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先生を返せ

作者: うおとか

俺は電話を聞いて怒り狂った。弟はこういった、「お前の猫は預かった。」

先生(俺の猫の名前だ)は俺の唯一の家族なのだ。

両親は事故で死んだ。弟が一人いたが自殺した。

つまり先生は俺の唯一の家族なのだ。

「何が望みだ、金か。」

「金なんているものか、俺は死んでいるんだ。お前も死ね。」

冗談じゃない、誰が死ぬものか。大体自殺するなんて甘えだ、構ってちゃんの思考だ。

「そうだ、俺は死んだんだ。お前の猫も殺してやる。はっはっは。引き裂いて鍋にして食っちまうぞ。はっはっは。」

弟の笑い声を聞いて俺の怒りは頂点に達した。怒髪天を衝くだ。

「おい、貴様ただですむと思うなよ。俺は怒っているんだ。」

口に出すとむらむらと怒りが沸点へと近づく。俺は怒っている。激おこなんだぞ。

くそう殺してやる。一回じゃ済まないぞ77回殺して引き裂いて食い散らかしてやる。ラッキーセブンだ。

いや、ラッキーセブンと言う観点から見るなら777回のほうが都合が良いだろうか。

「いいか、俺の望みはただ一つだ。いいか、秋葉原に行ってだな、サリンを撒くのだ。」

何を言っているんだ。サリンなんて善良な一般市民であるこの俺が持っているわけがないじゃないか。

だから俺はそういった。

「おい何を言っている俺はサリンなんて持っていないし大体そんなことをしたら人が死んでしまうじゃないか。かわいそうだろ。」

「ええいうるさい、俺を自殺に追い込んだクズ共なんて皆殺しだ。」

そうだ、弟は秋葉原でオタク狩りにあって三日後に死んだんだ。阿呆なやつだ。俺は空手20段だから不良なんてミンチ肉にしてハンバーグを焼いて食っちまうのに。

だいたい弱い奴がいけないんだ。いじめはいじめられる方が悪い。なぜか。秩序を乱すからだ。

「お前がトイレに行ってだな、紙コップに放尿しろ。サリンが出る。やらなきゃ猫は肉団子だぞう。」

なんて奴だ。動物愛護団体に通報してやろうか。クジラを殺してはならんのに猫なんてもってのほかだ。

しかたないから俺はコップに放尿した。

驚いたことにコップには黄色い液体が溜まった。これはまごうことなきサリンだ。

オウムが使ったのなんかよりもっともっと純度が高い、いいやつだぞ。

「おい、サリンが出たぞ。」

「そうだろう、どうせお前はありえんと思ってただろうがな、これで信じるだろう。さあ秋葉原へ行ってサリンを撒くのだ。」

俺はしぶしぶ家を出た。

コップをもって電車に乗ったら周りからやけにじろじろと見られたがサリンを所持していると疑われたらマズい。

俺は一口飲むとにっこり笑った。笑顔は場を和らげるものだ。

秋葉原駅について、駅を出たら人がいっぱい居た。そうだ今日はアイドルが来るのだ。

アイドル目当てに集まっているオタクどもを見て俺は驚いた。みんな弟じゃないか。

俺は頭がいい。よく考えてみるのだ。弟はオタクだ。つまり弟=オタク。そうなればオタク=弟は自明じゃないか。

くそう俺のことをバカにしてやがる。殺してやる。

「先生を返せ!」俺は叫んだ。

弟が一斉にこっちを見る。信じられん、笑ってやがる。

「殺してやる、殺してやるう。」

俺はサリンを口に含み霧状に噴き出した。こういう毒物はだな、エアロゾルという状態にすると効果的なのだ。

「うおおおおおおおお!」俺は一人でも多くの弟を殺すために用意していたダガーナイフを取り出した。

あれ、と俺は思った。ここで弟を殺してしまっては先生は帰ってこないではないか。

そうだ、俺はなんてバカだったんだろう。

キリストは一度死に、蘇ったことで全人類の罪を償った。俺は神だから死なねばならんのだ。

サイレンだ、俺を十字架にかけるサイレンが鳴る。捕まってたまるものか。

「ああめえええええええん!」

俺は死んだ。




(2013年)

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