此奴等に話しちゃった俺が間違っていた
ああ……。
なんで、俺はっ!
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五月の風に吹かれながら、Shuutaは、帰宅していた。ふわりとした生温い風が
「……彼を包み、彼はゆっくり後ろを振り返った。すると、」
「……Shuutaは本当、黙っててくれない?」
「そこには冷たい親友がいた……。」冷たくて悪かったな。俺は違う、という表情で龍がそっぽを向く。お前もだぞ、多分。
「あ、一緒帰ってもいい?」
藤谷さんだ。
あの一件以来、よくこのような展開が起きるようになった。正直に言うと、そこは感謝している。
そこは。そこだけは。
「勿論、どーぞー。」軽く返事をするのは龍だ。なんでお前が返事をするんだ。
否、別にいいんだけど。
「やったー、有難う!」
「でも藤谷さんにも友達がいるんだろう?俺等といたらまずくない?阿保がうつるぜ。」Shuuta、お前が言うなよ。
「駄目だってShuuta、そんな事言ったら。傑が可哀想だろ。」お前もお前だ。藤谷さんの前で言うなんて、俺が可哀想だろ。本当に俺が可哀想だろ。
まぁ、いい。
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「てゆーかShuutaは本当に傑の叶わない恋を応援する気?」藤谷さんと別れた後、龍がなんでもない事の様にさらっと言う。とんでもない言い方だ。
「あぁ、勿論っ!」
「なんで?」
「面白いから!」お前等、最低だな。本当。
「それに、もしかしたら、本当にもしかしたら叶うかも、しれないじゃん。」
「奇跡が起こったらな。起こらないと思うけど。」お前等……。そこまで俺を苛めて楽しいか?
あれ?なんでだろ。前が霞んで見えないや。
「てゆーかそういう龍こそ、好きな人いないの?」Shuutaが尋ねた。性格は論外だけど顔も悪くないしスポーツ万能、成績優秀の龍だ。リア充になろうと思えばすぐになれるだろうに。
「別にいない。そういうShuutaは?」
「さぁ?」そう返事する奴って、絶対好きな人いるんだ。
「まぁ俺の事はどうでもいい。」言い出したのはお前だぞ。「今は傑だっ!」
忘れてくれ。もう俺の事はいいから。お前に話してしまった俺が間違ってたから。お前と友達になってしまった俺が間違ってたから。
「叶わない恋じゃん。」
「お前はどんだけ俺を傷つけりゃ気が済むんだっ!」龍っ!未来形リア充めっ!
「まぁ、応援はするよ。多分。」多分⁈「それで良し!」何が⁈何処が⁈
「問題は藤谷さんをどうやってこんな最低男に振り向かせるか、だ!」最低男に最低男って言われたー。
やばい、泣きたい。
「恋愛のスペシャリスト、朝霧龍君っ!君はどう思う⁈」
龍は即答で言いきった。
「不可能。」
「応援するんじゃなかったのか⁈」思わず叫んでしまう。
「だって事実だから。」
「言っていい事実と言ってはいけない事実があるんだよ⁈」
「言っていい事実じゃ、」
「ないよねぇ⁈」全く。その位わかってくれよ。
「じゃあ作戦実行は明日だ!」いや、作戦ってなんですか。まだ誰もそんな物出してなかったと思うんだけど。
「おう。」だからなんであんたは納得出来るんだよ!
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しかし、
Shuutaの言う作戦、は、実行不可能になった。
最悪だ。実行するのも最悪だったけど、この展開も最悪だ。
クラスメートの通称天パ君。お前のせいだ。
「藤谷ぃー。俺と付き合ってよ。」
ぽつんと呟くのは龍だ。
「……傑と天パだったら、天パを応援したいね、俺は。」
おい。
……。
ああ……。
なんで俺は、こんな奴等に話しちゃったんだろう。