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ある少年のお話

飛び降り事件から丁度一週間が経った、ある日の放課後。

あ、と呟いたのは、通称天パと呼ばれる少年だ。

「藤谷。」

「あ、……えっと、天パ君。」

「……もういいよ、それで。」名前位は覚えておいて欲しいものだが。しかしその大きな目で見つめられると全てを許してしまう。

それが、藤谷美姫、という少女だ。そんな魅力が彼女にはある。


##


彼は、この間藤谷に振られた。

しかしそんな事は無かった、とでも言うかの様にひょいひょいと彼女の後ろについていく。良くそんな平常心で一緒に居られるなぁ、と周囲の友人達は思ってしまうのだが。

それが、天パという男である。

そんなある日。

「ねぇ、藤谷ィー。」

「なに?」

彼は唐突に切り出した。

「お前の好きな人って、誰なん?」

彼女は少し沈黙した。

「……なんで?」

「いやぁ、だってさ、一番仲が良さそうに見える松坂を振ったじゃん?だから気になってさ。ここで本郷、とか言われたら俺終泣いちゃうけどね。」

「泣いちゃうの?」

「だって彼奴に負けるとか俺終わってんじゃん。」

全く、酷い言われようである。

「終わっちゃうんだ……、ふふっ。」

形の良い目を細めて笑う。

「で?誰よ。教えてくれたっていいじゃぁん、ね?」

彼女は、ちょっと迷って目を伏せる。

「あ、否、だ、駄目ならいいんだよ⁉俺、藤谷に嫌われたくないし。」

「……別に……、構わないけれど……。」

「おお、まじで⁉」身を乗り出した。彼女はこくりと頷いて、恥ずかしそうに言う。


小さな声で紡がれる、一つの名前。


「……誰にも言っちゃ、駄目、だよ……?」

天パは、硬直していた。

沈黙。

俯く。

「泣いていいかな……?」

「え、なんで?」

そんな幸せそうな顔で言われちゃあ無理だ。

俺は勝てない。


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