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妊婦と腰痛

オレとルカはハンターギルドに到着した。

扉を開けて中に入ると窓口にゲイルが立っていた。

「おっ、ルカ。それにウノ。久しぶりだな。元気だったか?」

ゲイルがルカとオレに気づいた。

オレは元気だぞ。

みんな元気でカムナビ温泉でゆったり過ごしてる。

それから週に何回か、ファルコン号で小旅行している。

空の旅で異世界を見聞だ。

「そうか、みんな元気で異世界見聞か。そりゃ良かった。」

あれ、リリーナがいないな。

リリーナはどうしたんだ?

「奥で休んでる。最近、腰痛がひどくってな。」

ルカの表情が少し曇った。

「私がヒールで治療します。」

「ああ…。頼む。」

ゲイルが頷くと、ルカは奥に向かった。

ルカに任せて問題ないだろう。

リリーナは妊婦であり、ルカとリリーナは姉妹同然。

治療するにしても女性同士の方がいいだろう。

・・・

オレはゲイルにバッタの大量発生の事を伝えた。

「バッタの大量発生か…。恐ろしいな…。」

武の神ゲイルは対人戦闘の達人だが、

範囲攻撃手段を持っていない。

5億匹のバッタ相手にキック、打撃、投げ、銃撃では効率が悪い。

「ご…5億匹?」

ゲイルが天井を仰ぎ見た。クラッと来たらしい。

気持ちは分かる。

仮に神が20柱いたとして1柱につき2500万匹のバッタを駆除する計算。

オレの想像力では、1柱につき1日10万匹くらいが限界。

だがそれだと250日かかってしまう。

ゲイルは今のオレと同じような計算を一瞬でしたのだろう。

その時、ルカが戻ってきた。

ルカの表情は曇っている。

「ウノ。リリーナを診察してください。」

わかった、ルカ。

ゲイル、一緒に行こう。

「ああ。」

・・・

リリーナはベッドに横たわっていた。

心臓が下になるように横向きになっている。

やあ、リリーナ。

ちょっと後ろから腰を触らせてもらうよ。

「はい…。お願いします。」

オレはリリーナの腰骨を触診した。

そしてヒールっと。

(ヒール!)

「ふぅ…。……。……。あ痛っ。」

ヒールでは一時的に痛みが和らぐだけか。

これがギックリ腰ならヒールで治ったのかもしれないが、

今回はダメだった。回復魔法の限界だ。

痛み止めしているだけでは根本解決にならない。

オレのマッサージ術スキルを使って丁寧にマッサージしてみよう。

「お願いします。」

わかった。今回は特別に丁寧にマッサージする。

オレが振り向いてルカを見ると、ルカは頷いた。

・・・

「随分、痛みが軽くなりました。」

そうか。良かったよ。

だが、オレのマッサージでも痛みを軽くするのが限界だな。

カムナビ温泉なら腰痛を完治できると思うんだが…。

「な?前から言っていたように、そうしよう、リリーナ。」

「でも…。」

ゲイルはかねてからカムナビ温泉で療養しようとリリーナを説得していたらしい。

そしてリリーナは納得していないらしい。

あのさ。

ハンターギルドの業務はゲイルとギルド職員に任せてしまってもいいだろ?

火事の時は職員に任せただろ?

「災害での人助けで留守にするなら仕方ないですけれど、

自分のせいで迷惑をかけるわけにはいきません。」

ふぅん。

自分のせい、ねえ。

なんというか生真面目すぎる感じ?

リリーナは勘違いしているんじゃないかな。

ルカ、ちょっとビシッと叱ってくれ。

「…無理でした。先ほどリリーナと口論して負けました。」

あらら。

ルカが冷静に論理的に判断して負けるか。

「えーと…。つい感情的になってしまって。」

はははは。

それも仕方ないか。

そうか…。よーし。

ゲイル。青銅生剣ブロンズライフソードでリリーナの腰を斬れ。

ブロンズライフソードならすぐに傷が塞がる。

一応、オレもヒールで回復する。

それで腰痛が治るはずだ。

「え?」

「ええ?」

「えええ?」

リリーナ、ルカ、ゲイルの3柱が驚いた。

ん?

