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男気じゃんけんって楽しいよね。

ペルセウス座流星群。

一体、どれほど美しいんだろう。まだ、想像もつかない。


##


「屋上からなんか、星は綺麗に見えねぇよ。海行こうぜ、海。」Shuutaが珍しくまともで正しい事を言う。俺等が通うこの学校から海は近い。自転車で20分くらいだ。

「そうだな。」

「海!いいね、海!」

「じゃあ待ち合わせ、どうする?」

「流星群が9時位からだろ?8時に校門集合で良くね?」

「龍、それいいじゃん!」お前にしては良い案だ、とでも言うかの様に天パは笑顔になる。どんだけ上から目線なんだ。てか何様だお前。

「じゃあ、8時校門集合で、皆で海な!」

ペルセウス座流星群。

一体、どれほど美しいんだろう。


##


「……で。」

「は、はい。」

龍とShuutaと天パが恐る恐る、という感じで返事をする。

「なんであんた等はチャリで来たんですか馬鹿ですか。」

「え、駄目なの?」

「おい、女の子もいるんだぞ!?てかそもそも俺等、電車通学だからチャリねぇし!」龍とShuutaと天パは高校の近辺に住んでいて、何時も自転車で通学している。

だけど俺と藤谷さんは違うんだよ!電車通学だからチャリ使えねぇんだよ!家近いもんの自慢か馬鹿!俺だって電車じゃなくてチャリ使いてぇよ!

「まぁまぁ傑ー、そう怒らないのー。そんな風に何時もカリカリしてたら寿命縮んじゃうよー?」

「てめぇ、ただでさえ薄いその天パ、引っこ抜いてやろうか。」

「ちょっと薄いとか言わないでくんない?てか天パじゃなくて普通に髪の毛って言ってくんない?」

「二人で言い争いしてんじゃねーっつの。藤谷、困ってんじゃん。」龍の指摘にはっとして、二人で慌てて藤谷さんに謝る。

「あ、私の事は気にしなくていいよー。でもどーしよっか。自転車組と徒歩組で別れて海まで行く?」

「やだ。藤谷さんと傑が二人きりとかまじでやだ。」

「同じく。」

「そんな即答でそんな事言うとか二人とも酷くない?」俺も二人と同じ立場だったら同じ事言うけどさ。

「じゃあどーすん「さーいしょーわぐっ!じゃん……」

「ちょ、何じゃんけんしてんの!?何でじゃんけんしてんの!?」

当たり前の事をきくなよ、とでも言いた気な顔で俺の質問にお優しい事に答えて下さったのは天パだ。

「誰が誰と二人乗りするか。」

!?!?!?

ちょ、ちょ、待てよ!この中の誰かが……、チャリを持ってきた三人の内の誰かが、藤谷さんと……そ、その……ふ、二人、二人乗りって事は……、み、密着、すんのか?

……。

……っなんとしてでもっ!阻止!特にShuuta!絶対阻止!

……どうやって阻止すんだ、これ。

「てかこれ、藤谷に選択権はない訳?それってなんか、なんかじゃね?」龍が言った。

「なんかなんかって何。」

「そこ今問題にするとこじゃなくね?」とりあえず、よく言った!龍!そう!藤谷さんにも選択権は有り、そして藤谷さんは必ず徒歩、という道を選択する……はず、だ!

いや、だって藤谷さんは純粋かつ可愛らしい女の子だもん。こんなむさい男子高校生と自転車二人乗りで密着とかしたくないだろ。

「どう?藤谷。今、なんか君を巡ってもの凄い状況になってるけど。」

「二人乗りでも全然平気だよー?」うん、嫌だよね。やっぱ嫌だよね…ってえぇ!?

「平気なの!?そこ、平気だよー?って言っちゃうの!?」

「しゃあっ!」

「そこ!ガッツポーズするんじゃねぇ!」てかなんで平気なの!?天然の!?ねぇ、それ天然なの!?

「じゃあ改めて!勝った人が藤谷さん、負けた人が傑なー!」

「なにそれ!なにその罰ゲーム的立ち位置の俺!」酷くない!?何時もの事ながら扱いが酷くない!?

