胃袋
オレが学生寮の風呂掃除を終え、オレたちの家の風呂掃除に
取り掛かったころ、エルザ、マーチ、ステラ、シロが戻ってきた。
おかえり。
「ただいま。今日は疲れたー。」
「まさか第四階層まで進むとは思わんかったわ。」
「思ってたより成長してるわ。」
(オイラのブリザード頼みかと思ってたけど、チャージだけだったっす。)
「戦闘を全部学生にやらせるのがアタシの腕の見せどころなわけ。」
あのGの階層は、オレたちでも苦労したような気がするが…。
学生は大丈夫か?
ちょっと学生寮を見てくるか…。
あー。死屍累々だな。
もちろん死んではいないけど、心が荒んでしまった状態だ。
「ワンドオブブリザードの連発はキツい。」
「ワンドの数が少ないからプレッシャーかかるよね。」
「ああ。ワンドの受け渡しのループが早い。」
「今のパーティで戦闘中にチャージできるのがシロ様だけだしね。」
「無詠唱でシロ様がチャージしてくれるからギリギリ成立してる。」
「ワンドオブサンダーレインももっと欲しいな。」
「あれは汎用性高いわね。」
「あとはワンドオブライトニングを撃つ位置。
ライトニングは固定砲台じゃないんやでって
マーチ先生が厳しいんだよ。」
「男子はめちゃくちゃ走らせられてるからねー。」
おお…。愚痴も混じってるが、
オレよりも戦い慣れているような…。
これなら大丈夫か。
よし。オレのテレパシーで伝えるぞ。
みんな!今日の夕食はごちそうにするぞ!
「…!」
学生たちがオレを一斉に見た。
「テレパシー…?」
「ウノ先生のテレパシーよね?」
「ごちそうって言ったよな。」
「ごちそう!」
「いつも美味しいけど、もしかして更に美味しいのかな。」
「断言する。俺は無限に食う!」
断言しなくていい。
おっと無心だ。
オレはサムアップした。
さあ。家に戻って風呂掃除の続きだ。
風呂掃除が終わったら、マーチとオレのキッチンウォーズが始まる。
・・・
あれ?この包みは何だ?
「あ!それは先日、
ウノたちが製鉄所に行くって言ってたときに
私が寄り道、じゃなくて買い出しに行ったときの食料です。」
開けていいか?
うおっ!爆裂種の乾燥トウモロコシだ!
「10kg買いました。1kgで2ゴールドだったので20ゴールドです。」
かなり安いな。
これは主食として優秀じゃないか?日持ちするし。
爆裂種の乾燥トウモロコシは、
適量の油で炒めるとポップコーンになるんだよ。
これは学生が喜ぶんじゃないか?
「ええな。ポップコーンは好きやで。ひさしぶりや。」
とりあえず100gずつ調理して学生たちに振る舞おうか。
(ザザーッ。ピチピチ。)
油を熱した中華鍋に乾燥トウモロコシを入れ、
少しゆすりフタをした。
今晩は料理の下ごしらえがかなり済んでる。
ゲイルとリリーナにお願いしてた通り、
芋は千切りにしてもらったから今3台で蒸してる。
玄米は吸水してたから今2台で蒸してる。
カボチャとニンジンはスライスして先に蒸し終えてくれてた。
ルカとリリーナがナスとタマネギとトマトを準備済み。
ガンテツは今、玄米をついて白米に精米してくれてる。
(ポン!ポポン!ポポポン!)
「この仕事は骨が折れるわい。」
そうだな。後で自動精米機を作ろう。
「自動精米機とな?いつ作るんじゃ!
今作ったほうがいいんじゃないかのう?」
はははは。
疲れたんだな。精米はその辺でいいよ。
(ポン!ポポン!ポポポン!)
「ふう。助かったわい。」
学生に順番にお風呂に入らせてやって。
男子はオレたちの家の狭い風呂。
女子は学生寮の広い風呂だぞ。
「学生寮にお風呂を2つ用意した方がいいわね。」
エルザが言った。
(ポポポポン!ポポン!ポポポン!)
そうだな。明日にでも考えよう。
よし。エルフの里の高品質な塩をパラパラ。
ポップコーンが出来たぞ。
ルカ!リリーナ!
ポップコーンを学生たちに持っていってくれ!
よし。マーチとオレとで5回ずつ作って
合計10回作れば、あとはゆっくり肉を炒めるくらいだな。
・・・
「うまっ!うんまっ!」
「ちょっと、皿を抱え込まないで!」
「えーん。皿に手が届かない…。」
ポップコーンで学生たちは大興奮だった。らしい。
ルカとリリーナがうらめしそうな顔でキッチンに戻ってきた。
わかってる。
味見だろ?
さ。味見をどうぞ。お姫様たち。
「すごく美味しいです!」
「ふわっとして、さくっとして、じゅわっとしますぅ。」
はははは。良かった。
ルカが買ってきてくれたおかげだな。
ありがとう。
・・・
ポップコーンは大好評で1kgを消費した。
ほぼ学生14人で食いつくした。1人あたり70gも食った。
元の世界で100円で売ってるポップコーンの袋、
あれ100gあるから。
夕食前に70g食うヤツいないから。
おかしいなあ。
オレたち含め23人と1匹で1kgを食べて、
夕食までの時間稼ぎしようという目論見だったのに。
作ったポップコーンを学生が食べつくしてしまった。
今は芋の千切り蒸しが蒸し器3つ分完成して、
追加で蒸してる。
お湯が沸騰してれば芋の千切りは
5分で蒸しあがるので芋は最高だ。
玄米も蒸しあがったから、各自どんぶりによそうように。
自分でとろみのあるスープをかけるんだぞ。
今日はナスとカボチャのあんかけ風スープだ。
学生たちはがっつくように食べている。
スープにとろみがついてるから
噛まずに飲み込みがちだけど、
玄米は消化があまり良くないぞ。よく噛むように!
