが終わったら、
オレとミラが隠し持ってたワンドを
山積みにして、拭き掃除してみようぜ。
オレの掃除スキルが輝くぜ!
・・・
魔法の杖をオレが拭き掃除した結果、
82本のワンドの内訳は、こうなった。
ワンドオブファイアボール(火球杖)が32本。
ワンドオブライトニング(稲妻杖)が42本。
ワンドオブファイアストームが4本。
ワンドオブサンダーレインが4本。
「ファイアストームとサンダーレインは大当たりですね。」
ああ。まさかまさかだな。
追加費用は、オレがたったの300ゴールドのポケットマネー、
ミラもたったの300ゴールドのポケットマネーなんだぜ?
「すごいわ…。アタシいま超感動してる。」
エルザは大興奮だ。
1発用のワンドオブファイアストーム1本だけで
1000ゴールド以上するだろう。ボロ儲けすぎる。
エルザが大興奮するのも納得だ。
「これはもう、アタシも覚えるしかないわ!
ウノ。掃除スキルについてアタシに教えなさい!」
えーっとあれは、
ミラがセーフエリアで血まみれの瀕死だったんだよ。
オレがミラをヒールで回復した後、
なんとなしに血で汚れているセーフエリアの床を
きれいな布を小さく切ったウェスで拭き掃除したんだ。
そしたら掃除スキルをゲットした。
掃除スキルで魔法の杖がチャージ可能になるのは
偶然分かったんだよ。ミラもゲイルもオレもびっくりだった。
・・・
「エルフの大量の血で汚れたセーフエリアを、
きれいな布を小さく切ったウェスで拭き掃除…。」
エルフの大量の血って言葉、怖い!
「いろいろ実験する価値はあるわ。
それぐらい掃除スキルは魅力的なのよ。」
ジロリと見るエルザの目が怖い!
それから唇を舐めないで、怖い!
まさか奴隷にされているエルフを拉致ってきて
生贄にしたりはしないよな?
「失礼ね。血はアタシのを使うわ。」
エルザ自身の血を使うってのも怖い!
・・・
ステラがエルフの里から戻ってきた。
エルザがパーティに加入したのを知っても、
あっそう、という感じでステラは驚かなかった。
そのうち自分で勧誘するつもりだったのだろう。
口元が緩んでいたので、内心は嬉しかったみたいだ。
・・・
エルザはそれから定期的にダンジョンの第二階層で実験している。
自分の血をセーフエリアに撒いては拭き掃除を繰り返す。
「うまくいかないわ…。」
エルザの言葉には力が無い。
何がダメなのかは、オレにもわからないな。
(自分で汚して自分で掃除するのは反則!認められません!)
オレの頭の中に声が鳴り響く。キター!
久しぶりに炊事スキルの人工知能のアドバイスがキター!
なあ、エルザ。
自分で汚して自分で掃除するのは反則なんだってさ。
オレはエルザに、人工知能の言葉を伝えた。
エルザは情報源について聞いてきたので、
オレのスキルがそう伝えてきたと答えた。
「反則…。汚すのが自分じゃなければいいってこと?」
自分が命令して他人に汚させるのも反則だと思うぞ。
「そうね。モンスターがアタシを攻撃して、
アタシが傷を負って血まみれの瀕死になって
セーフエリアに逃げ込めばあるいは…。」
血まみれの瀕死は、
自分で進んでなるもんじゃないぞ。
そういうことするなよ?怖いから。
「アタシやるわ。やるなら第三階層ね。
第三階層の人型モンスターに切りつけられてくる。
セーフエリアに辿り着いたら回復して頂戴。」
マーチが真剣な表情で頷いた。
「わいが全力でサポートするで。
ポーションもあるし大丈夫や。
もしエルザが死んだら、わいも死んだるわ。」
この夫婦、なんか怖い!
