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テーブルトーク

カムナビ温泉での夕食後のことだ。

オインクからオレにお願いがあると言う。

「ウノさんの木魔法で小型のドラゴンの模型を作ってくれませんか?」

どんなドラゴン?

鳥っぽいやつ?

「…空を飛ばないドラゴンがいいです。デザインは任せます。」

わかった。いいよ。

手のひらに載るくらいの大きさでいい?

オインクは頷いた。

オレはアイテムボックスから木材のきれっぱしを取り出した。

(オートクラフトメニュー!)

ファイバーコントロールで成型し、リグニフィケーションで固める。

一応セーブしておこう。

ほい。ティラノっぽい火を吐くドラゴン。空を飛ばない。

火獰竜の木製模型、一丁上がり!

「やったっ!」

オインクは小躍りしている。

火獰竜は密林あるいは沼地に生息するドラゴンで、

オレとルカが以前コキュートスで戦った氷獰竜の亜種だ。

得意技は巨大な顎を使った噛みつき攻撃。

脱出できなければ、そのままガブガブゴックンされる。

ブレスは火球が爆発するタイプ。至近距離で食らえば致命傷だ。

その他の攻撃は突進、尻尾振り回しだ。

弱点部位は頭。破壊可能部位は牙と尻尾だ。

(…。ねたばらしはだめだから。)

「…。ウノさんに僕たちのゲームプレイを見てもらいたいです。」

うん?ゲームプレイ?

新しいカードゲームかな?

・・・

プレイヤーは、オインク、ラビィ、ガーベラ、セイヤ、たま。

(たまはみまもりだから。こうへいなしんぱんだから。)

オーケー。たまが審判だな。

「ハンターがモンスターを狩るゲームです。具体的には…。」

オインクがオレに説明してくれた。

プレイヤーは4人、つまりハンターは4人。

オレは4人の役割分担を尋ねた。

オインクが盾役のヒーラー。

ラビィがハンマー使いのアタッカー。

ガーベラが魔法使いのダメージディーラー。

セイヤが魔法使いのデバッファー。

なるほど。役割分担は実戦を模して設定している。

・・・

プレイヤー4人は全員カードを持っている。場にカードは無い。

おや。

なんかセイヤだけ、持っているカードの枚数が多いね。

「セイヤは使える魔法やスキルが多いですからね。」

オレの疑問にオインクが答えた。

なるほど。

プレイヤーが持つ魔法やスキルをカードに反映している。

だからセイヤだけ手札が多い。

でもそれって不公平じゃないか?セイヤが有利だろ。

んー?

オレは首を傾げた。

…ああ、そういうことか。

このゲームはPvP(プレイヤーvs.プレイヤー)ではない。

オレの大好きな、ひと狩りいこうぜ!ライクなゲームなのだ。

プレイヤー同士は協力プレイする。敵はモンスター。

たまの言う「公平な審判」とは、

狩る側と狩られる側は公平だということだろう。

つまり狩る側のハンターが狩られてしまうこともある。

・・・

(ぱーぷーだから。)

たまの合図で狩猟開始。

「アタイは索敵持ちで牽引持ち。罠の利用が可能でーす!」

ラビィが手持ちから「索敵」カードと「牽引」カードを場に出した。

(りょうかいだから。だとうだから。)

「罠が使えるなら俺は落とし穴と石製構造物を作ろう。」

セイヤが「ピット」「ストーンオブジェクト」の2枚のカードを場に出した。

(りょうかいだから。ていばんだから。)

「イーゼルテーブルゴーレム作ってー。」

「わかった。作ろう。」

ガーベラのお願いにセイヤが応じ「クリエイトゴーレム」のカードを場に出した。

イーゼルテーブルゴーレムはセイヤが考案したゴーレムの一種。

魔法杖を置くための机にロボットアームが付いている。

使い終わった魔法杖を回収し、チャージ済みの魔法杖をセットしてくれるのだ。

手間を減らせる分、魔法杖を手早く撃つことが出来る。

「やったー。」

ガーベラは「ファイアボール」のカードを8枚、場に出した。

(1たーんでつかえるのは4まいまでだから。)

