デジタルではなくて
文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:デジタル
「最近の画素数ならアナログにこだわる必要もないんじゃね」
Kが手振れがなんたらといいつつ山中で足を止めたので、俺はのんびりとペットボトルの蓋を空けながらそう言った。
「別に拘っているわけじゃないけどね」
Kは横顔で笑いながら写真の構図に悪戦苦闘しつつそう返してきた。
そんなにタイムアタックのようにスケジュール立てて山に登っているわけじゃないからいいんだけどさ。
「いや、高い高い言いながら結局それを買いなおしたじゃん」
高いカメラを買うだけのスキルはあるとは知っている。
幾重もの木の葉擦れのさざめきの中で鳥の鳴き声や虫の音などが響き渡る、暑い山での冷えるくらい涼しい木陰の温かみのある木漏れ日の広場など、Kは素人目にもその空気すらも写し取ったかのような写真を撮っていたのを見たことはある。
けれど、それはデジタル処理をされてネットに公開されている写真ではありえないのかというと、そうでもない。
そういう作品は世に幾つかあるし、きっとKなら新しい技術でもっと美しい写真を撮れるだろうと、確信すら抱かせるものがあった。
「使い慣れた方が決断が楽だったんだよ」
「そういうもんかね」
「そうだよ」
現像も手間のかかる方で、決してそれがらくだとも思えないのだけど。
「手振れ自動補正くらいはアナログにもないの?」
「ぶれるからいいってものもあるしね」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」
きっとKがそういうからには、そういう意味でもいい写真が撮れるんだろう。
「でもさ」
それでも俺は「保存には便利じゃね?」と言っていた。
現像された後では鮮烈な色合いの美しい光景も、時と共に褪せてきていたのを見たことがあるからだ。
けれどもKは「確かにずっと綺麗なままってのは魅力だけど」とか一定の評価を下しながらも、結局は――。
「セピア色に褪せてくるから、想い出は美しいんだと思うよ」
と、持論を曲げなかった。
周りを見回せば、濃密な緑の香りすら感じさせる新緑の森。
今見回して感じ取れる艶やかに刺激的な命の気配が、いつしか思い出の中では静かで穏やかなものばかりになるというのなら――。
「なるほど、悪くない」
と思った。
「でも、アナログに拘ってないといった割には、やっぱりアナログ贔屓じゃん」
というと、彼はこの会話で初めてカメラから顔を上げてこっちを見ると――。
「そこはホラ。1と0で割り切るようなデジタルじゃないからさ」
とはにかんで笑った。
弘法は筆を選ばず。
けれどそれが後世に残るかどうかは、半紙の出来にかかっている。
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244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/06(火) 20:14:25.57 ID:+tkWax6y0
お題ください
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/06(火) 21:48:32.52 ID:64vvdHgSO
>>244デジタル
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/06(火) 21:59:44.39 ID:+tkWax6y0
把握しました