ビジネス
小さな水筒に少しの生石灰と水を入れる。
アイテムボックスにしまう。
しばらく待つ。
ドキドキする。
さて、取り出してみよう。
「熱いな。」
「熱くなってます。」
「成功じゃな。」
「いいわね。」
アイテムボックス内でも発熱することが分かった。
つまりこのアイテムボックスは時間経過があり、
化学反応があり、熱変化がある。
つまり蒸し器で蒸せる。
・・・
生石灰すなわち酸化カルシウムの水和による発熱は、
水だけが必要で、酸素は不要。
反応後も消石灰すなわち水酸化カルシウムになるだけだ。
二酸化炭素を出すこともない。
ほんのちょっと膨張するくらいだ。
ものすごく昔からあり、重要な化学技術だ。
でも生石灰だと扱いがちょっと怖い気がするな。
魔法回路ならもっと便利にできるだろう。
・・・
火石か雷石を使って発熱する魔法回路の調査はどうだろう?
「火石タイプと雷石タイプの2種類のカイロが
見つかったから両方買った。
100ゴールドと150ゴールドで合計250ゴールドの出費だ。」
必要経費だ。オレが持つよ。
なんだゲイルのポケットマネーでいいのか?
ははは。ありがとう。
「100ゴールドの火石タイプは90度まで加熱できますが
持続時間が6時間です。
150ゴールドの雷石タイプは70度までしか加熱できませんが
24時間持続します。」
ミラ。
調査してくれてありがとう。
ほぼ結論が出たよね。
調理の際には火石タイプを使って加熱。
調理終了後は雷石タイプに変更して保温。
火石と雷石は再チャージできたりするのか?
出来ない。使い捨てだと。
じゃあ簡単に交換できるようにしたいな。
火石タイプの持続時間を1時間にして
雷石タイプの持続時間を8時間にしたいんだけど
どうすればいいだろう?
火石の大きさを1/6の小粒にして、
雷石の大きさを1/3の小粒にすると。
単純明快だね。
そうなるとコストカットもできそう?
コストカットできるんだ。
小さい火石、小さい雷石はかなり安いと。
それくらいの大きさなら火石でも雷石でも10個で約3ゴールド。
安いな。
「簡単に交換できるようにするんでしょ?
だとすると大量購入して、属性石の粒の大きさを揃える必要があるわ。」
そうだな。ステラの言う通りだ。
例えば1000個買って300ゴールドだ。
歩留まりを50%として500個だけ使うとしても
それで250回温かくて美味いメシが食えるなら十分だろう。
「粒を揃えるようにして、とりあえず500個ずつ
150ゴールド以下で火石と雷石を調達してこよう。」
ありがとう。ゲイル。
この300ゴールドを使ってくれ。
今度はオレのポケットマネーだ。
「2種類の魔法回路を切り替えるというのは
実はガンテツからもアイデアが出ていて、
火石を消費し終わったら自動的に雷石の魔法回路に
スイッチするのは、もう見込みが立ってます。すぐに実験可能ですよ。」
ありがとう。ミラ。ガンテツ。
「こういう研究は面白いから手伝うに決まっている。」
さすが師匠だ。
オレとステラも実験に参加しよう。
「あら。私はエルフの里のビジネスパーソンに、
今回のアイデアをプレゼンする資料を準備しているの。
小さな属性石を年間で少なくても100万個調達するから
ギリギリ製品に出来ない小さめの属性石は無料提供できるわよ。
それでも私達の日常利用には問題ないでしょ?
年間1万個くらいは堅いかしら。
実験はミラ、ガンテツ、ウノの3人でお願いね。」
ステラはプレゼン準備なんだ。
凄腕ビジネスパーソンだよね。
ところで年間100万個の調達って、30万ゴールドだぞ。
かなりの資金だぞ。
「あら、10万ゴールドに収めるつもりよ。」
1/3の値段で買いたたいて採掘業者は利益が出るのか?
「当然利益は出るわよ。今はゴミ同然の扱いなんだから。
でも来年は同じ価格ではきっと無理ね。
投資家は今回100万個の調達じゃ堅実すぎて面白くないって言うと思うわ。
魔法回路を年間5万台販売するなら、
歩留まりを考えると1000万個の属性石がどうしたって必要だわ。
だから本当は1000万個調達すべきなのよ。
魔法回路は既に枯れてる技術だから開発リスクがゼロだし、
製造ラインの新しい投資も不要。
属性石を簡単に交換可能にすることで
小粒の属性石を使うというコンセプトは優れているから、
同じコンセプトの製品がバンバン作られるようになるわよ。
今後、属性石の価格が高騰することはあっても
値崩れすることはありえないの。
小粒の属性石は、あればあるだけ買うべきなの。
今は安すぎるのよ。
ゴミ同然と見なされているんだから。
ビジネスチャンスにリスクをどれだけ取れるか。
投資家の資質が問われるわ。
ここが勝負なの。
わかるでしょ。」
ふんす!とステラの鼻息が荒い。
すごく早口だ。
凄い自信だ。
ステラが凄腕のビジネスパーソンだということが凄くよくわかった。
おそらくは年間100万個調達はあえて低く設定した目標で、
投資家を煽って年間1000万個調達するのが本命なのだ。
プレゼンを頑張ってほしい。
7/9。修正。ガンテツさん→ガンテツ




