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人間世界遺産

「あっけないくらいうまく動きましたね。」

ミラは満面の笑顔。

「こんなのは当然じゃ。何も改造していないに等しい。」

そういいつつもガンテツは、少しだけニヤけている。

オレは素直に嬉しい。

火石の魔法回路が動作して約1時間、90度を維持し、

自動的に雷石の魔法回路に切り替わって今10分経つ。

70度を維持している。

これから約8時間、70度を維持するだろう。

単純に待つだけじゃなくて、

ここまで来たら蒸し器としての完成形を見たい。

「ワシにタル以外の応用力があることを見せよう。

タル用素材をアイテムボックスから出してくれ。」

はい。

オレはガンテツの弟子だ。

大タル用素材、小タル用素材、補修用の木材、

いろいろアイテムボックスに保管してある。

各種工具もな。

あれ?側面の板をタガで縛るパターンじゃないぞ。

これって正真正銘の蒸篭じゃないか?

「温度と湿度と曲がりに強いタル素材を使いながら、

それを自在に曲げる技法だぞ。

今では廃れてしまった木魔法、今で言う木工秘伝じゃ。」

すげえ。

あの強靭なタル用素材がぐにゃぐにゃに曲がり、

ピタリと精密に組み合わさった。

完成したのは芸術的な蒸篭だ。

この技量は日本人なら人間国宝だろう。

「最下段に防水した魔法回路を配置する。そのうえに水を張る。

その上が食材用の2段じゃ。1段と2段では料理の工夫のしがいが違うじゃろ。」

蒸し器として完璧だな。

「今作っている時に思いついたんじゃが、

火石の魔法回路の最初の5分くらいは100度を超えてもいいんじゃないか?

その方が水が沸騰するまでの時間が短縮されて便利じゃろ。

その時だけ雷石回路と火石回路の両方を動かすんじゃ。」

なるほど。

蒸篭を組む最中に機能改善まで考えるのか。

職人の一人として頭が下がる思いだ。

「それから蒸し器の側面に、極小の光石の赤と黄色を追加しよう。

火石の魔法回路が動いているときは赤の光石を輝かせる。

雷石の魔法回路が動いているときは黄色の光石を輝かせる。

最初の5分は赤と黄色の両方を輝かせるのはどうかの?」

ぜひそうしましょう。

「極小の光石なぞ、その辺に捨てられておる。

素材代もかからんし、熱いかどうか触らなくても分かれば一番じゃ。」

安全面まで配慮してくれる。

人間世界遺産だろ。

「ガンテツは神の鉄鎚という意味じゃからな。

崇めてもらっても構わんだろうて。がははは。」

あれ?

もしかして、ガンテツって黒いもしゃもしゃのヒゲだけど

白い長ひげのジジイと同一人物じゃね?

神様じゃね?

「人は老いるほど神に近づくと、ドワーフは信じておる。」

ガンテツは肯定も否定もしなかった。

そして。

こんな日でもマッサージは必須だ。

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