「えーっ、たまのケチー!」

(4まいがだとうだから。)

たまの制限にガーベラがブーたれた。

ガーベラは「ファイアボール」のカードを4枚手元に戻した。

なるほど。

1ターンでファイアボール8連発だとモンスターが可哀想だ。

これは仕方ないね。

「僕は戦略思考持ち。セイヤの石製構造物があるから、

モンスターが落とし穴に落ちた前提でいいですね?」

(…ぜんていじゃないから。だいすろーる。1でしっぱいだから。)

「わかりました。」

サイコロを振る事をダイスロールと呼ぶ。

サイコロの目で成功か失敗かを判定するのだ。

オインクがダイスを振った。出た目は5だ。

「よし。」

(せいこう。2たーんのこうそくになったから。)

「オインク、でかしたのでーす!」

うーむ。なるほど。完全に理解したぞ。

これはテーブルトークRPGだ。

たまがゲームの審判。GMゲームマスターだ。

しかし、ダイスロールとは心が躍るぜ。

「モンスターの頭に跳躍してハンマーでガッツンでーす!」

ラビィが「跳躍」カードを場に出した。

(だいすろーる。1でからぶり、5いじょうでくりてぃかるだから。)

ハンマーのクリティカル確率は1/3か。

ラビィがダイスを振った。出た目は6だ。

「やったー!クリティカルでーす!」

(だいすろーる。5いじょうですたんだから。)

スタン確率も1/3か。

スタンとはモンスターがめまいを起こして倒れこむことだ。

スタンを取ることはハンマー使いの重要な役目。

ハンターにとっては大きなチャンスになる。ハンターチャンス。

おそらくクリティカル判定で成功した時にだけ、

スタン判定のダイスロールに入れるのに違いない。

つまり1/3x1/3の確率となり、1/9の確率でスタンを取れる計算だ。

ラビィがダイスを振った。出た目は3だ。

「ガーン!スタンは取れなかったでーす!」

「どんまい。」

落ち込むラビィをガーベラが慰めた。

「モンスターのどうたいにファイアボール4れんぱつ!」

(4つだいすろーる。1でしっぱい。5いじょうでくりてぃかるだから。)

ガーベラが4つのダイスを振った。出た目は1、3、5、6。

「1つしっぱいだけど、2クリティカルきたー!」

1ミス、2クリティカルなら上等だろう。

「僕はマシンガン10連発。狙いはモンスターの胴体です。」

(ふるひっと。くりてぃかるはんていはしょうりゃくだから。)

いいぞ。オインク。

「俺はグラビティコントロール。

モンスターが落とし穴から脱出しようとするのを阻止する。」

セイヤが「グラビティコントロール」のカードを場に出した。

(だいすろーる。2いかでしっぱいだから。)

セイヤがダイスを振った。出た目は3だ。

(こうそくは3たーんにえんちょう。のこり2ターンだから。)

「でかしたー!」

ガーベラがセイヤを褒めた。

・・・

結局、今回のモンスターである火獰竜はボコボコにされた。

火獰竜は噛みつき攻撃もブレスも体当たりも尻尾振りも一切出せずに息絶えた。

プレイヤー4人による「ずっとオレたちのターン!」が炸裂したのだ。

ネトゲでいえば「ゲームでなく作業」だろう。

(うううう。はめころされたから。)

