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10話 :彼女の翼は何というのか (四日目 朝)


ルカ「私は死んだことにして、家族に申し訳ないから」


本音。

私じゃない。

ただそれだけが頭の中で響いた。


みんな必死で頑張ってたんだと思う。私は働いたりしたことなんかなかったけど、それでも知るようにはしてた。自分から行けなかっただけ。

自分じゃない。

輝いてた。

彼らはずっと輝いて、私なんかよりもずっとずっと輝いて見えた。


? 「みんな違うんだから」


その通りだ。

同じになる必要なんかない。

でも悔しい。どこかにチャンスがあったのなら、なんで気付かなかったんだろう。私がこうしている間にも生き残っている人は頑張っているのだろうか。明日何しようかとか、どうやって生きていこうとか…。


私じゃない。

みんな知っている。努力の差も、私と彼ら彼女らの違いも。それは才能?その二文字なんかで片づけていいの?


みんな努力してたんだ。

そうだ、きっとそうに違いない。その先に行ける。きっと私も。



何で違うの?

私だって頑張ったよ?頑張れって言うから、他のやり方を知らないから。生きたいさ、生きていたいさ。生きて普通の人生をちゃんと歩みたいさ。


頑張ってみたさ。他の人に文句言われないくらいはやったよ?そんな行ってくるくらいは触ったよ。触っただけで深くは行かなかったのかもだけど。


生きたい。

こんなところで終わりたくない。

生きてやる、生きて生き抜いてやる。みんな潰れちゃったんだもん。仕方ないじゃん。あんなになったんだよ、班長も。

みんな、そう。

みんなあれに潰されて一緒になる。

だから私もそこへ行く。

天に召される。

くだらない。

こんなのはもっとだ。


? 「逃げろ!!そっちの方へ来るぞ!!」


遠くで声が聞こえる。新しく指揮をしている謎のおっさん。班長の代わりにどこからともなくやってきた禿のジジイ。意味わかんねーし、どこへ逃げるっていうんですか。

死ぬのが数分ずれるだけでしょ。

バカバカしい、寝よ。


? 「____ルカ」


私の名前。

別に呼ばれたくもない。でも自分の事だから、唯一嫌いでも自分のものだから、私は返事をする。


ルカ「__はい?」


そこにいたのはさっきのおっさんじゃなかった。

女王「つまらなくないか? そこにずっといるのは」

女王「そんな誰も聞いてない思いを抱え込んで」


女王「私はね、そういう所が嫌いだ。もっと日に当たっていたい」

女王「もっと色んな所へ行って色んなものが見てみたい、ルカもそう思わないか?」

女王「なあ、どうして? どうしてそんなところにいる?」

ルカ「…………違う」


私とこの人は違う。

確かに同じ種類だけど、二足歩行で同じような顔をしているけど、確かに違う。


彼女は私にはまぶし過ぎる。


私の目には彼女をとらえられない。

とても速く動いて、どこへ行くにも全て明るくて、みんなを思わず動かす、多分そんな感じ、だと思う。


女王「どうしてそんなつまらなくても平気なんだ? いつまで引きずるつもりだ?」

女王「翼をつければお前も飛べる」


入って来る。

私には分からない。


女王「もっと遠くまで、あんな物体なんか見えなくなるくらい」


喋らないでほしい。

私を一人に___。


女王「そんな世界へ行きたくないか?」




女王視点↓


また言った。

同じ言葉。いつだって最後はこう。色々言うつもりでも心までは届いてない。くだらない押し問答の先には何もない。


漆原「どうでしたか? リーダー」

女王「ダメだった……? 漆原、その時計は?」

漆原「ルカのです。壊れてましたから」


時間。

時計でしか分からない、人間が勝手に決めた物。私にはくだらない。


女王「こんなものを見なければ、今自分がこの世界でどれだけ過ごしているのか分からない」

女王「あいつ……」




ルカ視点↓


世界。

行きたい。

行ってみたい。

みるだけじゃない、あこがれるだけじゃない、確かにそこにあるってことを知りたい。あんなのに潰されて終わりだなんて絶対にいや。

こんなジメジメしたところで終わりたくない、潰れたくない。

班長みたいには__。


ルカ「…………」


確かにそう、そうだけど。



あの日、お父さんが潰れた。

あっという間で、目に焼き付いて離れなかった。しがみ付いた弟の熱が伝わってきていた。決して寒くない、あの日。

私は人の生きて良い場所とそうでない場所とを知った。


ルカ「お父さん……?」


ぐしゃぐしゃになった父はそのままその物体に張り付いて宇宙まで連れて行かれる。

とても弟に見せて良いものではなかった。

見たいものでもなかった。昨日まで一緒に食事をしていた人が、何の悪いことをしたわけでも無かったろうに。


潰される。

でもそれは私たちの頭の上にあるから当然。何の支えもなく浮かんでいるんだから、落ちてきて当然。おかしくない。

あの日、逃げた。

転んでもただ、弟を離さない様にと、逃げた。


私の知らない世界。

知っていたら……生まれてこなかった。だからって産んでもらったことにどうこういうつもりはない。ただ、知らなかっただけ。

途方もない大きさの物体が浮いている。


大きさは数百mくらい。見上げてなんとなくそう思った。あまり光らずに震えてる。次に誰を潰そうか、そんな事でも思っているのか。

翼があって、何処まで逃げれるっていうのか。

父の作った物だけで、何処まで頑張ろうというのか、人間は。


私は犠牲になる道なんか自分からは選びたくない。でもじゃあ選んじゃった人は?選ばされた人は?もうその景色を見れないんだよ?


せいぜい肉塊になって宇宙を漂うくらい。

その一片。

その一片に班長達も。


ルカ「…………」


でもなんで?

望んだから?

行きたいと、違う世界へのあこがれが強すぎたから?その見せしめとして死んだの?じゃあ私たちは今何をしてるの?


女王「ルカ____それは違う」

女王「確かに彼らは世界を望んだ。そんなのになりたくないってのもあったと思う」

女王「でもそれより、それ以上にそうしなきゃいけないって感じたんだと思う」


希望を見せる。

光を見せて、でもそれだけじゃなくてそれを自分でも確かに実践して。


女王「ルカみたいな奴は今までも沢山いた……それこそ沢山」

女王「でも救い出せたのはほんの一握りだった。___みんな私より優しかった」

女王「むしろ私の心配をして、自分の事を置き去りにして」

女王「だから死んだ、私が殺したも同然」

女王「ルカは__?」


すごい。

でもだからこっちに来ないでほしい。

潰れたんだ、だから私も潰れる。それでいい。






女王「……おい」


顎を持ち上げられた。

正確には彼女の翼の先で私の顎を持ち上げていた。


女王「お前はそんなこと言っている場合なのか?下を向いている時間なんかないんだ」

女王「そんなのは死んでからでいい」

女王「私の仲間も何人も死んだ。もちろん救えなかった命もある」



女王「前を向け」


女王「もうこれ以上、私の目の黒いうちは誰も死なせない」

女王「あんな物体に……私の仲間は殺させない」


女王「私を信じてくれ」


女王「ああそうだ、漆原から受け取っていたんだった」

女王「お前の分だ、壊れているんだろう?」


そう言ってさっきの人は真新しい時計を私に差し出す。裏に調査団の翼が彫り込まれていた。


ルカ「ありがとうございます……あの」

女王「気にするな、さっさと行くぞ」



ルカ「…はい」



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