実践
オレたち5人は、緊張している。いい緊張だ。
これまで何度も実験を繰り返してきた。
実験するとダンジョンの床や壁が煤や灰で汚れるだろう?
あまりにも汚して真っ黒にしたままで放置するのは
マズいと思ったので拭き掃除したのが、何を隠そう、このオレだ。
そのうちオレに拭き掃除をさせるのに罪悪感を覚えたのだろうか。
みんなが拭き掃除を手伝ってくれるようになった。
この時、ウェスがどんどん減って足りなくなったので、
ちょっとオレは流儀を曲げて、ウェスを洗った。
大タルの中に水を張ったのを何個も用意して、
ぐるぐるかき回して一生懸命、汚れたウェスを洗って絞った。
まあ。
流儀にこだわりすぎるのも良くないからな。
・・・
「号令はステラがかけてくれないか?」
ゲイルが仕切ってくれた。
弓で大タルを分解するタイミングもあるだろうし
ウインドストームを遠距離で制御するのも大変だろう。
集中力を制御するために、
号令だけでもステラがかけるのは賛成だ。
オレとガンテツは大タルを転がす練習を積んできた。
号令に合わせてゴロゴロ転がすぜ。
そこは任せてくれ。
みんなが頷く。
ゲイルは万が一作戦が失敗した時の保険だ。
ゴブリンが暴走した時に閃光玉、煙玉を使ってくれる。
ミラの隣でサポート。
頼もしい。
ミラは3発用の火球杖で起爆する係。
「気楽に行け、3発以内で決めなくても大丈夫だ。
心配なら俺から1発用の火球杖を受け取って何発か撃てばいい。」
ゲイルがミラの緊張をほぐす。
そうそう。
失敗などありえないさ。
・・・
オレとガンテツは準備オッケーだぞ。
「行くわよ!転がして!」
おいさー!ほいさー!
おいさー!ほいさー!
ドワーフ流の掛け声。
おいさー!ほいさー!
ぐんぐん勢いをつけて大タルを転がす。
ゴブリン部屋間近だ。
よっしゃー!行けー!転がれー!
「撃ちます!」
ステラが矢を撃ったー!
そして結果を見ずにウインドストームの詠唱。
大タルは見事に分解。
さすがの一言。
間髪いれずにウインドストームがおがくずを巻き上げる。
けっこう距離があるのに正確だ。風魔法の達人だからだろう。
ゴブリン100匹は何もわかってない。
混乱というか思考停止。
本当にびっくりした時は思考停止するんだな。
気持ちはわかる気がする。
ミラが火球杖でファイアボールを乱れ撃ち。
おいおい、3発が塊で飛んでったぞ。
着弾する前に追加の火球杖。2、3、4発。合計7発か!やりすぎ!
大爆発。
思いのほか白い閃光。
顔が熱い。
赤外線か。
大爆発が連続してる。
もしかして熱風がこっちに来そうじゃね?
ヤバい!逃げろ!
・・・
今回の攻撃は、冒険者ギルドの相談窓口のお姉さんによると
火の上級魔法クラスの威力だろうとのこと。
ゴブリンの武器の銅と鉄が溶けていたのがその根拠だそうだ。
お姉さんは博識。
オレたちが火傷せずに済んだのはラッキーとのこと。
100匹のゴブリンはどうなったかって?
銅も鉄も溶けてるんだぞ?灰になった。
完全なオーバーキルだ。
過剰殺戮。
経験値にはオーバーキルボーナスが付くらしく、
オレたち5人はすごい量の経験値をゲットした。
レベルアップしまくり。
スキルポイントも大量ゲット。
しかも、オレたち5人全員、スキルポイント消費ゼロで
新しい魔法やスキルをゲットすることが出来た。
これは嬉しい。
けど大盤振る舞いすぎないか?
それから。
相談窓口のお姉さんの名前を知ることができた。
ルカさん。
いい名前だ。
・・・
今晩のマッサージの報告。
ゲイルがSTR+12、AGI+12、ミラはINT+11、最大MP+11、
ガンテツがSTR+6、最大HP+6、ステラがINT+6、AGI+6。
ゴブリン部屋の攻略が終わったよな?
マッサージをサボってみて
パラメーター上昇がリセットされるか試さないか?
もうちょっといいじゃないって?
じゃあもうちょっとだけ。
オレは女性には甘い。