それが一番手っ取り早いだろ。

リリーナは腰痛が完治し、ハンターギルドの業務にすぐに戻れる。

「ちょっと待て。俺は斬らないぞ。」

「妊婦の腰を斬るなど、乱暴すぎます。ウノ。」

ゲイル、ルカ。

リリーナは、このままベッドの上で腰痛に耐えていても埒があかない。

腰痛がある状態ではギルドの業務は出来ない。

今だって痛みに耐えかねて横になっていたのだから。

オレのダダ漏れに、リリーナは唇を噛んだ。

「…分かりました。ゲイル。腰を斬ってください。」

リリーナは覚悟を決めたらしい。

「俺は斬らない。絶対にだ。」

「斬ってください。」

「…斬らない。」

ゲイルとリリーナは押し問答している。

オレはリリーナとゲイルの傍を離れ、ルカを手招きした。

ルカ。こっちに来てくれ。

先ほどの反応を見る限り、ゲイルがリリーナの腰を斬ることはない。

そうなると結論は1つ。

リリーナはカムナビ温泉で療養だ。

ゲイルはカムナビ温泉からハンターギルドに通勤すればいい。

これがベストだと思う。

・・・

しばらくした後、ルカからのアドバイスとして、

ゲイルがカムナビ温泉から通勤する案が出されたことで、

ゲイルとリリーナの押し問答は収まった。

リリーナはカムナビ温泉で療養。

ゲイルはカムナビ温泉からハンターギルドに通勤。

一件落着。

そんじゃまあ、オレはオレの仕事をしよう。

オレはハンターギルドへに「バッタ駆除クエスト」を依頼したい。

鬼族のハンターを募集する。

目標は100人。

ハンターなら午前に2000匹、午後に4000匹くらい駆除できるはずだ。

6000匹のバッタ駆除の報酬は100ゴールド。

1ゴールド=100円で換算で1万円だ。

「60匹につき1ゴールド程度なら、

バッタをモンスターに設定変更するだけで良さそうです。」

ルカの言葉にリリーナが頷いた。

バッタをモンスターに設定変更?

なにそれ?

「ギルド運営ボードで既存の生き物の性質を変更するのです。

普通から邪悪へと。そうすればモンスターとなり討伐報酬が支払われます。」

なにそれ?

なーにーそーれー!

オレ、今初めて知ったんだけど。

「そうでしたか。私たちにとっては常識です。」

「邪悪かどうかの判断はギルド職員が行う重要な業務の一つです。」

「俺も当初は知らなかったが今は常識になった。」

ルカとリリーナとゲイルは平静だ。

オレは常識知らずだったぜ。

そうかあ。

ギルド運営ボードで既存の生き物の性質を変更できるんだ。

「できます。神界序列5位以上になればステータス画面からも可能です。

ギルド運営ボードのマニュアルにそう書いてありますよ。」

ルカはいたって平静に淡々と語る。

くっ。

オレもステータス画面の隠しメニューにモンスター生成があるのは知ってた。

でもオレは興味が無かったからボタンを触ろうとすら思わなかった。

モンスターを作るなんて、なんというか魔王っぽいじゃん?

そっち方面の魔王っぽさは好きじゃない。

えーと…。

バッタをモンスターにする。

バッタの性質を邪悪に変更したら凶暴化したりしない?

「大丈夫です。経験値と討伐報酬の設定が変わるだけですから。」

つまり経験値稼ぎが出来るようになって、

討伐報酬もチャリンチャリンと出るようになるってこと?