やべ。
ウサギ肉を焼く中華鍋をマーチに任せっきりだ。
「ウノ。戻ってくるの遅いやん。
戻ってこんのかと心配したで。」
ごめん。
ニンジン、タマネギ、トマト、唐辛子で
ピリカラ味に炒めればいいよな?
「それでいいやろ。ウサギ肉と合わせる前に味見させてくれ。
ウサギ肉にも下味がついてるから多分バランスは崩れんと思うが、
風味の相性もあるからな。」
わかった。
よーし。野菜のピリカラ炒め、できたぞ。味を見てくれ。
「うーん。これをウサギ肉と合わせると
ウサギ肉の繊細な味が、どっかに消えてまうわ。」
あちゃあ。
トマトってけっこう濃い味だよな。
すこし水で薄めてあんかけにするか?
「いや。蒸しあがった玄米を回収してきてくれ。
混ぜご飯にしようで。
わいは炒め終わったウサギ肉を一口大に切るから。」
わかった。
次世代蒸し器の玄米は1つは空っぽになっていた。
ルカ。
そっちの空っぽの次世代蒸し器を持って。
オレはこっちの残った玄米をキッチンに持っていくから。
学生は、オレが抱える次世代蒸し器をうらめしそうに見ている。
わかってる。
これは料理に仕上げて、すぐ戻ってくるから。
マーチ。持ってきたぞ。
「待ってたで。」
ルカ。吸水させた玄米があるから空っぽの次世代蒸し器に
入れてスイッチONだ。ありがとう。
お。中華鍋で3人前ぐらい、
だいたい玄米600gぐらい入れて混ぜるのか。
「この味の混ぜご飯は初めてやからな。
味見しながらでないと怖くて混ぜられん。」
量的に計算するとどうだ?
えーと1升弱の蒸した玄米は約3kgだろ。
学生は14人だから200グラムのごはんが入った
肉と野菜たっぷりの混ぜご飯、
だいたい400グラムならたぶん、食べきれないな。
たぶんオレたちが食べる分も残るだろう。
「わいは美味いと思うで。ウノも味見してくれや。」
美味い!
ルカも味見してくれ。
「美味しいです!」
これはイケるな。
よし。混ぜ終わったやつから持っていこう。
ルカも手伝ってくれ。
「はい!」
・・・
誤算だ。あれを全部ぺろりとは。
「美味い!」
「俺は学生寮なんて地獄だと思ってたけど天国だった!」
「ほんとーにおいしい!おいしくて泣けます!」
「私たちがいままで食べてたものはゴミでした。」
そうか。
それで、オレたちは何を食えばいいんだ。
芋か。芋の千切り蒸しか。
はあ…。
・・・
オレたちは、オレたちが食べる分の料理を
仕切り直しで作った。まあまあ美味かったよ。
かなり手を抜いたから学生に作った料理より味は落ちた。
学生たちの胃袋の容量が読めない。
どれくらい下ごしらえすればいいのか分量が読めない。
ポップコーンが1kg。芋は6kg。玄米が3kg。
スープが8リットル。混ぜご飯が6kgくらいあった。
えーと。固形物が16kgか。
学生14人で16kgの固形物と8リットルのスープか。
1人1kg以上食うのか。
学生ハンパねえ。
マジハンパねえ。
これからは芋10kgを千切り。玄米は4升を吸水。
次世代蒸し器はもう2台あったほうがいいな。
蒸した後の玄米は12kgになる感じか。
スープは寸胴2本にして15リットルかな。
おかずは5kgってところかな。
えーと。固形物が27kgか。
さすがに23人と1匹で27kgなら足りるだろう。
でもなあ。おかず5kgで23人ってのは、
元の世界からすれば貧弱だよなあ。
やっぱ肉をもっと増やしてやりたい。
「俺もウサギを解体できるようになりたい。
マーチ。教えてくれ。」
「それはめっちゃ助かるわ。ウノは血に弱いねん。」
ぐっ。
ゲイルよ。オレも解体できるようになるぞ。
苦手な血さえどうにかすればいい。
血吸いナイフとかあれば…。
あの異世界小説、マジでよく考えてあるな。
「ところでバーレルドールはどう?」
ステラ。
3台完成したぞ。
マジックユニットを40個搭載するよう改良した。
1台につき1200発だな。
「3台で3600連発かいな。」
「ホーリーアローマシンガンは?」
「5つ完成しました。明日もう5つ作る予定です。」
9人なのに10なのか?
「ゲイルが両手にマシンガンを持って戦う姿は、
絶対に学生を魅了すると思うんですぅ。」
ははあ。
確かにインパクトは絶大だな。
女子はたまらんだろう。
マーチは両手マシンガンはやらないのか?
「わいは片手で十分や。
ミラかルカにオブスキュアをかけてぼんやり化するつもりや。
戦闘であまり目立ちたくないタイプなんや。」
マーチは肩をすくめた。
「バーレルドールは完成。ホーリーアローマシンガンも順調ね。
となると悪魔48柱の攻略は明後日ね。」
そうだな。
攻略方法を詰めよう。
修正:ワンドオブブリザードのチャージの件を追加




