サバンナに留学という名の島流しにされていたはずの従妹が帰ってきたらしい。
「飽きた」
しばらく引き篭もると決めて早三時間。
小説を二巻まで読んでからさすがに疲れを感じてきた。目が痛い。
それにコタツからずっと出ずにいたのも健康によろしくない気がしてならない。
そういえばもう昼を回っている。
少し遅くなったが昼食を作ることにしようではないか。
「軍人さんも何か食べますか」
「うむ」
とは答えてくれたけど軍人さんは食事をしない。
以前、軍人さんに茶碗にご飯を盛ってお箸を突き立てて差し出したら軍人さんに怒鳴られたことがあるくらい軍人さんは食事を必要としていないのだ。
「しかし冷蔵庫にはバターと干し芋しかないぞ」
「えっ、本当に?」
軍人さんがそう言うがいちおう冷蔵庫の中を確認した。
すると冷蔵庫の中には本当にバターと干し芋しかない。あとは米と調味料各種だけか。そういえば朝冷蔵庫の中身がないのをこの目で見ていた気もする。干し芋だけはたった今軍人さんに言われて気づいたけども。
まあ、ないものは仕方ない。
もそもそと干し芋を齧りながら米をとぎ炊飯器にかける。
二合の米を高速で炊飯して三十分もかからないだろう。炊けたご飯でバター醤油ご飯とかいう伝説のメニューに挑戦することにしようではないか。
「もしもし鰻重の竹一つ」
なんて考えてたら軍人さんが僕の携帯いじってどっかに出前頼んでた。
最近のポルターガイストはスマホで出前やってる店を探して電話注文するくらいには手強くなっているらしい。いったいなんてチープトリックなんだ。
「飯はちゃんと食え」
僕を気遣ってのことなんだろうけど勝手にそういうことするのはどうかと思う。
しかし僕を気遣ってそう行動なだけに口を出し辛い。
いや、言うけど。
「軍人さん、あまり勝手なことはしないでください」
「うるせえ。米食え」
「……それ、朝も言ってましたね」
どうにも僕は軍人さんに勝てない気がしてならない。
やはり生きている人間では死んでる幽霊には敵わないんだろうか。
先に軍人さんに言ったことがこうもあっさりと覆されてしまうとなんだかむずかゆくなってしまうね。どうでもいいけど。
鰻の出前が届くまでだいたいあと一時間くらいだろうか。
この今から炊ける予定のお米はどうしたものか。
「おじいちゃん、ご飯いりますか?」
「うむ」
どうせ食べないだろうけど。
「塩コショウご飯とバター醤油ご飯どっちがいいですか」
「白米だ」
どうやら塩コショウのゴールデンコンビもお気に召さなかったらしい。