リリーナとゲイルが頷いた。

それだけだったら本来の性質は変わらないな。

「いわゆるレッテル貼りです。こちら側の都合です。」

「はい。レッテルを貼ることで変わるのはこちら側です。」

こちら側の見方が変わる…。

ふーむ。

邪悪なモンスターと戦うのは普通のことだ。

戦えばこちら側が死ぬこともあるだろう。

そうすると遺族が残される。

遺族はモンスターを憎む。

邪悪なモンスターに復讐を果たしたい。

自分が力不足なら誰かに頼ってでも仇を討ちたい。

オレは悪魔48柱の攻略に失敗して全ての仲間を失った冒険者を思い出した。

オレは冒険者に頼まれて心が動き、悪魔を殺しつくすと誓った。

あの時のオレは復讐者だった。

復讐者のオレは「善良」か「普通」か「邪悪」か。

…脱線思考だ。

深く考えるのは後回しにしよう。

・・・

カムナビ温泉に戻ったオレたちは草の神に相談した。

草の神。

草の神のパートナーである雨の神と面会させてくれ。

可能ならバッタ駆除に参加してもらおうと思う。

(…わかった。)

オレは女神アイアに頼んで、

草の神とルカと共に神界に空間転移した。

女神アイアに感謝。いつもありがとう。

女神アイアはカムナビ温泉でガーベラとたまと一緒に遊ぶと言う。

ありがたや、ありがたや。

ちなみにマーチとシロは現在、

木の枝にしがみついているバッタの死骸集めのために、

草原を走り回っている。

すなわちエントモファガ・グリリの印集めだ。

それはすごく重要な任務だ。

感謝。

(着いたぞ。)

ああ、草の神。ありがとう。

草の神とオレとルカの3柱は雨の神の居室へお邪魔した。

「いらっしゃ…、あ痛たた…。」

あららら。大丈夫か?

雨の神は腰に手を当てている。

雨の神も腰痛なのか。

草の神が頷いた。

(体が小さいぶん、懐妊すれば負担が大きい。)

そうか…。

雨の神は幼女の姿だからな。

ならばバッタ駆除に助力してもらうのはパスだ。

雨の神は戦略の神リリーナと同じく、

カムナビ温泉に寝泊まりして療養するのがいいと思うぞ。

カムナビ温泉は腰痛に効くからな。

美味しい食事とマッサージとふかふかの布団を約束する。

「温泉!食事!マッサージ!そして、ふかふかの布団!」

(…ぜひ、お願いしたい。医療の神ウノ。)

ああ。もちろんだ。

…ふむ。

草の神は、雨の神がバッタ駆除に参加出来ないことを知っていた。

それでも雨の神と面会させてくれた。

(ウノは無理強いしない。そして良い方向に運んでくれる。思惑通りだ。)

はははは。

草の神の期待を裏切らないようにするよ。

それじゃあ次だな。

草の神の親友である氷の神、そして土の神の元へ行こう。

氷の神はオレと旧知の仲だ。

「土の神も腰痛なのです!」

そうか。土の神も腰痛か。

土の神も幼女の姿だから納得だ。

うん。

雨の神と土の神は親友だ。

それじゃあさ。

土の神もカムナビ温泉で療養するのが良さそうだ。

ぜひ、氷の神と土の神を誘おう。

「雪の神と宝石の神も誘って、みんなで温泉です!」

はははは。

いいね。

雪の神は、氷の神の妹で絶世の美女だ。

華奢な体格なので腰痛になっている可能性は高い。

そして雪の神の夫は宝石の神。

アダマンタイトすなわちダイアモンドの神だ。

宝石の神は氷の神の親友。

氷世界コキュートスでオレは氷の神と宝石の神と出会った。

つまり旧知の仲だ。

そうだな、こうしよう。

懐妊中の妻たちはカムナビ温泉でゆっくり療養し、腰痛を治す。

夫たちは妻たちに付き添いする。

もしも妻の腰痛が治って気持ちに余裕が出来たなら、

バッタ駆除に参加してもらえばいい。

無理強いはしない。

それでいいじゃないか。

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