・・・
オレたちは第二階層から第三階層のセーフエリアへ移動。
エルザは宣言通り、人型モンスターに切りつけられて怪我をし、
血まみれの瀕死になってセーフエリアの迷宮別荘に辿り着いた。
セーフエリアの床に血がたまるまで待ってくれとのこと。
オレはヒールをかけるのを待つ。
床が血で汚れるのを待つっていうのも、反則気味だよなあ。
十分にセーフエリアの床に血がたまった。
オレがヒールをかけると、エルザは回復。
マーチのポーションを使う必要はなかった。
怪我が治ると何事もなかったのように
エルザは一心不乱にセーフエリアの床を拭き掃除し始める。
そして、エルザは賭けに勝った。
「やったわマーチ!掃除スキルを手に入れたわ!」
「やったな。さすがわいのカミさんや。」
この夫婦、お似合いだな。
・・・
それからエルザは武器屋の特価品だけじゃなく、
知り合いの冒険者の魔法使いなどの様々な伝手を使って、
廃棄品の魔法の杖を、ワンド、スタッフ問わず集め始めた。
1本10ゴールドで100本集めると言っていた。
1000ゴールドか。
ポケットマネーにしては多い。気合が入っている。
既に50本まで集まっていて、
嬉々として集めた魔法の杖を拭き掃除している。
「ウフフフ…。」
口元の笑みと目の色が、欲望に塗れている感じで怖い。
・・・
結局、エルザは112本の魔法の杖を集めた。
知り合いから無料で譲って貰えたりで節約できたとのこと。
拭き掃除した結果、内訳は以下の通り。
ワンドオブファイアボール(火球杖)が30本。
スタッフオブファイアボールが10本。
ワンドオブライトニング(稲妻杖)が37本。
スタッフオブライトニングが9本。
ワンドオブファイアストームが6本。
スタッフオブファイアストームが4本。
ワンドオブサンダーレインが5本。
スタッフオブサンダーレインが5本。
スタッフオブウインドストームが3本。
スタッフオブサンドストームが3本。
種類が多くて混乱するぜ。
サンダーレインとサンドストームがごちゃ混ぜになって
サンダーストームと言いそうだぜ。
オレだけか?
注目すべきは中級魔法が撃てる杖だろう。
ファイアストームが使える杖が、ワンドとスタッフの合計で10本。
サンダーレインが使える杖が、ワンドとスタッフの合計で10本。
ウインドストームが使えるスタッフが3本。
サンドストームが使えるスタッフが3本。
中級魔法合計で25本。約1/5の確率で大当たりを引いた計算だ。
スタッフはワンドに比べて長さがあるので戦闘時の取り回しに苦労するが、
魔法学校で学生がマジックチャージの訓練に使う分には
長くてもまったく支障がないとのこと。
パーティで使うワンド系に絞ったとしても中級魔法が11本ある。
ウハウハらしい。
・・・
この辺で、オレ自身もおさらいしておこう。
オレが使える魔法だけじゃなくてパーティメンバーが使える魔法を全体的にな。
まずは初級魔法から。
ファイアボルト、サンダーボルト、ストーンバレット、スネアが初級魔法だ。
初級魔法には他にも、風魔法のブリーズ、水魔法のファウンテンがある。
ブリーズはスカートめくりのレベル、ファウンテンは宴会芸なので攻撃には向かない。
次は下級魔法だ。
ファイアボール、ライトニング、ウインドカッター、
ウォーターカッター、ストーンスパイクが下級魔法の攻撃魔法だ。
下級魔法は補助的な魔法もいろいろ揃っている。
オレの土魔法ではストーンオブジェクト、ピット、ストーンウォールだ。
水魔法ではウォーターヒール、スプラッシュウォーターが該当する。
次は中級魔法だ。
ファイアストーム、サンダーレイン、ウインドストーム、エアハンマー、
サンドストーム、ブリザードが中級魔法。
リリーナのウォーターバズーカと
オレのダイアモンドダストがオリジナル中級魔法。
補助的な中級魔法は浪漫が詰まった魔法がいろいろあって楽しい。
オレの土魔法では、クリエイトゴーレムが該当する。
火魔法だとファイアウォールが人気が高い。
ストーンウォールが下級魔法なのに
ファイアウォールが中級魔法である理由は、エルザによると、
「持続の概念がストーンウォールでは不要なのに対し、
ファイアウォールでは必要だから」だという。
魔法学校の試験で頻出する定番問題なのだそうだ。
最後は上級魔法だ。
ミラの火魔法インフェルノと雷魔法チェインオブサンダードラゴン、
ステラの風魔法ハリケーン、エルザの水魔法フラッドが該当する。
という風にオレは理解しているんだけど、
だいたい合ってるよな?エルザ先生。
「ま。だいたい合ってるわよ。」
ちなみにエルザは掃除スキルと魔法の杖のおかげで、
学生達への指導の熱意が高まったらしく、
魔法学校の教師をやめるのでなく、教師と冒険者を半々にしたいとのことだ。
オレたちは、それでいいと了承した。
エルザとマーチは毎晩、オレたちの家にやってきて夕食を食べる。
そして風呂に入り、オレのマッサージを受けてから帰宅し寝ている。
第五階層の攻略は、まだ始まったばかり。
当面はオークの数を減らす小規模戦闘だ。
7/4。追加。おさらいが、ウノが使える魔法のように読めるのはマズいので追記。
7/9。修正。まさか掃除スキルで→掃除スキルで