たまがブーたれている。

まあまあ…。

たまは良い審判だった。

落ち込んでいるたまの代わりにオレが狩りを振り返ろう。

1)セイヤのピット(落とし穴)で2ターン拘束。

2)セイヤのグラビティコントロールで拘束に1ターン追加。

3)セイヤの足払い(スネア)でずっこけて1ターン拘束。

4)セイヤの閃光玉で1ターン尻尾振り。

5)セイヤのサンドブラストの目潰しでもう1ターン尻尾振り。

6)ラビィがスタンを取って2ターン拘束。

7)セイヤのウインドトラップで1ターン追加。

合計で9ターンもの「ずっとオレたちのターン!」だ。

火獰竜は行動の選択を封じられた。束縛された。

火獰竜には自由が無かった。

可能だった行動は盲目状態での尻尾振りのみ。

少し可哀想だったかもしれない。

その間にガーベラのファイアボールが合計30発着弾。

そのうちクリティカルが10発。

クリティカルが50%ダメージ上昇なら35発分のダメージ量だ。

ガーベラのINT値は凄いことになってるから、

パラメーターを反映してたら10発くらいで終了していたはずだが、

今回はゲームなので、たまが普通のファイアーボールと同じ威力に

調整してくれたということだろう。

オインクのマシンガンが合計で90発ヒット。

普通のファイアボール換算で15発分くらいのダメージ量だろう。

ラビィのハンマーは7回振って6発ヒット。

6発中クリティカルが3発。

スタンを取ったのはラビィの手柄。

きっちりとハンマーの役割を果たした。

ハンマーのダメージ量は、普通でファイアボール換算で2発分、

クリティカルで3発分だとして合計15発分くらいだろう。

セイヤは攻撃なし。サポートに徹した。

モンスターに与えたダメージをまとめると以下の通り。

・ガーベラ:ファイアボール35発相当

・オインク:ファイアボール15発相当

・ラビィ:ファイアボール15発相当

火獰竜はファイアボール65発で撃沈した計算だ。

オレとしては火獰竜の体力的に妥当だと思う。

(うううう。つぎは130はつぶんのたいりょくのもんすたーにするから。)

むむむ。2倍の体力か…。

2倍ならば、今回のようにハメ殺すのは難しいだろう。

(つぎは、どくをはくどらごん。とんでにげれるようにするから。)

…わかった。だったら毒怪鳥だな。

オレとルカが以前戦った固体だと火獰竜より弱い。

上位固体としてサイズを大き目に調整しよう。

毒怪鳥はゴム質の皮で覆われており、

弱点部位である頭と尻尾以外にはダメージが通りにくい。

そしてHP2倍。これは強敵だぞ。

・・・

(ぬまちで、ぱーぶーだから。)

たまの合図で狩猟開始。

沼地かよっ!沼地では落とし穴が使えないぞ。

モンスターはオレとルカが戦ったことがある毒怪鳥。

その上位固体でHPが多い。

カチカチ、カチカチとクチバシを鳴らしたらトサカの閃光攻撃がくる。

ガードを固めないとハンターの目が見えなくなるぞ。

毒のブレスに注意だ。オインクのキュアが頼りだ。

尻尾の振り回しにも注意しろ。毒怪鳥の尻尾は伸びるため間合いが取りにくい。

(…。ねたばらしはだめだから。)

・・・

前半の流れはこんな感じだった。

1)セイヤのサンドブラストの目潰しで尻尾振り誘発。

2)セイヤの足払い(スネア)でずっこけて1ターン拘束。

3)セイヤのグラビティコントロールで1ターン追加。

4)セイヤのウインドトラップで1ターン追加。

5)セイヤの足払い(スネア)で再びずっこけて1ターン拘束。

6)ラビィがスタンを取って2ターン拘束。

7)ラビィがトサカを破壊。

8)セイヤのクレイトゥストーン(粘土石化)

9)セイヤのストーントゥサンド(石砂化)