「はい最初はグー!じゃーんけーん……。」


##


ブツブツと文句を言いながら天パはチャリをこぐ。

「……美男美女、だよなぁ。」

「……ああ、本当に。」

結果。藤谷さんを乗せているのは龍。そして、

「てかなんで罰ゲーム俺よ……。」

「じゃんけんに負けたからだよ。てか罰ゲームじゃねぇよ、馬鹿。禿げるぞ。」

「禿げじゃないよ!?」

「……いや、現在形じゃなくて過去形だから。」俺を乗せているのは、天パ。此奴、髪の事気にしすぎじゃね?あ、既に薄いからか。

「男子二人はなんかな……。否、おかしくはないんだけどさ、なんか……な。ふざけてる訳でもねぇじゃん、これ。おい傑。お前こっからチャリ降りて走れ。」

「ふざけんな死ね。」確かに走れる距離だけれども。俺を殺す気か。

天パが再び、美男美女だよなぁ、とため息をつく。いつまで言ってんだ、それ。

でも、確かにそうなんだ。

藤谷さんにぴったりなんだ。龍が。理想のカップル像っていうか。赤の他人が見たらどう見てもカップルだし、あれ。

「……やっぱりさぁ、」天パが呟いた。「全員で歩くべきだったんだよ、これ。」

「じゃんけんを勝手にはじめたのは君だからね?ねぇ、君だからね?」

何時もは誰よりも速く自転車をこぐ龍なのに、藤谷さんを乗せているからなのか、徐行運転をしている。

「……負けた感じだ。」

「そーいえば、朝霧って彼女と別れたんだっけ。」天パがいきなり聞いてくる。そういえば、彼女と別れたとか、ふったとか言ってたな。

「彼奴でもふるんだね。」

「は?」

「なんか来る者拒まず去る者拒まずって感じ、ない?」言われてみれば。

龍が今までも誰かと付き合ったりしていたのは知っているけれど、龍がふる、というのは今回が初めてだ。

「それだけ嫌だったんじゃないの?」

「俺、朝霧とこの間まで付き合ってたあの子、面識あるけどさ、悪くもない至って普通の子だよ?寧ろ今まで朝霧と付き合ってた子の中じゃかなりいい子の部類なんじゃない?」

そんな子をふるなんて、何考えてるんだろうねぇ。天パは不思議そうに顔を顰める。

何考えてるんだろう、といえば。

「天パ。後悔って、なんだよ?」

「ん?後悔がなんだって?」すっとぼけやがって。

「この間俺に言ったじゃん。後悔しても知らねぇよって。藤谷さんに告白するかしないかでさ。」

「……あー……あれか。……。」天パが少し考えるように沈黙し、「……そんな事言ったっけ?」

「いや、お前、あれかって言ったよな?今言ったよな?」

「気のせいじゃない?ほら、傑、歳だからさー、幻聴幻聴。」

「ふざけんな死ね。」

「あ、ほら傑ー!海見えたよ、海!」流しやがって。

「……あー、海だなー……。」

「なにその疲れきった声。やだお爺ちゃんきもい。」

「誰がお爺ちゃんだ。髪薄い奴に言われたかねぇんだよ。」

「禿げじゃねぇ!俺はフサフサの天パだ!」誰も禿げとは言ってないんだがな。

自転車を飛び降り、俺等は砂浜に駆けだす。先に着いていたShuutaが、こっちこっち!、と手招きをした。

「龍と藤谷さんは?」

「すげぇ徐行運転で後から来る。」

「そか!じゃあ先にビニールシートひいておこうぜ!」大きめのビニールシートに、お茶、お菓子……。

「どんだけしっかりと準備してんだよ……。」

「……相当楽しみだったんだな、Shuuta。」


##


朝霧達来たよー、と天パが此方に向かって叫ぶ。

「結構遅かったな。」

「徐行運転し過ぎじゃね?」

キキィッと嫌な音を響かせて、見慣れた龍の自転車が俺等の目の前に止まった。

「……お待たせ。」仏頂面で龍が言う。「じゃ、俺帰るから。」

「あ、そっか……って、え?」

帰る?

「乗せてきてくれて、ありがと、朝霧君。」藤谷さんがぎこちなく笑うと、龍もぎこちなく、おう、と返す。

……何があった、この二人。

「じゃあねー。」

「え、ちょ、おい、龍!」

……。

マジで帰っちゃったよ、あの人。

「……だから皆で歩こうって言ったんだ。」天パが呟いた。

率先してじゃんけんしてた癖に何を言う。


##


「朝霧ぃ。」名前を呼ばれ、自転車を止める。「……泰名。」何で此処に。顔を顰めた。

「……。」泰名は黙って彼を見つめたあと、「……漫画のヒロインってさぁ、大抵美人でもてるんだよなぁ。」いきなり話し始めた。

「は?なんだよいきなり。ヒロインっていうんだから、そりゃそうだろ。」

「でもそれってー、そのヒロインに告白して振られる人がいるから、もてる、ってなるんじゃん。」

はぁ?、と再び顔を顰める。泰名も上手く説明出来ないようで、難しそうな顔をしていた。

「……もてるっていう事実が作られるには、振られる役の子も必要って事。上手く言えないけど……。」でもさ。「漫画の世界に、そんな人達はいないんだ。存在を抹消されてるんだよ。ヒロインの特徴を作った人達なのに、同級生1、みたいな名前の無い存在になっちゃってるんだ。」それって、悲しいよね。

だから、俺等は消されないように頑張らないといけないんだ。

Shuutaが翔ぼうとするように。

「俺はShuutaを尊敬するよ。お前は?」

答えられなかった。

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