2つのアイデア
今日は冒険者ギルドの相談窓口に来た。
窓口のきれいなお姉さんには泣きぼくろがあり、
前回ここで見かけた時と同じく、やっぱりどこかで会ったような気がした。
「何かお困りでしょうか?」
丁寧な言葉遣い。安心する。
とりあえず、問題は2つあるんですよ。
一つはダンジョンの第二階層にゴブリンが100匹もいて、
前に進めないってこと。
もう一つは、メシがマズすぎて困ってるってこと。
え?
メシがマズいのは冒険者ギルドと関係ない?
本当にそうでしょうか?
味覚の世界もまた、ひとつの冒険と言えなくもない…。
話に無理があると。
はい。そうですね。
ごめんなさい。
「ゴブリン100匹の方は、なにか手がありますか?」
ミラって前向きだよね。
「そうですね。
お金はかかりますが討伐クエストとして依頼するのが一般的だと思います。
あとは単純にパーティメンバーを増やして対抗するとか、
複数パーティで組んで攻略するとか、いろいろ手はありますよ。」
パーティメンバーって最大何人なのかな。
「6人らしいぞ。」
「6人です。」
「最大6人ですよ。」
なんだ。
知らないのはオレだけだったのか。
6人対100匹か。
一人17殺!
うん。ヤバい考えだ。
「エルフの大魔法使いならば、たった1人でも
ゴブリン程度なら大量虐殺出来るそうです。
上級魔法1発だそうですよ。」
そうなんだ。
ミラ。
エルフの里には、上級魔法を使えるような大魔法使いはいるの?
5人いるんだ。
5人ともずっと長い眠りについていて、この100年起きないと。
実質ゼロじゃん。
「俺としては、たとえパーティメンバーを募るにせよ、
一人の強者に頼るのは反対だ。」
ゲイル。
そうだよな。
寄生は良くない。
わかる!そのとおり!
「俺なりにアイデアがある。
でもそれにはウノとミラの協力が必要不可欠だ。少し聞いてほしい。」
ゲイルのアイデアを聞かせてくれ。
「アイデアは2つある。
塩水とライトニングの魔法を使うのが1つ目のアイデア。
2つ目のアイデアは、おがくずとファイアボールの魔法を使う。」
ゲイルは2つのアイデアのどちらがいいか、
決めかねてるってことだな。
相談窓口のお姉さんにも話を聞いてもらおう。
・・・
「1つ目のアイデア。ライトニングの魔法を観察していて分かったのは、
稲妻が直線的に飛ぶということだ。そして貫通力がある。」
そうだね。
ミラも頷いている。
「ダンジョンの床に塩水をまいたり、
ゴブリンに塩水を浴びせかけることが出来れば、
ライトニングの効果範囲とダメージが高まるだろう。」
なるほど。
相手が何匹だろうと、
感電のショックで動けなくすれば問題ないと。
そうすればライトニングを連発し放題のミラの敵ではない。
いいアイデアだな。
いけるんじゃないか?
「2つ目のアイデア。
ファイアボールの魔法を観察して分かったのは、
せっかくの燃焼エネルギーが、
直径3mくらいの範囲に限定されているということだ。
かなり勿体ないんじゃないか?
そこで粉じん爆発を狙う。
小麦粉や砂糖が粉じん爆発するのは有名だが、
おがくずでも起きる。ファイアボールの燃焼エネルギーを
広範囲に拡大することが出来るだろう。」
あれ?
ミラは首を傾げている。
粉じん爆発を知らないようだ。
オレは聞いたことがある。
ただし小麦粉のケースだけだ。
おがくずでも起きるとは知らなかった。
「小麦粉や砂糖のことは知りませんが、
おがくずが大量に舞っているところで火を使うと、
爆発するのは良く知られています。」
相談窓口のお姉さんは博識だった。
いいね。
知性的。
それでいて控え目だし
(相談に乗ります)っていう気持ちが感じられる。
癒される。
ゲイルは頷き、しばし黙考モードに入った。
「本当ならガソリンとかの気化しやすい液体燃料があれば…。
いやニトログリセリンがあれば…。」
おい、ゲイル。
元の世界の科学知識でチートするにしてもだな。
ルールがあると思うんだ。
大量虐殺可能な科学知識はいろいろヤバいんだぞ。
ノーベル賞のノーベルを知っているだろ?
ダイナマイトの発明によって大金持ちになったが、
大量虐殺の責任感で生涯苦しんだんだぞ。
「ガソリン?ニトログリセリン?
ノーベル?ダイナマイト?」
ミラが困惑している。
あ。気にしないで。
元の世界の話であって、この世界の話じゃないから。
ええい。
塩とおがくずだとどっちが安いのかな?
「塩は高価ですが、おがくずなら、たぶんタダです。」
ならばおがくずで実験しよう。
実験あるのみ!
相談窓口のお姉さんに大感謝。
オレたち3人だけで考えていたら煮詰まっていたと思う。
ちょっと報告。
今晩のマッサージの結果。
ゲイルはSTRに+5、AGIに+5になった。
ミラはINTに+4、最大MPに+4になった。
だんだん義務っぽくなってきてないか?
サボればリセットされるかどうか、一度実験してみるのもありだろ?
まだいいって。
そうですか。




