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序章

昔々、それは鳥のような雪が降る冬の最中のことでした。とある北の国の王妃様は黒い美しい羽を持った鴉を眺めながら、縫い物をしていました。縫い物をしながら鴉を眺めてしまった時、ふと針を指に刺してしまい、赤い赤い血が一滴床へ落ちました。真っ白い雪、美しい黒の羽を持つ鴉、そして赤いこの血、すべてが美しく思えた王妃様は身篭っている自らのお腹を撫でながら思いました。


「雪のように真っ白な肌、血のように赤い唇、美しい羽のような黒い髪を持つ子になればいいのに。」


王妃様はそれから間もなく子供を産みました。その子は雪のような白い肌、血のような赤い唇、漆黒の髪をもっていたので白雪と名付けられました。そして体の弱かった王妃様は、白雪を産んですぐに亡くなってしまったのでした。


一年が経つと王様は次のお妃様をもらいました。お妃様はとても美しい方でしたが、心の中までは到底美しいとは言えず、自分の美しさに己惚れている人でした。お妃様は自分より美しい人がいるのを厭い、真実を知る魔法の鏡を毎日覗いて、


「鏡よ鏡、世界で1番美しいのはだぁれ?」


と、尋ね、


「王妃様、世界で1番美しいのは誰かと言われましても、それは。」


と、返され、


「この会話を何回したと思っているのじゃ!色恋関係なく人間の持つ美的感覚によるものに決まっておろう!」


と、返し、


「王妃様、世界で一番美しいのは貴女様でございます。」


と答えさせるのが日課でした。鏡は嘘をつけないので、お妃様は満足するのでした。


ところがある日、白雪が13歳になった頃です。白雪は森に棲む妖精のようにそれはそれは美しく成長していました。その姿は、お妃様よりも若々しく美しいものでしたので、お妃様は不安になり鏡に問いかけました。


「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだぁれ?」


と、お妃様が尋ねると、


「お妃様、それは白雪でございます。とても若々しく、禁断的で大変美しいお人でございます。タイプでございます。」


と、返されると、お妃様はいつもの鏡の軽口など耳に入らないようで、真っ赤になってお怒りになりました。それからというもの、白雪を見る度に妬みや憎しみでいっぱいになってしまいました。お妃様は自分に磨きをかけ、なるべく白雪と会わないようにしましたが、鏡から返ってくる言葉はいつも同じでした。


そして、白雪が18歳になった時、ついにお妃様は我慢が出来なくなってしまい、この国へ使える森の狩人の一族に、


「白雪を森へ連れ出し、殺してしまえ。その証拠に心の臓と肝臓を持ってくるのじゃ。」


と、そう命令しました。狩人の一族は可哀想な白雪に同情しましたが、お妃様の言うことは絶対でしたので逆らうようなことは出来ず、せめて痛みなく逝けるようにと狩人で一番の手練れのノルウェをお妃様に寄越しました。


「分かりました、必ずやこの俺が白雪姫の心の臓を止めてきましょう。」


そうして、動物達と芝生でお昼寝していた白雪をいとも容易く森へと連れ去りました。しかし、ノルウェは可愛らしく寝ている白雪を見るとなんだか可哀想になってきてしまったのです。どんな刃もこの美しい人に向けることはとても恐ろしいことだと思い込んでしまったノルウェは、白雪を優しく揺り起こしてこう言いました。


「お妃様に貴女を殺せと命令されましたが、私ではどうやっても貴女を殺せそうにはないのです。白雪姫、どうにかお逃げになって下さい。」


と、ノルウェが言うと白雪は悲しそうに目を伏せました。


「私だけではこの森を歩いてお妃様から逃げることはできません。どうか、どうか一緒に逃げてくださいませんか?」


ノルウェは一瞬悩み、確かにこの美しい人だけではすぐに恐ろしい森の者達に食べられてしまうだろうと思い、頷きました。


「分かりました。俺の命に変えても貴女様をお守りしましょう。」


白雪は微笑みました。



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