10)セイヤのサンドブラストの目潰しで尻尾振り誘発。

11)セイヤのピット(落とし穴)で2ターン拘束。

12)ようやくモンスターとガチ勝負開始。

・・・

おいおい…。セイヤはとことんチートだな。

沼地だからと言ってもさ。

スネアで転ばせる定番チートを2回して、

粘土を石にして、石を砂にして、落とし穴かよ。

イタズラ好きめ。

後半はそれなりにガチ勝負になったから、オレの実況でお届けしよう。

毒怪鳥はトサカを破壊されており閃光攻撃が使えない。

残る選択肢は尻尾振り、突進、ついばみ、毒のブレスだけ。

(とっしん。たーげっとはラビィ。だいすろーるしょうぶ。でめは5だから。)

「2でーす!ガーン!」

ラビィが毒怪鳥の突進を食らって手傷を負った。

「ラビィにヒールします。判定は?」

(せいこうだから。)

それを見越していたかのように間髪入れずにオインクがヒール。

まったく頼もしい限りだ。

時間稼ぎでセイヤがサンドストームで目潰し。

ガーベラがファイアストーム。

オインクがマシンガン連射。

(どくのぶれす。たーげっとはラビィ。だいすろーる。でめは5だから。)

またもラビィ狙いだ。実際、ハンマー使いはモンスターから憎まれることが多い。

「今度は跳躍して回避でーす!」

ラビィはダイスロール勝負を避け、スキル利用を宣言。

尻尾の振り回しは水平方向であるためジャンブすれば回避に成功しやすい。

跳躍は通常はアクティブスキルだが兎耳族は種族特性によりMPを消費しない。

使い放題だ。使えば使うほどオトクと言える。

(だいすろーるで判定。1でしっぱいだから。)

「3でーす!やったー!」

オインクはラビィが回避に失敗する可能性を見越して

「キュア」を準備していたようだが、回避成功してホッとしていた。

まったく頼もしい限りだ。

「エアリアルブレードダンスだ。」

(せいこうだから。)

セイヤがエアリアルブレードダンス(風刃乱舞)で毒怪鳥を切り刻んだ。

「ファイアストーム。」

(せいこうだから。)

ガーベラがファイアストームで燃やす。火属性は毒怪鳥の弱点だ。

「頭にマシンガンを連射します。」

(だいすろーる。4いじょうならふるひっと。3いかではんぶんひっとだから。)

「4です。フルヒットですね。」

オインクがマシンガン連射。

(だめーじがあしにきたから。あしをひきずるから。)

ダメージを負った毒怪鳥は足を引きずる。

たまがモンスターの瀕死を演出したのだ。グッジョブ。

こうなればモンスターの思考は「逃げる」の一択だ。

怒り状態となれば「瀕死でも戦う」かもしれないが…。

(にげるから。)

ゲームマスターのたまも「逃げる」を選択した。

オインクが「ペイントボール」のカードを場に出した。

毒怪鳥に匂いをつけることで、決して見失わない。

アイテムもきちんと使えば「千里眼」スキルと同じくらい役に立つ。

「これで逃げる意味が無くなりましたね。」

おお。オインクがカッコイイ。

毒怪鳥をセイヤがエアハンマー(風槌)で地面に叩きつける。

ガーベラが丁寧に胴体にファイアボール。

オインクが頭にマシンガン連射。

(…うごけないから。しんだから。)

…毒怪鳥は息絶えた。

(つぎはたいりょく3ばいだから。)

・・・

では、今回の振り返りをどうぞ。

「ダメージを受けた直後にオインクのヒール。ありがたかったでーす!」

ラビィがオインクの手を取ってブンブンと上下に振る。

オインクは照れ臭そうだ。シャイボーイめ。

「ファイアボールをうつだけのかんたんなおしごとー。」

「簡単なお仕事にするのが、俺とオインクの役割だ。次も勝とう。」

「ええ、頑張りましょう。セイヤ。」

(…やっぱりつぎはたいりょく4ばいだから。)

あのさ。

あくまでもゲームだからさ。

モンスターがハンターを殺すゲームじゃないからさ。

いちおう、ハンターがモンスターを狩るゲームだからさ。

熱くならずに気楽にいこうぜ?たま。

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